深きダンジョンの奥底より

ディメンションキャット

文字の大きさ
51 / 124
絶え間

強者

しおりを挟む
 シズク? なんでここに? 生きているのか? どうやってこな場所に?
 無数に疑問を抱き、それを真っ先に聞きたくて口を開こうとする。
 だが、

「っ……っ!?」

── くそっ、拘束のせいで声が出せない!

 姿も声もどこからどう見ても、いま俺を守ってくれている彼女はシズクだった。だが、俺の知っている彼女と異なる点が一つだけある。

「知り合いですか? 邪魔しないでくれませんかぁ?」
「うーん、だ」

 堂々としているのだ。目の前の彼女は怖いもの無しといった感じで、明らかに苛立っているユミを笑って一蹴しているが、俺の知るシズクはもっとオドオドとしていて怖がりだったはず。

「あ、そ。じゃあ死んでもらいます」

 ユミは吐き捨てるのと同時にデッドウルフの脚力を活かして飛び上がったかと思えば「<毒爪波ヴェノムスラッシュ>」とスキルを発動させる。その鋭い前足の爪2本で虚空を斬る度に宙から降り注ぐ毒属性が付与された攻撃。
 その一つ一つが即死級の威力にも関わらず、高密度かつ大量に頭上に襲いかかる。だが、シズクは避ける素振りを見せない。いや、避けられないのだ。このままでは俺が八つ裂きにされてしまうから。

── ちくしょうっ、俺が動けさえすれば……!

 完全に俺が足を引っ張っている。俺を守るという制約のせいでシズクは……。申し訳なさと惨めさに俺は苦しくなる。が、そんな俺の心中と正反対に、シズクはどうでもいいような無関心な声でこう言った。
 
「ふーん、<収孔ヴォイドストレージ>」

 <毒爪波ヴェノムスラッシュ>からシズクを守るように、何も無かった宙に真っ黒の円が出現する。厚さが無い、理を無視したようなその円はユミの攻撃を全て音もなく飲み込んだ。
 俺はその異様なスキルに目を見張るが、ユミはこの攻撃で殺れるとハナから思っていなかったのだろう。既に次撃を仕掛けていた。

「<爆吼バーストロア>!」

 上の攻撃に対処するシズクの隙を突くような、地面に極限まで這い忍び寄ってからの音の攻撃。

 ──バン!! という殴られたような強烈な衝撃が耳に響き、次の瞬間には世界の音がぼやけた。滲むような痛みや首を伝わる液体の感触からして鼓膜が破れたのだろう。

 シズクもモロに喰らったようだ、耳を抑えて険しい表情を見せる。だが、戦意は失っていない。聴覚を奪い、さらに追い打ちを仕掛けようとするユミをしっかり目で追っていた。

「<……>!」

 さっきの黒い穴、今度は接近していたユミの目の前にそれが再び姿を見せた。かと思えば、次の瞬間、その穴からユミが放ったハズの<毒爪波ヴェノムスラッシュ>が飛び出し、殆ど回避不可能に思えた、超至近距離からの不意打ち。

「っ!!??」
「<……帰>!」

 しかし、ユミは体を真後ろに翻らせてギリギリながらも全弾を避ける。一時後退させることに成功したシズクは、その隙に回復スキル? を発動させる。突然その声が聞こえたことから推測するに、俺にも効果は適用されたようだ。
 
「チッ……」

 ユミは何らかのスキルによって後退しシズクからかなり距離を取る。未知の敵が扱う未知のスキルに対する警戒と、『代償成就』を発動させる時間を作るためだろう。

「<ハイパー加速アクセラレート><風蹴りゲイルキック><武器召喚サモンウェポン>」
 
 それを分かってかシズクもスキルを発動させ、足を踏み込んだ! と思えば既にその場にシズクの姿は無く、いつの間にかユミの寸前まで移動している。
 <加速アクセラレート>の上位スキルである<ハイパー加速アクセラレート>のスピードは凄まじく、俺が移動し終わったシズクを捉えてから、少し遅れてようやく超速移動の衝撃波が通過点に降り注ぐ吹雪を塵に変えたぐらいだ。
 
「なっ!?」
 
 これにはユミも驚きを隠せず、そう声を上げる。シズクはそのままどこからともなく取り出した槍で流れるような連撃を仕掛ける、が、やはり一筋縄では行かない。元より四足歩行という獣の姿をしているユミのほうが圧倒的に接近戦は有利なのだ。
 怒涛の攻撃をユミはどうにか凌ぎながら、叫ぶ。
 
「『代償成就』! 永遠に味覚を代償に一定時間スキルのクールタイムを無効化!<烈爪嵐フィアスクローストーム><死咆乱譜デスロアバラージュ>!!」

 クールタイムを消したおかげで無制限に溢れ出し続ける死の名を冠する咆哮の攻撃と、逃げ道を塞ぐように拡散する爪の斬撃波。
 そんな絶望的状況、シズクは笑っていた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

異世界亜人熟女ハーレム製作者

†真・筋坊主 しんなるきんちゃん†
ファンタジー
異世界転生して亜人の熟女ハーレムを作る話です 【注意】この作品は全てフィクションであり実在、歴史上の人物、場所、概念とは異なります。

処理中です...