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夢に見る
10.
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「ただいまー………」
ノロノロとバッグを椅子に下ろす。中身を探り、帰り道で購入した鎮痛剤を引っ張り出した。小さい瓶に入った、ほんのり緑色のそれを一気に呷る。ミント水みたいな味の後に、ほんの僅かな苦味を感じた。
まだズキズキと傷は痛むけど、薬が効いてきたら少しはマシになるかな……。
俺はベッドに腰掛けて、左腕に視線を落としてため息をついた。
ドッと身体が重くなった気がして、ぽすっとベッドに横たわり目を閉じる。
「あー…………疲れた……。」
脈打つような痛みを、まだ左腕に感じるけど。薬の効果もあり俺はゆっくりと眠りの縁に落ちていった。
☆★☆★☆★☆★
「……………ふっ…。ぁ………」
ねっとりと、腕に生暖かなナニかが這う感触がする。ゾワリと甘く痺れる感覚が背筋を走った。
ーーーーな、に?
そちらを見ようと思っても、身体は動かず。目を開けているつもりでも、何も視界には入らず。
自分がどんな状況なのか分からなくて、不安になる。
「怖い?」
囁き声が聞こえる。
ーーーーだれ?
「ふふ……さぁ誰でしょうね?少なくとも………」
左の掌が持ち上がる。柔らかくて温かなものが押し当てられて、クスクスと密やかに笑う気配を感じた。
「この傷を付けたような愚か者とは違って、貴方を害するつもりは毛頭ありませんよ」
ちゅっ、と音がする。これ、唇?
ーーーーひゃっ!?
ペロリと指に舌が這う。なんで?どうして?こんなにゾワゾワと……………。
「気持ちいい、と思ってる?何故指を舐められて感じるのだろう……って……」
温かで湿ったナカに指が囚われる。ゆったりと、指と指の間を舌が愛撫する度に、身体がぴくんっと跳ねてしまう。
「不思議に思ってる?」
指を咥えたまま、俺の疑問を暴いていく。
ーーーーあ……ぁああ……っ
声が出ているのか、いないのか……。甘い刺激に、意思に反してピクつく身体は、本当に反応してるのか……。
色んな疑問も不安も、少しずつ心身を犯していく快感にゆるゆると溶けていく。
指だけなのに……。
もぞりと身体が揺れる。「……っんぅ」と、声を飲み込む。
ーーーーこんなの、可怪しい………。誰とも分からないヤツに、こんな………。
「羞恥に歪む顔も、何て素敵なんでしょう。ふ……指だけでは物足りない?」
含み笑いと共に、つつっ………と脇腹を指で辿られ耳元で囁いてくる。
「快楽に素直な貴方が、本当に愛おしい…………」
鎖骨にカリっと歯を立てた感触がする。そしてチクンと小さな痛みを感じた。
「貴方は色が白いから、私の赤い跡がより一層扇情的で堪りませんね……」
ーーーーあんた、だれ?
「知りたい?……本当に?」
ーーーー………………。
「では、取引を。貴方の、この怪我の原因。誰なのか教えて?そうしたら、私も正体のヒントを差し上げますよ」
それまで凄く甘い雰囲気だったのに、怪我に話が及ぶとヒヤリと冷たい気配が流れ始めた。
ーーーーっツ……。
こわい……。この、気配が……。これ『威圧』?
「ああ………私の宝物。貴方を怖がらせるつもりではなかったのに、つい………」
ふっと気配が緩む。
「許された僅かな時間にすら会えない事が、こんなにも私を苦しめる。それ程に大切な貴方を傷付けるなどと、到底許せる事ではありませんよね?」
ね?と念を押されて、俺は思わず昼間の奴らの顔を思い浮かべた。
『宰相閣下に近付かないでくださいね?次はこの程度では済みませんよ』って言ってた、彼。
全く周りが見えない中、俺を組み敷いているだろう、この『男』と知り合い?
くすり………。暗く嗤う声がする。
「視えた………。」
労うような口付けが額に落とされる。
「彼等、ですね」
ゾクゾクと、不安と恐怖が湧き上がる。
ーーーーアイツらに何かするつもり?
「気になります?自分を襲った愚か者の末路が、一体どうなるのか」
『聞くな』と言われた気がした。ぐっと言葉を飲み込んだ俺の髪を、これ以上ないくらい優しく梳く。
「………ふふ、良いコ」
囁きは、唇に触れるか触れないかの距離で……。そして不安を吸い取るように、そっと唇が重なったのだった。
ノロノロとバッグを椅子に下ろす。中身を探り、帰り道で購入した鎮痛剤を引っ張り出した。小さい瓶に入った、ほんのり緑色のそれを一気に呷る。ミント水みたいな味の後に、ほんの僅かな苦味を感じた。
まだズキズキと傷は痛むけど、薬が効いてきたら少しはマシになるかな……。
俺はベッドに腰掛けて、左腕に視線を落としてため息をついた。
ドッと身体が重くなった気がして、ぽすっとベッドに横たわり目を閉じる。
「あー…………疲れた……。」
脈打つような痛みを、まだ左腕に感じるけど。薬の効果もあり俺はゆっくりと眠りの縁に落ちていった。
☆★☆★☆★☆★
「……………ふっ…。ぁ………」
ねっとりと、腕に生暖かなナニかが這う感触がする。ゾワリと甘く痺れる感覚が背筋を走った。
ーーーーな、に?
そちらを見ようと思っても、身体は動かず。目を開けているつもりでも、何も視界には入らず。
自分がどんな状況なのか分からなくて、不安になる。
「怖い?」
囁き声が聞こえる。
ーーーーだれ?
「ふふ……さぁ誰でしょうね?少なくとも………」
左の掌が持ち上がる。柔らかくて温かなものが押し当てられて、クスクスと密やかに笑う気配を感じた。
「この傷を付けたような愚か者とは違って、貴方を害するつもりは毛頭ありませんよ」
ちゅっ、と音がする。これ、唇?
ーーーーひゃっ!?
ペロリと指に舌が這う。なんで?どうして?こんなにゾワゾワと……………。
「気持ちいい、と思ってる?何故指を舐められて感じるのだろう……って……」
温かで湿ったナカに指が囚われる。ゆったりと、指と指の間を舌が愛撫する度に、身体がぴくんっと跳ねてしまう。
「不思議に思ってる?」
指を咥えたまま、俺の疑問を暴いていく。
ーーーーあ……ぁああ……っ
声が出ているのか、いないのか……。甘い刺激に、意思に反してピクつく身体は、本当に反応してるのか……。
色んな疑問も不安も、少しずつ心身を犯していく快感にゆるゆると溶けていく。
指だけなのに……。
もぞりと身体が揺れる。「……っんぅ」と、声を飲み込む。
ーーーーこんなの、可怪しい………。誰とも分からないヤツに、こんな………。
「羞恥に歪む顔も、何て素敵なんでしょう。ふ……指だけでは物足りない?」
含み笑いと共に、つつっ………と脇腹を指で辿られ耳元で囁いてくる。
「快楽に素直な貴方が、本当に愛おしい…………」
鎖骨にカリっと歯を立てた感触がする。そしてチクンと小さな痛みを感じた。
「貴方は色が白いから、私の赤い跡がより一層扇情的で堪りませんね……」
ーーーーあんた、だれ?
「知りたい?……本当に?」
ーーーー………………。
「では、取引を。貴方の、この怪我の原因。誰なのか教えて?そうしたら、私も正体のヒントを差し上げますよ」
それまで凄く甘い雰囲気だったのに、怪我に話が及ぶとヒヤリと冷たい気配が流れ始めた。
ーーーーっツ……。
こわい……。この、気配が……。これ『威圧』?
「ああ………私の宝物。貴方を怖がらせるつもりではなかったのに、つい………」
ふっと気配が緩む。
「許された僅かな時間にすら会えない事が、こんなにも私を苦しめる。それ程に大切な貴方を傷付けるなどと、到底許せる事ではありませんよね?」
ね?と念を押されて、俺は思わず昼間の奴らの顔を思い浮かべた。
『宰相閣下に近付かないでくださいね?次はこの程度では済みませんよ』って言ってた、彼。
全く周りが見えない中、俺を組み敷いているだろう、この『男』と知り合い?
くすり………。暗く嗤う声がする。
「視えた………。」
労うような口付けが額に落とされる。
「彼等、ですね」
ゾクゾクと、不安と恐怖が湧き上がる。
ーーーーアイツらに何かするつもり?
「気になります?自分を襲った愚か者の末路が、一体どうなるのか」
『聞くな』と言われた気がした。ぐっと言葉を飲み込んだ俺の髪を、これ以上ないくらい優しく梳く。
「………ふふ、良いコ」
囁きは、唇に触れるか触れないかの距離で……。そして不安を吸い取るように、そっと唇が重なったのだった。
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