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3 傲慢
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「とても魅力的なお話ですけれど、うまいお話には必ず裏があると思います。本当の目的を教えていただけますか?」
「裏? そんなものはないよ。ただ、この私と結婚して妻になるだけで借金もなくなる。こんな良い条件がどこにある?」
「いい条件すぎて怖いのです! 裏がないならお断りしますね。大変失礼ですが、カイド様は正気ではないかもしれませんもの」
私は頭のいかれた男性と無駄話をしている場合ではないのです。
「あっははは! 面白いなぁーー。女性からそんなことを言われたのは初めてだよ。この話を持ちかけると、大抵の女は喜んで押しかけてくるはずなのだが。実は私の伯母上のケリー・ザヘリー女公爵は、大変な大金持ちだが跡継ぎがいない。私が堅実なしっかりした女性と結婚したら、跡継ぎとして迎えると言われたのだ。これが裏というなら裏だな。結婚したら、ザヘリー公爵家に一緒に住むことになる」
なるほどね。そういうことですか。それなら納得ですわ。つまり、私の仕事はそのザヘリー女公爵様と仲良く同居して妻を演じるということですね。いきなり、そのザヘリー女公爵様と同居というのは、かなりハードルが高いけれどなんとかなるでしょう。堅実でしっかりしていることは私の自慢です。できそうな気がしてきましたわ。
「それでは、契約書を見せていただけますか? 細かなところまで確認させていただきますわ」
私はカイド様にテキパキとした口調で言うと、めがねを取り出してかける。
「貴女は目が悪いのか? なぜ魔道具を使わない? 契約書はこれだ。不審な点があれば質問してくれ」
「魔道具は高価すぎて買えませんわ。えぇっと、嫁としての心得のそのいちは、『この私を決して好きにならないこと』? もちろんですわ!」
※婚前契約書
嫁としての心得
① この私を決して好きにならないこと。
② この私を束縛しないこと。
③ この私が愛人や恋人をつくっても一切文句をいわないこと。
④ この私の愛を欲しがらないこと。
⑤ この私の子供を欲しがらないこと。
⑥ この私の・・・・・・
⑦ この私の・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
『この私の』で始まる心得が50項目もあり、どれも似たような内容ばかり。つまりは、『干渉するな! 束縛するな! 恋愛感情は絶対持つな!』ということでした。
こんなことなら、楽勝ですわ! だって、この条項を見ただけでも傲慢で、身勝手なナルシストさんですもの! もっとも、私が嫌いな種類の男性だわ。
「お引き受けしますわ! 報酬はもっと明確に記載していただけます? エルナン家の借金返済と生活費、妹達の学費です。それと私の両親がまた誰かに騙されるといけないので、そこもなんとかしていただきたいです。どこからも借りられないように、保証人にもならないようにが大事です」
「あぁ、ならば執事に優秀な男をつけよう。護衛騎士も監視役として3人つける。それで、どうかな?」
「充分ですわ。ではここにサインをしますから、控えを私に一枚くださいませ。これで、契約成立! はぁーー、妹達が学園を辞めなくて良いことになってひと安心です。テントはもう必要なくなりました」
私は嬉しくて余計なことを口走ってしまいました。
「テント? なにをしようとしていたんだ?」
不審がるカイド様に、私は当然のように言いました。
「もちろん青空広場で野宿をするためですわ! 借金で屋敷を差し押さえられたら、外で暮さないといけませんでしょう? 予行練習です!」
私の言葉になぜか爆笑したカイド様。面白いことなどなにも申し上げていませんがね。
「簡単に引き受けたけれど、私を好きにならない自信があるのかい?」
カイド様は美しい金髪を手でかきあげながら、色っぽく私に尋ねたのでした。
きもいです!
「裏? そんなものはないよ。ただ、この私と結婚して妻になるだけで借金もなくなる。こんな良い条件がどこにある?」
「いい条件すぎて怖いのです! 裏がないならお断りしますね。大変失礼ですが、カイド様は正気ではないかもしれませんもの」
私は頭のいかれた男性と無駄話をしている場合ではないのです。
「あっははは! 面白いなぁーー。女性からそんなことを言われたのは初めてだよ。この話を持ちかけると、大抵の女は喜んで押しかけてくるはずなのだが。実は私の伯母上のケリー・ザヘリー女公爵は、大変な大金持ちだが跡継ぎがいない。私が堅実なしっかりした女性と結婚したら、跡継ぎとして迎えると言われたのだ。これが裏というなら裏だな。結婚したら、ザヘリー公爵家に一緒に住むことになる」
なるほどね。そういうことですか。それなら納得ですわ。つまり、私の仕事はそのザヘリー女公爵様と仲良く同居して妻を演じるということですね。いきなり、そのザヘリー女公爵様と同居というのは、かなりハードルが高いけれどなんとかなるでしょう。堅実でしっかりしていることは私の自慢です。できそうな気がしてきましたわ。
「それでは、契約書を見せていただけますか? 細かなところまで確認させていただきますわ」
私はカイド様にテキパキとした口調で言うと、めがねを取り出してかける。
「貴女は目が悪いのか? なぜ魔道具を使わない? 契約書はこれだ。不審な点があれば質問してくれ」
「魔道具は高価すぎて買えませんわ。えぇっと、嫁としての心得のそのいちは、『この私を決して好きにならないこと』? もちろんですわ!」
※婚前契約書
嫁としての心得
① この私を決して好きにならないこと。
② この私を束縛しないこと。
③ この私が愛人や恋人をつくっても一切文句をいわないこと。
④ この私の愛を欲しがらないこと。
⑤ この私の子供を欲しがらないこと。
⑥ この私の・・・・・・
⑦ この私の・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
『この私の』で始まる心得が50項目もあり、どれも似たような内容ばかり。つまりは、『干渉するな! 束縛するな! 恋愛感情は絶対持つな!』ということでした。
こんなことなら、楽勝ですわ! だって、この条項を見ただけでも傲慢で、身勝手なナルシストさんですもの! もっとも、私が嫌いな種類の男性だわ。
「お引き受けしますわ! 報酬はもっと明確に記載していただけます? エルナン家の借金返済と生活費、妹達の学費です。それと私の両親がまた誰かに騙されるといけないので、そこもなんとかしていただきたいです。どこからも借りられないように、保証人にもならないようにが大事です」
「あぁ、ならば執事に優秀な男をつけよう。護衛騎士も監視役として3人つける。それで、どうかな?」
「充分ですわ。ではここにサインをしますから、控えを私に一枚くださいませ。これで、契約成立! はぁーー、妹達が学園を辞めなくて良いことになってひと安心です。テントはもう必要なくなりました」
私は嬉しくて余計なことを口走ってしまいました。
「テント? なにをしようとしていたんだ?」
不審がるカイド様に、私は当然のように言いました。
「もちろん青空広場で野宿をするためですわ! 借金で屋敷を差し押さえられたら、外で暮さないといけませんでしょう? 予行練習です!」
私の言葉になぜか爆笑したカイド様。面白いことなどなにも申し上げていませんがね。
「簡単に引き受けたけれど、私を好きにならない自信があるのかい?」
カイド様は美しい金髪を手でかきあげながら、色っぽく私に尋ねたのでした。
きもいです!
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