21 / 123
脱出編
21 私と誰かと食べるご飯
しおりを挟む
お互いのことを話し終わったところで、ヴェインさんのお腹が鳴った。
気がつけば、外はだいぶ暗くなっていた。
私は、急いで部屋の電気をつけてから、何でもないことのように言った。
「あはは。お腹空きましたね。お昼も食べ損ねてしまいました。夕食にしましょう。準備をするので、それを食べて待っていてください」
そう言って、話す間手を付けられることのなかったスイートポテトを指差した。
私がダイニングキッチンに向かおうとすると、アーくんがため息交じりに言った。
「はぁ。何か手伝います。それと、夕食の後に、この家のこととか、シズの言っていたゲームの力ってモノのことを詳しく聞かせてください」
「うん。分かった。それじゃ―――」
私が、アーくんにお手伝いしてもらおうとしたところ、何故かヴェインさんが慌てたように私の言葉を遮って言った。
「てっ、手伝いは駄目だ!!あー、その、なんだ。慣れないキッチンでは逆に邪魔になるだけだ!!そうだろう?なっ、シズ!そうだよな!!」
ものすごく必死な様子のヴェインさんに押されるように私は頷いていた。
「えっと、直ぐにできるから待っててください?」
「なっ、アーク。シズもこう言ってくれているんだ。ここは甘えよう!な!」
「??分かりました。兄様がそう言うなら……。シズ、すみませんがお願いします」
困惑顔のアーくんと、何故かホッとした様子のヴェインさんに首を傾げつつも、私は急いで夕食作りに取り掛かった。
ご飯は昨日炊いてそのままにしていたものがあるから、それを使って簡単にチャーハンにしよう。
具材を切って、ご飯と炒める。卵代わりに、卵モドキの実を加える。
チャーハンの他に、スープと春巻きも用意する。
出来上がった料理をテーブルに並べてから、リビングにいる二人に声を掛けた。
ダイニングテーブルに乗った料理を見て、二人が驚きの声を上げた。
「見たことのない料理だ……。しかし、美味そうだ」
「いい匂いですね」
「さあさあ、冷める前に召し上がってください」
私の言葉を聞いた二人は、用意していたスプーンとフォークを使って食べ始めた。
今朝のロールパン同様、無言で食べ進める二人は、今度はリス食いではなく普通に食べてくれて安心した。
だって、リス食いがデフォだったら私は、この世界で普通に暮らせる自信を失うところだったよ。
そんなことを考えていると、あっという間に二人は完食していた。
「えっ!早!えっ、もう食べ終わっちゃったんですか?」
「ああ。美味すぎてもう食べ終わってしまった」
「美味しかったです」
そう言った二人がとても残念そうだったから、つい言ってしまった。
「えっと、もっと食べます?」
そう言った私に向けられた二人の嬉しそうな顔を見た私は、釣られてつい表情を綻ばせていた。
「ふふ。ちょっと待っててくださいね。直ぐに出せるものがあったはずなので、温めてきます」
そう言って、冷蔵庫を覗きに行った私の足取りはここ数年で一番軽いものだったと思う。
冷蔵庫の中を見ると、昨日食べようと準備していた唐揚げモドキとポテトサラダがあったので、唐揚げモドキを温め直してから二人のもとに戻った。
二人は、唐揚げモドキとポテトサラダも美味しそうに食べてくれた。
「美味いな。これは、なんの肉なんだ?」
「お肉じゃないですよ?」
「えっ?」
「肉じゃないですって?」
だよね。お肉食べたいよね。でも、食べられるお肉持ってない……。食べられそうな動物捌けない……。
「はい。残念ながら、それは大豆から作った肉モドキです。お肉……」
はぁ。考えないようにしていたけど、やっぱりお肉食べたいよ。そんなことを考えていたら、無意識に口に出してしまっていた。
「はぁ。お肉があれば、もっと美味しい唐揚げだって、ハンバーグだって出来ちゃうのに……」
「分かった。明日は、狩に出かける」
「はい。兄様。鳥なら狩れると思いますよ」
「ああ、そうなると道具だが……。なんとかなるか。最悪、その辺の石を投擲して仕留めてもいいしな」
二人の会話を聞いた私は、久しぶりにお肉が食べられるかも知れないと思うと、どう料理しようかとワクワクが止まらなかった。
楽しいことを想像し、人と話しながらの食事は久しぶりで、いつもの料理が不思議と何倍も美味しく感じられた。
夕食後、食後のお茶を飲みつつアーくんの質問に答えることになった。
「それで、ゲームの力って?」
「えっと、元の世界の遊びみたいな?う~ん、説明が難しいな……。このステータス画面って他の人も見れるのかな?」
そう言いつつ、私はステータス画面を出した。
「えっと、二人にはこれは見えますか?」
二人に、ステータス画面が見えるか画面を指しながら聞いてみたけど、緩く首を横に振られるだけだった。
これが見えないとなると、どうしたらいいかな?
そうだ、実践すればいいんだ!!
そう考えた私は、二人を工房に連れて行くことにした。
気がつけば、外はだいぶ暗くなっていた。
私は、急いで部屋の電気をつけてから、何でもないことのように言った。
「あはは。お腹空きましたね。お昼も食べ損ねてしまいました。夕食にしましょう。準備をするので、それを食べて待っていてください」
そう言って、話す間手を付けられることのなかったスイートポテトを指差した。
私がダイニングキッチンに向かおうとすると、アーくんがため息交じりに言った。
「はぁ。何か手伝います。それと、夕食の後に、この家のこととか、シズの言っていたゲームの力ってモノのことを詳しく聞かせてください」
「うん。分かった。それじゃ―――」
私が、アーくんにお手伝いしてもらおうとしたところ、何故かヴェインさんが慌てたように私の言葉を遮って言った。
「てっ、手伝いは駄目だ!!あー、その、なんだ。慣れないキッチンでは逆に邪魔になるだけだ!!そうだろう?なっ、シズ!そうだよな!!」
ものすごく必死な様子のヴェインさんに押されるように私は頷いていた。
「えっと、直ぐにできるから待っててください?」
「なっ、アーク。シズもこう言ってくれているんだ。ここは甘えよう!な!」
「??分かりました。兄様がそう言うなら……。シズ、すみませんがお願いします」
困惑顔のアーくんと、何故かホッとした様子のヴェインさんに首を傾げつつも、私は急いで夕食作りに取り掛かった。
ご飯は昨日炊いてそのままにしていたものがあるから、それを使って簡単にチャーハンにしよう。
具材を切って、ご飯と炒める。卵代わりに、卵モドキの実を加える。
チャーハンの他に、スープと春巻きも用意する。
出来上がった料理をテーブルに並べてから、リビングにいる二人に声を掛けた。
ダイニングテーブルに乗った料理を見て、二人が驚きの声を上げた。
「見たことのない料理だ……。しかし、美味そうだ」
「いい匂いですね」
「さあさあ、冷める前に召し上がってください」
私の言葉を聞いた二人は、用意していたスプーンとフォークを使って食べ始めた。
今朝のロールパン同様、無言で食べ進める二人は、今度はリス食いではなく普通に食べてくれて安心した。
だって、リス食いがデフォだったら私は、この世界で普通に暮らせる自信を失うところだったよ。
そんなことを考えていると、あっという間に二人は完食していた。
「えっ!早!えっ、もう食べ終わっちゃったんですか?」
「ああ。美味すぎてもう食べ終わってしまった」
「美味しかったです」
そう言った二人がとても残念そうだったから、つい言ってしまった。
「えっと、もっと食べます?」
そう言った私に向けられた二人の嬉しそうな顔を見た私は、釣られてつい表情を綻ばせていた。
「ふふ。ちょっと待っててくださいね。直ぐに出せるものがあったはずなので、温めてきます」
そう言って、冷蔵庫を覗きに行った私の足取りはここ数年で一番軽いものだったと思う。
冷蔵庫の中を見ると、昨日食べようと準備していた唐揚げモドキとポテトサラダがあったので、唐揚げモドキを温め直してから二人のもとに戻った。
二人は、唐揚げモドキとポテトサラダも美味しそうに食べてくれた。
「美味いな。これは、なんの肉なんだ?」
「お肉じゃないですよ?」
「えっ?」
「肉じゃないですって?」
だよね。お肉食べたいよね。でも、食べられるお肉持ってない……。食べられそうな動物捌けない……。
「はい。残念ながら、それは大豆から作った肉モドキです。お肉……」
はぁ。考えないようにしていたけど、やっぱりお肉食べたいよ。そんなことを考えていたら、無意識に口に出してしまっていた。
「はぁ。お肉があれば、もっと美味しい唐揚げだって、ハンバーグだって出来ちゃうのに……」
「分かった。明日は、狩に出かける」
「はい。兄様。鳥なら狩れると思いますよ」
「ああ、そうなると道具だが……。なんとかなるか。最悪、その辺の石を投擲して仕留めてもいいしな」
二人の会話を聞いた私は、久しぶりにお肉が食べられるかも知れないと思うと、どう料理しようかとワクワクが止まらなかった。
楽しいことを想像し、人と話しながらの食事は久しぶりで、いつもの料理が不思議と何倍も美味しく感じられた。
夕食後、食後のお茶を飲みつつアーくんの質問に答えることになった。
「それで、ゲームの力って?」
「えっと、元の世界の遊びみたいな?う~ん、説明が難しいな……。このステータス画面って他の人も見れるのかな?」
そう言いつつ、私はステータス画面を出した。
「えっと、二人にはこれは見えますか?」
二人に、ステータス画面が見えるか画面を指しながら聞いてみたけど、緩く首を横に振られるだけだった。
これが見えないとなると、どうしたらいいかな?
そうだ、実践すればいいんだ!!
そう考えた私は、二人を工房に連れて行くことにした。
45
お気に入りに追加
2,585
あなたにおすすめの小説
拝啓。聖女召喚で得た加護がハズレらしくダンジョンに置いてきぼりにされた私ですが元気です。って、そんな訳ないでしょうが!責任者出て来いやオラ!
バナナマヨネーズ
恋愛
私、武蔵野千夜、十八歳。どこにでもいる普通の女の子。ある日突然、クラスメイトと一緒に異世界に召喚されちゃったの。クラスのみんなは、聖女らしい加護を持っていたんだけど、どうしてか、私だけよくわからない【応援】って加護で……。使い道の分からないハズレ加護だって……。はい。厄介者確定~。
結局、私は捨てられてしまうの……って、ふっざけんな!! 勝手に呼び出して勝手言ってんな!
な~んて、荒ぶってた時期もありましたが、ダンジョンの中で拾った子狼と幸せになれる安住の地を求めて旅をすることにしたんですよ。
はぁ、こんな世界で幸せになれる場所なんてあるのかしら?
全19話
※小説家になろう様にも掲載しています。
【完結】元お飾り聖女はなぜか腹黒宰相様に溺愛されています!?
雨宮羽那
恋愛
元社畜聖女×笑顔の腹黒宰相のラブストーリー。
◇◇◇◇
名も無きお飾り聖女だった私は、過労で倒れたその日、思い出した。
自分が前世、疲れきった新卒社会人・花菱桔梗(はなびし ききょう)という日本人女性だったことに。
運良く婚約者の王子から婚約破棄を告げられたので、前世の教訓を活かし私は逃げることに決めました!
なのに、宰相閣下から求婚されて!? 何故か甘やかされているんですけど、何か裏があったりしますか!?
◇◇◇◇
お気に入り登録、エールありがとうございます♡
※ざまぁはゆっくりじわじわと進行します。
※「小説家になろう」「エブリスタ」様にも掲載しております(アルファポリス先行)。
※この作品はフィクションです。特定の政治思想を肯定または否定するものではありません(_ _*))
嫌われ貧乏令嬢と冷酷将軍
バナナマヨネーズ
恋愛
貧乏男爵令嬢のリリル・クロケットは、貴族たちから忌み嫌われていた。しかし、父と兄に心から大切にされていたことで、それを苦に思うことはなかった。そんなある日、隣国との戦争を勝利で収めた祝いの宴で事件は起こった。軍を率いて王国を勝利に導いた将軍、フェデュイ・シュタット侯爵がリリルの身を褒美として求めてきたのだ。これは、勘違いに勘違いを重ねてしまうリリルが、恋を知り愛に気が付き、幸せになるまでの物語。
全11話
公爵令嬢 メアリの逆襲 ~魔の森に作った湯船が 王子 で溢れて困ってます~
薄味メロン
恋愛
HOTランキング 1位 (2019.9.18)
お気に入り4000人突破しました。
次世代の王妃と言われていたメアリは、その日、すべての地位を奪われた。
だが、誰も知らなかった。
「荷物よし。魔力よし。決意、よし!」
「出発するわ! 目指すは源泉掛け流し!」
メアリが、追放の準備を整えていたことに。
元の世界に戻るなんて聞いてない!
バナナマヨネーズ
恋愛
アメジシスト王国には、あまり知られていない恐ろしい呪いがあった。
それは【魔女の嫉妬】というもので、莫大な魔力を持ち、美しい容姿の女性を醜い姿にかえてしまう、恐ろしい呪いだった。
イグニシス公爵家の次女として生まれたレインはその呪いに掛かっていた。この呪いのせいで、周囲の者に冷笑され、嘲笑われていた。
しかしレインは、優しくも温かい家族に支えられて穏やかに暮らしていた。そして、婚約者となった第二王子を大切に思うようになって行った。
だが、世界はとても残酷だった。
レインを愛する家族は、レインに残酷仕打ちをする世界に耐えきれなかった。だから、家族全員でこの世界から姿を消すことにした。
この物語は、呪いに掛かったレインが彼女を愛する人と幸せになるまでのお話。
※小説家になろう様で連載していた作品を加筆修正したものです。
※世界観ですが、「妹に全てを奪われた令嬢は第二の人生を満喫することにしました。」と同じ国ですが、それよりも昔の時代のお話です。
冷酷非情の雷帝に嫁ぎます~妹の身代わりとして婚約者を押し付けられましたが、実は優しい男でした~
平山和人
恋愛
伯爵令嬢のフィーナは落ちこぼれと蔑まれながらも、希望だった魔法学校で奨学生として入学することができた。
ある日、妹のノエルが雷帝と恐れられるライトニング侯爵と婚約することになった。
ライトニング侯爵と結ばれたくないノエルは父に頼み、身代わりとしてフィーナを差し出すことにする。
保身第一な父、ワガママな妹と縁を切りたかったフィーナはこれを了承し、婚約者のもとへと嫁ぐ。
周りから恐れられているライトニング侯爵をフィーナは怖がらず、普通に妻として接する。
そんなフィーナの献身に始めは心を閉ざしていたライトニング侯爵は心を開いていく。
そしていつの間にか二人はラブラブになり、子宝にも恵まれ、ますます幸せになるのだった。
【完結】うっかり異世界召喚されましたが騎士様が過保護すぎます!
雨宮羽那
恋愛
いきなり神子様と呼ばれるようになってしまった女子高生×過保護気味な騎士のラブストーリー。
◇◇◇◇
私、立花葵(たちばなあおい)は普通の高校二年生。
元気よく始業式に向かっていたはずなのに、うっかり神様とぶつかってしまったらしく、異世界へ飛ばされてしまいました!
気がつくと神殿にいた私を『神子様』と呼んで出迎えてくれたのは、爽やかなイケメン騎士様!?
元の世界に戻れるまで騎士様が守ってくれることになったけど……。この騎士様、過保護すぎます!
だけどこの騎士様、何やら秘密があるようで――。
◇◇◇◇
※過去に同名タイトルで途中まで連載していましたが、連載再開にあたり設定に大幅変更があったため、加筆どころか書き直してます。
※アルファポリス先行公開。
※表紙はAIにより作成したものです。
【完結】「異世界に召喚されたら聖女を名乗る女に冤罪をかけられ森に捨てられました。特殊スキルで育てたリンゴを食べて生き抜きます」
まほりろ
恋愛
※小説家になろう「異世界転生ジャンル」日間ランキング9位!2022/09/05
仕事からの帰り道、近所に住むセレブ女子大生と一緒に異世界に召喚された。
私たちを呼び出したのは中世ヨーロッパ風の世界に住むイケメン王子。
王子は美人女子大生に夢中になり彼女を本物の聖女と認定した。
冴えない見た目の私は、故郷で女子大生を脅迫していた冤罪をかけられ追放されてしまう。
本物の聖女は私だったのに……。この国が困ったことになっても助けてあげないんだから。
「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します。
※小説家になろう先行投稿。カクヨム、エブリスタにも投稿予定。
※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる