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脱出編

21 私と誰かと食べるご飯

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 お互いのことを話し終わったところで、ヴェインさんのお腹が鳴った。
 気がつけば、外はだいぶ暗くなっていた。
 私は、急いで部屋の電気をつけてから、何でもないことのように言った。
 
「あはは。お腹空きましたね。お昼も食べ損ねてしまいました。夕食にしましょう。準備をするので、それを食べて待っていてください」

 そう言って、話す間手を付けられることのなかったスイートポテトを指差した。
 私がダイニングキッチンに向かおうとすると、アーくんがため息交じりに言った。
 
「はぁ。何か手伝います。それと、夕食の後に、この家のこととか、シズの言っていたゲームの力ってモノのことを詳しく聞かせてください」

「うん。分かった。それじゃ―――」

 私が、アーくんにお手伝いしてもらおうとしたところ、何故かヴェインさんが慌てたように私の言葉を遮って言った。
 
「てっ、手伝いは駄目だ!!あー、その、なんだ。慣れないキッチンでは逆に邪魔になるだけだ!!そうだろう?なっ、シズ!そうだよな!!」

 ものすごく必死な様子のヴェインさんに押されるように私は頷いていた。
 
「えっと、直ぐにできるから待っててください?」

「なっ、アーク。シズもこう言ってくれているんだ。ここは甘えよう!な!」

「??分かりました。兄様がそう言うなら……。シズ、すみませんがお願いします」

 困惑顔のアーくんと、何故かホッとした様子のヴェインさんに首を傾げつつも、私は急いで夕食作りに取り掛かった。
 ご飯は昨日炊いてそのままにしていたものがあるから、それを使って簡単にチャーハンにしよう。
 具材を切って、ご飯と炒める。卵代わりに、卵モドキの実を加える。
 チャーハンの他に、スープと春巻きも用意する。
 
 出来上がった料理をテーブルに並べてから、リビングにいる二人に声を掛けた。
 ダイニングテーブルに乗った料理を見て、二人が驚きの声を上げた。
 
「見たことのない料理だ……。しかし、美味そうだ」

「いい匂いですね」

「さあさあ、冷める前に召し上がってください」

 私の言葉を聞いた二人は、用意していたスプーンとフォークを使って食べ始めた。
 今朝のロールパン同様、無言で食べ進める二人は、今度はリス食いではなく普通に食べてくれて安心した。
 だって、リス食いがデフォだったら私は、この世界で普通に暮らせる自信を失うところだったよ。
 
 そんなことを考えていると、あっという間に二人は完食していた。

「えっ!早!えっ、もう食べ終わっちゃったんですか?」

「ああ。美味すぎてもう食べ終わってしまった」

「美味しかったです」

 そう言った二人がとても残念そうだったから、つい言ってしまった。
 
「えっと、もっと食べます?」

 そう言った私に向けられた二人の嬉しそうな顔を見た私は、釣られてつい表情を綻ばせていた。
 
「ふふ。ちょっと待っててくださいね。直ぐに出せるものがあったはずなので、温めてきます」

 そう言って、冷蔵庫を覗きに行った私の足取りはここ数年で一番軽いものだったと思う。
 
 冷蔵庫の中を見ると、昨日食べようと準備していた唐揚げモドキとポテトサラダがあったので、唐揚げモドキを温め直してから二人のもとに戻った。
 二人は、唐揚げモドキとポテトサラダも美味しそうに食べてくれた。
 
「美味いな。これは、なんの肉なんだ?」

「お肉じゃないですよ?」

「えっ?」

「肉じゃないですって?」

 だよね。お肉食べたいよね。でも、食べられるお肉持ってない……。食べられそうな動物捌けない……。
 
「はい。残念ながら、それは大豆から作った肉モドキです。お肉……」

 はぁ。考えないようにしていたけど、やっぱりお肉食べたいよ。そんなことを考えていたら、無意識に口に出してしまっていた。
 
「はぁ。お肉があれば、もっと美味しい唐揚げだって、ハンバーグだって出来ちゃうのに……」

「分かった。明日は、狩に出かける」

「はい。兄様。鳥なら狩れると思いますよ」

「ああ、そうなると道具だが……。なんとかなるか。最悪、その辺の石を投擲して仕留めてもいいしな」

 二人の会話を聞いた私は、久しぶりにお肉が食べられるかも知れないと思うと、どう料理しようかとワクワクが止まらなかった。
 
 
 楽しいことを想像し、人と話しながらの食事は久しぶりで、いつもの料理が不思議と何倍も美味しく感じられた。
 
 夕食後、食後のお茶を飲みつつアーくんの質問に答えることになった。
 
「それで、ゲームの力って?」

「えっと、元の世界の遊びみたいな?う~ん、説明が難しいな……。このステータス画面って他の人も見れるのかな?」

 そう言いつつ、私はステータス画面を出した。
 
「えっと、二人にはこれは見えますか?」

 二人に、ステータス画面が見えるか画面を指しながら聞いてみたけど、緩く首を横に振られるだけだった。
 
 これが見えないとなると、どうしたらいいかな?
 そうだ、実践すればいいんだ!!
 そう考えた私は、二人を工房に連れて行くことにした。
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