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夢に見る

4.

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「こんな時間か………」

ふと時計に目を向けたガンテ室内長が呟く。

「今日は急ぎの仕事もないし、3人で食堂に行くか」

「あらん、いいわねぇ」

午前中の説明も粗方終わったみたいで、二人に誘われて食堂に向かった。

「凄い混んでますね」

「今日は特別混んでるな」

「理由は明白よねぇ。冷酷宰相が来てんだから、皆何事かって思うもの」

「?」

話の内容が分からない。曖昧に頷きつつ、沢山の官吏でごった返す食堂で、席を確保するべく辺りを見渡した。

「お二人はよく食堂を利用するんですか?」

「ま、偶に……な(アイツ・・・が煩せぇし。ボソ)」

「時々ね。気分転換よぉ(ホンっと『待て』ができないんだから。ボソ)」

「?」

キョトンと瞬く。このお二人、時々言葉の最後がボソボソと小声の呟きになって、聞き取れないことがある。
一度聞き返してみたら、それはもう二人共素敵な笑顔で、「気にするな」「気にしないでぇ」と返ってきた。ちょっと怖かった。
うん、知らなくて良いことなら、無視………いや、気付かないフリも大事だよな。

「ほらレイ、よそ見をしてるとぶつかる」

さり気なく頭に掌を当てて、正面から歩いてきた人とぶつからないように庇ってくれるガンテ室長。

「ふふふ、レイちゃん?ここはデザートも絶品なの。これどうぞ」

俺のお盆にコトンとデザートの皿を追加するルーデル先輩。
優しい上司と先輩で、本当に良かったとほっこり気分でいると、妙に背後がざわめいた。

「騎士の皮を被った鬼畜が人を庇う、だと………っ!?」
聖域サンクチュアリの悪魔が食べ物を譲ったぞっ??!」
「冷酷宰相様も来てるし!この世の三大魔神が、何で揃って食堂ここにいるんだよっ」
「「「天変地異の前触れかもしれんぞっ!!」」」

ザワザワと広がる動揺に、ちょっとビビる。

「えっと…………」

恐る恐る振り返ろうとしたら、ガンテ室長がポンポンと頭を撫で顎をしゃくった。

「テーブルが空いたぞ」

「あの今更だけど、俺みたいな平民がここ利用して大丈夫ですか?何か、今………」

「勿論、大丈夫よ。ふふっ余計な話をする人は、明日には(この世から)居なくなってるから大丈夫♡」

何か全然大丈夫じゃない一言が紛れ込んだ気がするけど………。
それより気になるのは、妙に寒々しい気配が流れてくること。何だろう、これ?王宮、意外に怖いとこだな……。

「………………(マイグレースが怒ってんな。ボソ)」

「………………(余計な発言した奴らマジで消されちゃうわねぇ。ボソ)」

笑顔だけど無言の二人を見つつ、ちょっと不安を感じながら昼食時間は過ぎるのだった。
ソルネス、俺、ここで無事にやっていけるかな?
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