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夢に見る

7.

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よく分からない人だったな………。

俺が気を取り直して食事を再開させると、さっきまで静かだった食堂が再びざわめき始めた。

あれ……、いつの間に静まり返ってたんだろう?その前はザワザワしてたのに……。
首を傾げつつ、午後の業務に戻るべく、目の前の料理を片付けていった。
背後の面々が、驚愕に目を見開いてる事にも気付かずに。


あれから毎日とは言わないけど、結構な頻度でマイナさんと食堂で出会う。その度に声をかけてくれて、相席で食事を共にする。
彼は一体何が楽しくて、こんな平民と食事をするんだろう。
混雑している食堂なのに、彼の周りにはいつも誰も座ってなくて、ちょっと作為じみたモノを感じる。

会うたびに甘く微笑んで、不意に髪や頬に指を伸ばしてきて……。
ふとした拍子に顔を覗き込んでは顔を寄せてくる。愛おしげに瞳を緩ませているように見えるけど、それは気のせい?
それとも俺の願望が見せる夢?
誂ってるんだろうか?
平民がどんな対応するのか見てるの?
分からない。
何でそんな思わせ振りな行動を取るんだろう………。

でもちゃんと自分の気持ちに鍵は掛けてるつもりだ。
この人は、高位貴族。気紛れに俺にちょっかい出してるだけ。大丈夫。それは分かってる。
俺が、この人の『特別』になんてなれるわけない。
毎度毎度、自分に言い聞かせて。過度に期待をしないように戒める。
じゃないと、やっぱり夢を見てしまうんだ。もしかしたら『俺も特別な唯一人の存在になれるかも』って。

たった一人の、特別になりたいって…………。

俺も随分我儘になったなぁ……。
小さく溜め息をつく。施設に居るときはこんなんじゃなかった。
ちゃんと俺が見る夢は分不相応だって、キチンと理解して諦める事ができていたのに。ここで出会う人達は皆優しくて………。だから、つい希望を持ってしまうんだ。

ソルネスから貰ったペンダントにそっと触れる。冷たいはずの石は俺の身体で温かくなってて、その温もりにソルネスの優しさを思い出す。

外の世界には自由があると思ってたよ、ソルネス。

疲れてんのかな、俺。だから、こんな下らないこと色々考えちゃうんだ……。
仕事をちゃんと熟すために規則正しい生活をしているのに、確かに最近寝ても寝ても疲れが取れない。そうだ。こんな不毛な考えに囚われるのは、そのせいだ。

今日の昼休憩は中庭の椅子で昼寝して過ごそう!

そう考えて、俺はペンを置き休憩を取るべく机を片付け始めた。

単なる思い付きだったのに、これがあんな騒動に発展するなんて思いもしなかったんだ……。



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