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1章
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その後、部屋から出ればレイが待っており城内を案内してくれるという。
(そういえばレイは私に魔力がないこと気づいているのかしら)
「奥様?考え事ですか?」
「あの、、レイは私が魔力がないこと知ってる?」
もし知らなかったとして離れていくとしたら早い方がいい。
(その方が辛くないよね。)
「奥様、、、。存じております。魔力のある者は基本的に魔力の気配を感じることができるのです。もちろん全員が感じ取れるわけではないのですが、ある程度の魔力を持つ者は感じ取れると思います。」
「そう、、レイは嫌じゃない?私に優しくしてレイがいじめられたら、、、」
「そんな!魔力がなくても奥様は奥様です!」
「ありがとう、レイ」
グレンツェは泣きそうになった。こんな私でも優しくしてくれる人がいるなんて思ってもみなかったからだ。こんなに温かい気持ちになったのは久しぶりだった。
「どうしてレイはそんなに優しくしてくれるの?」
「うーん、そうですね。そもそも魔力をそこまで重要だとは思っていません。もちろん魔力があるからこそ便利な時もあります。火の魔法が得意なら早く湯を沸かせるし、水の魔法なら畑にすぐ水をやれます。騎士さん達は魔力が高いことで自分の命を守れたりもします。ですが、私たちは騎士でもないので魔力を使わなくても湯は沸かせるし畑に水もやれます!魔力がなくてもできることはそこまで変わらないのです!」
今の世の中は魔力を重要視しすぎです!なんて声を上げて言うレイは本当にグレンツェを人として見てくれているようだった。
「そんなこと言う人初めて、、ありがとう、レイ」
思っていることを言っただけです!とまたまた元気よく言うレイが本当に誇らしく見えた。レイに会えたということだけでもここに来た甲斐がありそうだとグレンツェは嬉しくなった。
一通りの城内見学をして自分の部屋に案内された。
「わぁ、綺麗」
金色と白を基調としたシンプルな部屋だがどの家具も高級そうで広さも今までいた孤児院と変わらないくらい広い。
「こんなに綺麗な部屋使ってもいいの?」
「もちろんです!奥様!自由にお使いください!では、何か困ったことなどありましたらこのベルをお鳴らし下さい!また夕食時にお呼びします!」
大きな部屋にぽつんと残されたグレンツェは何をしていいかも分からず、とりあえず天蓋の付いた大きなベットに飛び込んだ。
(これからどうなるんだろう)
不安は消えない。レイはとても優しかったがヴァイザーについてグレンツェはまだ何も知らない。そんな人の妻になるなんてまだ想像もできなかった。
愛のある幸せな結婚がしたい、なんて小さい頃は思っていたが、今は結婚出来ることだけでも奇跡のようだ。しかも、相手はこの国のすべてを持っている人。
ヴァイザーは『運命』だからグレンツェと結婚する。分かっていても心の中のわがままなグレンツェが愛のある結婚を望んでいる。
(魔力のない私にはわがままなんて許されないのに。)
ベットの上でひとりため息をつけば外から微かに声が聞こえた。
扉に近づき耳を澄ます。
「頼んだ」
「はい、仰せのままに。」
どうやら男の人が話してるみたいだ。
(誰だろう?部屋から出ちゃだめとは言われていないし出てもいいよね?)
慎重に扉を開ければ背の高くガタイのいい男の人が2人扉の前に立っていた。どうやら服装的に騎士のようだ。
「奥様、今ご挨拶にお伺いするところでした。」
「今日から奥様の護衛を任命されました。エルフォルク騎士団、エニック・マルヌと申します。」
額に大きな古傷があり、睨まれたら萎縮してしまいそうなほど鋭い切れ長な目だが、そこまで威圧感はなくどこか落ち着く雰囲気だ。
「私はエルフォルク騎士団、カイン・ゲネルと申します。」
エニック卿よりも少し小柄ではあるがガタイもよくやわらかい印象だ。
「あっ、私はケイン・グレンツェと申します。」
「では、私共はここにおりますので何かあればお申し付けください。」
「あのっ、」
「はい、なんでしょうか?」
「お城の中を見て回ってもいいでしょうか、、」
「先程、侍女が案内したと聞いたのですが」
「そうなのですが、時間もありますし暇なので、、」
「かしこまりました。」
「では、いってきます。」
「??はい、いきましょう。」
「あ!いえ、ひとりで大丈夫です。」
「そういう訳にはいきません。私共は奥様の護衛を任されていますので。」
「外には出ません!お城の中を歩きたいんです。」
「はい。お城の中とはいえどんな危険が潜んでいるのか分かりません。お供します。」
(とっても気まずい、、。)
ひとりでふらふらと歩く予定だったのに後ろについてくる2人の視線が痛い。
ふと窓の外を見ると花園のようなものが見えた。
今は春。花が綺麗な時期だ。
(とっても綺麗)
「あの、花を見に行きたいのですが、、」
エニック卿は表情を変えずに言う。
「申し訳ありません、奥様。外は出ないように言いつけられております。」
「そうですか、変なこと聞いてすみませんっ、、。」
「こちらこそご希望に添えず申し訳ありません。」
やはり城内でも外はダメなようだ。
さっきレイが案内してくれた時も外は出ては行けませんよ!と言われた。
(魔王にも城からは出られないと思えっていわれたもんね、、)
「あの、なんで外はダメなんですか?」
「それは、、ヴァイザー様にお聞きした方が良いかと」
エニック卿からはあまり話したくないという雰囲気を感じる。
(エニック卿もカイン卿も私に魔力がないことに気づいてるはず、レイが優しいから既に勘違いしてた)
そこからはただひたすらにお城の中を歩いた。レイが案内してくれたのは風呂場や図書室などグレンツェが使うような部屋だけだったのもあるが、歩いても歩いても見きれないほどお城は広かった。
さすがに少し疲れて部屋に戻れば部屋の前にレイが立っていた。
「あ!!奥様!返事がなかったので心配してました」
「ごめんなさい、お城の中を歩いてたの」
「そうだったのですね!お疲れかもしれませんが夕食の準備が出来ています」
「分かったわ」
「ご案内します!」
(そういえばレイは私に魔力がないこと気づいているのかしら)
「奥様?考え事ですか?」
「あの、、レイは私が魔力がないこと知ってる?」
もし知らなかったとして離れていくとしたら早い方がいい。
(その方が辛くないよね。)
「奥様、、、。存じております。魔力のある者は基本的に魔力の気配を感じることができるのです。もちろん全員が感じ取れるわけではないのですが、ある程度の魔力を持つ者は感じ取れると思います。」
「そう、、レイは嫌じゃない?私に優しくしてレイがいじめられたら、、、」
「そんな!魔力がなくても奥様は奥様です!」
「ありがとう、レイ」
グレンツェは泣きそうになった。こんな私でも優しくしてくれる人がいるなんて思ってもみなかったからだ。こんなに温かい気持ちになったのは久しぶりだった。
「どうしてレイはそんなに優しくしてくれるの?」
「うーん、そうですね。そもそも魔力をそこまで重要だとは思っていません。もちろん魔力があるからこそ便利な時もあります。火の魔法が得意なら早く湯を沸かせるし、水の魔法なら畑にすぐ水をやれます。騎士さん達は魔力が高いことで自分の命を守れたりもします。ですが、私たちは騎士でもないので魔力を使わなくても湯は沸かせるし畑に水もやれます!魔力がなくてもできることはそこまで変わらないのです!」
今の世の中は魔力を重要視しすぎです!なんて声を上げて言うレイは本当にグレンツェを人として見てくれているようだった。
「そんなこと言う人初めて、、ありがとう、レイ」
思っていることを言っただけです!とまたまた元気よく言うレイが本当に誇らしく見えた。レイに会えたということだけでもここに来た甲斐がありそうだとグレンツェは嬉しくなった。
一通りの城内見学をして自分の部屋に案内された。
「わぁ、綺麗」
金色と白を基調としたシンプルな部屋だがどの家具も高級そうで広さも今までいた孤児院と変わらないくらい広い。
「こんなに綺麗な部屋使ってもいいの?」
「もちろんです!奥様!自由にお使いください!では、何か困ったことなどありましたらこのベルをお鳴らし下さい!また夕食時にお呼びします!」
大きな部屋にぽつんと残されたグレンツェは何をしていいかも分からず、とりあえず天蓋の付いた大きなベットに飛び込んだ。
(これからどうなるんだろう)
不安は消えない。レイはとても優しかったがヴァイザーについてグレンツェはまだ何も知らない。そんな人の妻になるなんてまだ想像もできなかった。
愛のある幸せな結婚がしたい、なんて小さい頃は思っていたが、今は結婚出来ることだけでも奇跡のようだ。しかも、相手はこの国のすべてを持っている人。
ヴァイザーは『運命』だからグレンツェと結婚する。分かっていても心の中のわがままなグレンツェが愛のある結婚を望んでいる。
(魔力のない私にはわがままなんて許されないのに。)
ベットの上でひとりため息をつけば外から微かに声が聞こえた。
扉に近づき耳を澄ます。
「頼んだ」
「はい、仰せのままに。」
どうやら男の人が話してるみたいだ。
(誰だろう?部屋から出ちゃだめとは言われていないし出てもいいよね?)
慎重に扉を開ければ背の高くガタイのいい男の人が2人扉の前に立っていた。どうやら服装的に騎士のようだ。
「奥様、今ご挨拶にお伺いするところでした。」
「今日から奥様の護衛を任命されました。エルフォルク騎士団、エニック・マルヌと申します。」
額に大きな古傷があり、睨まれたら萎縮してしまいそうなほど鋭い切れ長な目だが、そこまで威圧感はなくどこか落ち着く雰囲気だ。
「私はエルフォルク騎士団、カイン・ゲネルと申します。」
エニック卿よりも少し小柄ではあるがガタイもよくやわらかい印象だ。
「あっ、私はケイン・グレンツェと申します。」
「では、私共はここにおりますので何かあればお申し付けください。」
「あのっ、」
「はい、なんでしょうか?」
「お城の中を見て回ってもいいでしょうか、、」
「先程、侍女が案内したと聞いたのですが」
「そうなのですが、時間もありますし暇なので、、」
「かしこまりました。」
「では、いってきます。」
「??はい、いきましょう。」
「あ!いえ、ひとりで大丈夫です。」
「そういう訳にはいきません。私共は奥様の護衛を任されていますので。」
「外には出ません!お城の中を歩きたいんです。」
「はい。お城の中とはいえどんな危険が潜んでいるのか分かりません。お供します。」
(とっても気まずい、、。)
ひとりでふらふらと歩く予定だったのに後ろについてくる2人の視線が痛い。
ふと窓の外を見ると花園のようなものが見えた。
今は春。花が綺麗な時期だ。
(とっても綺麗)
「あの、花を見に行きたいのですが、、」
エニック卿は表情を変えずに言う。
「申し訳ありません、奥様。外は出ないように言いつけられております。」
「そうですか、変なこと聞いてすみませんっ、、。」
「こちらこそご希望に添えず申し訳ありません。」
やはり城内でも外はダメなようだ。
さっきレイが案内してくれた時も外は出ては行けませんよ!と言われた。
(魔王にも城からは出られないと思えっていわれたもんね、、)
「あの、なんで外はダメなんですか?」
「それは、、ヴァイザー様にお聞きした方が良いかと」
エニック卿からはあまり話したくないという雰囲気を感じる。
(エニック卿もカイン卿も私に魔力がないことに気づいてるはず、レイが優しいから既に勘違いしてた)
そこからはただひたすらにお城の中を歩いた。レイが案内してくれたのは風呂場や図書室などグレンツェが使うような部屋だけだったのもあるが、歩いても歩いても見きれないほどお城は広かった。
さすがに少し疲れて部屋に戻れば部屋の前にレイが立っていた。
「あ!!奥様!返事がなかったので心配してました」
「ごめんなさい、お城の中を歩いてたの」
「そうだったのですね!お疲れかもしれませんが夕食の準備が出来ています」
「分かったわ」
「ご案内します!」
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