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1章
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案内された部屋には大家族の晩餐会のような大きな机にたくさんの料理が並んでいた。
(なにかのパーティー??)
「来たようだな」
「っ!エルフォルク様」
目の前の美味しそうな料理に目を取られ奥の席に座っている魔王に気づかず、思わず驚いてしまう。
「どうやら私は料理に負けたようだな。まぁ、いい。そこに座れ。」
どこか楽しそうに言った魔王は自分の向かいに座るように促す。
(まさか魔王と食べるなんて、)
「お前の好むものが分からなかったから一通り作らせた、好きなだけたべろ」
(私の好きなものなんて、、ご飯を食べられるだけで幸せなのに。)
「は、はい、いただきます」
まず目の前に置かれたパンをちぎって食べる。
「っ!!美味しいです!!」
「は?まだパンしか食べてないだろう」
ステーキにナイフを入れていた魔王は驚いたようにこちらを見る。
「こんなに美味しいパンは初めてです!」
いつも孤児院で食べていたパンはみんなの食べかけで固くなったパンだった。暑い時期にはカビの生えたパンを慎重に食べていたこともある。
それに比べてこのパンはふわっふわでやわらかい。噛めば噛むほど甘くなる。
「パンが好きなのか、料理長に伝えておこう」
魔王はまたステーキを切り始めた。
(私もステーキを食べてみよう)
お肉を食べるのは何年ぶりだろうか。孤児院では誕生日を迎えたときにその子だけがお肉を食べられる。
7歳の誕生日には魔力の出現がない事が確定し祝ってもらうことはなかった。
(11年ぶりか、、)
ナイフを使うのは初めてだが目の前の魔王がやっているように見よう見まねでやってみる。が、なかなか力が入らず上手く切れない。
「わっ、」
手からナイフが滑りガチャンと音を立てて床に落ちる。
「も、申し訳ありません!!」
急いで拾おうと立ち上がれば魔王がお前は座れと制される。
落としたナイフはすぐに控えていた侍女が拾い新しいものを用意してくれた。
(絶対に呆れられたわ、、)
ステーキを食べるのは諦めパンやステーキの付け合せをたべることにする。
すると魔王が立ち上がり歩きだした。
(まだ食事が残っているのに、私と食事をするのは嫌になったのね)
下を向けばぽつんと1粒涙が落ちる。
(こんな食事のマナーも知らない私がほんとにエルフォルク家に嫁ぐというの?『運命』も残酷だわ。魔王も『運命』のせいで私を妻にしなければならない。)
「怪我はないか?」
気づけば横から声が聞こえ見上げれば魔王と目が合う。
「っ、はい、申し訳ありません、、」
その綺麗な瞳に吸い込まれそうになり思わず下を向く。
まさか怪我の心配をしてくるとは思わず頭が混乱する。
「これからはここで食べる、食べかけのそれもここにもってこい。」
横に腰をかけ侍女に支持する魔王に使用人たちも困惑しているようだったがテキパキと準備を進め始めた。そしてグレンツェのステーキを横から奪ったかと思えば1口大に切り始める。
さすがに使用人たちも慌てて私がやります!と声を上げたが魔王は私がやる、と聞かない。
「エルフォルク様!自分でやります!」
思わずグレンツェも声をかけたが先程出来なかったではないか、と言われ何も言い返せない。
「食ってみろ」
「ありがとうございます、」
きれいに切られたステーキがグレンツェの目の前に戻ってくる。フォークで刺し食べてみればとろけるような美味しさで目を見開く。
「っ!!美味しい!美味しいです!!」
グレンツェが思わずヴァイザーの方を見れば、初めて見る顔で微笑むヴァイザーの顔が映り、驚いてぱっと目を逸らす。
「ステーキも気に入ったか?」
「はい、、とっても」
「そうか」
次はあれを食べてみろ、と次々にテーブルの上の料理を勧められ食べていけばあっという間にお腹が膨れた。グレンツェには久しぶりの満腹感覚だった。
「エルフォルク様、、」
「なんだ、この魚は口に合わないか?」
「っ!いえ!とっても美味しいです!」
「ならばもっと食え」
「あの、もうお腹がいっぱいで、、」
「そうか、ならば無理をする必要は無い」
なんだか少し寂しそうな表情で言うヴァイザーは使用人に食後のお茶を出すように命じる。
次々と食器が片付けられ繊細な細工の施されたティーカップが出された。華やかな香りがする紅茶のようだ。
「気に入ったものは全て言えばいい、用意させる」
「あ、ありがとうございます」
気に入ったものなんてこのお城に来てからたくさんある。ドレスもお部屋も食事も全部豪華すぎて夢のようだ。
「あの、、エルフォルク様」
「なんだ」
「ありがとうございます、このお城に来てからたくさん良くして頂いて、、なんとお礼を言えばいいのか」
「お前は私の妻になるのだ。当然のことをしたまでだ。」
「ですが、私は教養がありません。何も持ってないのです。それでもエルフォルク様は私をちゃんと見てくださいました。」
「当たり前のことだ。お前に教養があろうとなかろうと妻になることに変わりわない。これから学べばいいのだ。」
「はい、ありがとうございます」
魔力がないからと学ぶ機会さえ与えられなかった。でもここでは違う。
(まだ私にも人として成長するチャンスがあるのかもしれない。)
そしてヴァイザーが魔王ではないこともわかった。確かに魔力は魔王かもしれないけど冷酷なんかでは無い。会った時は怖かったけれど今は恐怖は感じない。
ヴァイザーはお茶を一口飲んでグレンツェを見つめる。
「お前は私の『運命』だ。まだ理解できないかもしれないが私がお前に『運命』を教えてやる。」
グレンツェはまだ『運命』を知らない。『運命』が分かるほどの魔力も持たない。そしてこれから持つこともないだろう。だが、その真剣な眼差しに逆らうこともできず頷くことしか出来なかった。
グレンツェは部屋に戻り楽なワンピースに着替えベットに倒れ込んだ。
この気持ちは初めての感情だ。不安な気持ちももちろんある。魔力がない自分にも嫌気がさす。けどこのお城ならなんだか生活できそうな気もした。これからの生活に希望を持ったのはいつぶりだろうか。
「私がお前に『運命』を教えてやる」
さっきのこの言葉が頭の中で再生される。心がなんだかもどかしいようなうずうずするような不思議な気持ちでいっぱいになったままグレンツェは目を閉じ眠りについた。
(なにかのパーティー??)
「来たようだな」
「っ!エルフォルク様」
目の前の美味しそうな料理に目を取られ奥の席に座っている魔王に気づかず、思わず驚いてしまう。
「どうやら私は料理に負けたようだな。まぁ、いい。そこに座れ。」
どこか楽しそうに言った魔王は自分の向かいに座るように促す。
(まさか魔王と食べるなんて、)
「お前の好むものが分からなかったから一通り作らせた、好きなだけたべろ」
(私の好きなものなんて、、ご飯を食べられるだけで幸せなのに。)
「は、はい、いただきます」
まず目の前に置かれたパンをちぎって食べる。
「っ!!美味しいです!!」
「は?まだパンしか食べてないだろう」
ステーキにナイフを入れていた魔王は驚いたようにこちらを見る。
「こんなに美味しいパンは初めてです!」
いつも孤児院で食べていたパンはみんなの食べかけで固くなったパンだった。暑い時期にはカビの生えたパンを慎重に食べていたこともある。
それに比べてこのパンはふわっふわでやわらかい。噛めば噛むほど甘くなる。
「パンが好きなのか、料理長に伝えておこう」
魔王はまたステーキを切り始めた。
(私もステーキを食べてみよう)
お肉を食べるのは何年ぶりだろうか。孤児院では誕生日を迎えたときにその子だけがお肉を食べられる。
7歳の誕生日には魔力の出現がない事が確定し祝ってもらうことはなかった。
(11年ぶりか、、)
ナイフを使うのは初めてだが目の前の魔王がやっているように見よう見まねでやってみる。が、なかなか力が入らず上手く切れない。
「わっ、」
手からナイフが滑りガチャンと音を立てて床に落ちる。
「も、申し訳ありません!!」
急いで拾おうと立ち上がれば魔王がお前は座れと制される。
落としたナイフはすぐに控えていた侍女が拾い新しいものを用意してくれた。
(絶対に呆れられたわ、、)
ステーキを食べるのは諦めパンやステーキの付け合せをたべることにする。
すると魔王が立ち上がり歩きだした。
(まだ食事が残っているのに、私と食事をするのは嫌になったのね)
下を向けばぽつんと1粒涙が落ちる。
(こんな食事のマナーも知らない私がほんとにエルフォルク家に嫁ぐというの?『運命』も残酷だわ。魔王も『運命』のせいで私を妻にしなければならない。)
「怪我はないか?」
気づけば横から声が聞こえ見上げれば魔王と目が合う。
「っ、はい、申し訳ありません、、」
その綺麗な瞳に吸い込まれそうになり思わず下を向く。
まさか怪我の心配をしてくるとは思わず頭が混乱する。
「これからはここで食べる、食べかけのそれもここにもってこい。」
横に腰をかけ侍女に支持する魔王に使用人たちも困惑しているようだったがテキパキと準備を進め始めた。そしてグレンツェのステーキを横から奪ったかと思えば1口大に切り始める。
さすがに使用人たちも慌てて私がやります!と声を上げたが魔王は私がやる、と聞かない。
「エルフォルク様!自分でやります!」
思わずグレンツェも声をかけたが先程出来なかったではないか、と言われ何も言い返せない。
「食ってみろ」
「ありがとうございます、」
きれいに切られたステーキがグレンツェの目の前に戻ってくる。フォークで刺し食べてみればとろけるような美味しさで目を見開く。
「っ!!美味しい!美味しいです!!」
グレンツェが思わずヴァイザーの方を見れば、初めて見る顔で微笑むヴァイザーの顔が映り、驚いてぱっと目を逸らす。
「ステーキも気に入ったか?」
「はい、、とっても」
「そうか」
次はあれを食べてみろ、と次々にテーブルの上の料理を勧められ食べていけばあっという間にお腹が膨れた。グレンツェには久しぶりの満腹感覚だった。
「エルフォルク様、、」
「なんだ、この魚は口に合わないか?」
「っ!いえ!とっても美味しいです!」
「ならばもっと食え」
「あの、もうお腹がいっぱいで、、」
「そうか、ならば無理をする必要は無い」
なんだか少し寂しそうな表情で言うヴァイザーは使用人に食後のお茶を出すように命じる。
次々と食器が片付けられ繊細な細工の施されたティーカップが出された。華やかな香りがする紅茶のようだ。
「気に入ったものは全て言えばいい、用意させる」
「あ、ありがとうございます」
気に入ったものなんてこのお城に来てからたくさんある。ドレスもお部屋も食事も全部豪華すぎて夢のようだ。
「あの、、エルフォルク様」
「なんだ」
「ありがとうございます、このお城に来てからたくさん良くして頂いて、、なんとお礼を言えばいいのか」
「お前は私の妻になるのだ。当然のことをしたまでだ。」
「ですが、私は教養がありません。何も持ってないのです。それでもエルフォルク様は私をちゃんと見てくださいました。」
「当たり前のことだ。お前に教養があろうとなかろうと妻になることに変わりわない。これから学べばいいのだ。」
「はい、ありがとうございます」
魔力がないからと学ぶ機会さえ与えられなかった。でもここでは違う。
(まだ私にも人として成長するチャンスがあるのかもしれない。)
そしてヴァイザーが魔王ではないこともわかった。確かに魔力は魔王かもしれないけど冷酷なんかでは無い。会った時は怖かったけれど今は恐怖は感じない。
ヴァイザーはお茶を一口飲んでグレンツェを見つめる。
「お前は私の『運命』だ。まだ理解できないかもしれないが私がお前に『運命』を教えてやる。」
グレンツェはまだ『運命』を知らない。『運命』が分かるほどの魔力も持たない。そしてこれから持つこともないだろう。だが、その真剣な眼差しに逆らうこともできず頷くことしか出来なかった。
グレンツェは部屋に戻り楽なワンピースに着替えベットに倒れ込んだ。
この気持ちは初めての感情だ。不安な気持ちももちろんある。魔力がない自分にも嫌気がさす。けどこのお城ならなんだか生活できそうな気もした。これからの生活に希望を持ったのはいつぶりだろうか。
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