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1章

追放者サイド①

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ユリアを追放してから数日。 モートンはギズル達の素行に頭を悩ませていた。

  毎日、鬼のように苦情が入り、後始末に追われる。 朝から街に遊びに出ては騒ぎを起こし、夜は大人な店でどんちゃん騒ぎ。

  帰ってこない日もたびたび。 

 これでは家の沽券に関わる……そう考え一度常識を学ばせようと、学院へ入学させることを決意する。

  と、その時 ガチャッ…… ドアが開き、次期領主として有るまじき下品な笑い声が聞こえてくる。


「うーい次期領主のギズル様が帰ったぞ~」 

「ギャハハ。あの無能君が居なくなったお陰で楽に生きていけるぜっ……ほらよ」 

「きゃ!? 」 


 部屋の隅に待機しているメイドのスカートを捲りニタニタと笑う。 

 とうとう我慢の限界に達したモートンは一度深呼吸をすると2人をここに来いと呼ぶ。 

 「あ?なんだよ俺様は忙しいんだよ」 

「……朝から街で遊び回り帰ってきてたと思えばメイドのスカート捲り。何が忙しいというのだ!! 」


  机をバァァァァァンと叩き、詰め寄る。 


 「大体貴様らは常識がなっとらん。まだユリアの方がマシだ!!」


  ユリアの方がマシと言われたのが癪に触ったのか、顔を歪めるギズル。


 「は? 俺様よりあの無能がマシだと?? ふざけてんのか!! どうやら父上は実力差を分かっていないようだなぁ? 俺様のスキルは《極寒の魔術師》なんだよ。父上の《全属性魔術師》とかいう器用貧乏スキルの威力の10倍は出るぜ」


  なんなら試してやろうか?と。 


 このような言動にモートンは怒りよりも先に呆れる。 

 何故このような性格になってしまったのだろうか……本当はユリアではなくこいつらを追放するべきだったのではないか。 ……いやこれで正しかったんだ。 

 ギズルとザンスは性格こそ領主としてあるまじきものだが、スキルは最上級にあたる《極寒の魔術師》と《魔法剣士》だ。

  領主として十分なスキルで自分の後を安心して任せられる。 領地お取り潰しも無いと確信できる。 反対にユリアは性格は相応しいと言えるだろう。 誰にも分け隔てなく接し、仕事も率先してやる。修行も嫌な顔一つせずこなしていた。 

 ここまで見ると普通の家であれば誰でもユリアを領主に推薦するだろう。

  モートンもそうするはずだった。

  しかしーーー 【スキルの書】にすら載っていない前代未聞のハズレスキルを与えられたことで全ての運命の歯車が大きく動くことになる。

  
「ギズル、ザンス、貴様らにはゼウリアス魔法学院に行ってもらう あぁ……安心しろ面倒な入学試験は受けなくていいように推薦書を書いてやる」


  モートンは意を決してそう、2人に言い渡すのであった。

  この時は誰もが想像することは無かった。ユリアも入学試験を受けていることにーー
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