[離婚宣告]平凡オメガは結婚式当日にアルファから離婚されたのに反撃できません

月歌(ツキウタ)

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結婚式当日ですが

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平凡オメガの結婚式のお色直し。誰得って自分得でしかない。鏡に全身を映しながら、ちょっと微笑んでみた。

「白いスーツは平凡顔が悪目立ちするな」

でも、よいのだ!奇跡的にイケメンのアルファの伊集院正樹いじゅういんまさきを射止めて、結婚出来たのだから。

結婚式の前日に婚姻届も出した。時流にのり夫婦別姓を選んだが、彼の苗字を名乗るのもありだったかなと思ったりする。山崎直人やまざきなおとより、『伊集院直人』のほうが高級感が溢れてるよな。何となくだけど。

「そろそろ正樹と合流する時間だな」

新郎オメガの控え室から僕が出ようとした時、突然扉が開いて正樹が飛び込んできた。彼からはアルファの香りが匂いたち、僕は火照って彼を見つめていた。だが、彼の爆弾発言で脳みそが吹き飛んだ。

「奇跡が起こった!式場の衣装係が俺の運命の番だった。発情して首を噛んだから間違いない。だから、離婚してくれ!」

「はぁ?え?待ってよ、正樹!」
「離婚してくれるよな、直人?」

「結婚式の最中に離婚話とか正気なのか?簡単に離婚に応じるわけがないだろ!」

「法律では運命の番が現れた場合は、相手の同意なしに離婚できる決まりだ」

僕は思わず唇を噛んだ。その法律はアルファのみに適応される特権だ。

「俺は花木静はなきしずか という運命の番と出逢い首を噛んだ。離婚条件は成立している。今日、離婚届を出してくる。直人には慰謝料を払う。互いに弁護士を雇って金銭の取り決めをしよう」

「ふざけるな!ふざけるな!ふざけるな!僕をなんだと思っているんだ。昨日、婚姻届を出して、今日離婚届を出すなんて、そんな事許せるかよ!」

僕が正樹に掴み掛かった時、か細い声が聞こえた。

「ごめんなさい・・」

小柄なオメガ男子が瞳に涙をためて、僕に頭を下げていた。その首筋には噛み痕があり、オメガの体は火照っていた。彼は発情している。その様子を見た正樹は僕を突き飛ばした。そして、運命の番を抱きしめる。

「俺はこいつと・・花木静と結婚する」

抱きしめ合う二人を見ていたら、もう惨めでバカらしくなってしまった。僕は正樹に向かって告げていた。

「法律で定められたアルファの特権を行使しなよ。ただし、その前に婚姻も結婚式もぶち壊した理由を、正樹と花木さんで説明してきて。二人でだよ!二人で参列者に頭を下げてきて。二人とも罵れるといい!」

「・・分かった」

冷静ではいられない僕を置いて、二人は出ていった。僕はその場に座り込み、いつの間にか泣き出していた。


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