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第33話
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「さて」
少年は、この山の中で一人佇んでいた。
一人でここまでの事を振り返る。そろそろ和也が、行動に打ってくれる事を期待して伝えた事。
無事に、彼女の身に起きる悲劇を回避したその先で。
「静、もうすぐ君との約束を完全に果たせそうだ」
*
美術部の展示を見た後も、和也は凛と文化祭を巡り続けていた。
この高校の文化祭は一日間の開催で、その中で様々な催しが行われている。一番の目玉は、体育館で行われるステージだ。終わり間際に行われる演劇を見たい、と凛が話した事で最後に行く事は決定済みだ。
そして、校舎では先ほどの様に展示コーナーとかもあるが他にもちょっとしたゲームが楽しめるコーナー等をクラスや部活単位で行っている。
和也たちはそうした高校の文化祭の催しを楽しんでいた。
「本当に、今日は良かったなあ」
凛がそんな事を言った。
「やっぱり、展示が上手くいった事とか?」
「それもあるけど、こうして和也くんと文化祭を回れるのも楽しい」
さらっとそんな事を言う彼女に対し、和也は少し胸が熱くなる。そんな恥ずかしくなるような事をこんな簡単に言ってしまえる凛は凄い。
「ところで、さ」
そんな凛相手に和也は、こんな提案をする事を決めた。
「ちょっと二人で休憩しないか? 人があまりいない様な所で」
「えっ? ……良いけど、なんで」
人があまりいない所で、と言いたそうな彼女の顔を見ると和也はなんとも言えなかった。理由はあるにはある……のだが、今彼女に言うのは憚られた。
「ここは、人がいなくて良かったね」
今、彼女が言った事は文化祭でどこもかしこも人がいた事に対しての事だった。
「本当に。こんな隠れ穴場みたいな所があったなんて」
和也はそう答えた。
今、二人がいる場所はグラウンド……の逆側にある所。ここは、ちょっとした広場みたいな感じになっていて、木が生い茂っている中にベンチがいくつかあった。改めて探してみた結果こんな所が高校にあったなんて新しい発見だった。
「文化祭って賑やかだから、そんな時にこうした落ち着いた場所を見つけると何だか不思議……」
「そう……だね」
和也は凛の言う事を肯定した。
こうして、落ち着いた場所にいると何だか気持ちが洗われるような……その様な、心持ちになっているというのが肌身で伝わってくる。なんだか、今日見つけて良かったなあと思えるぐらいには静かな場所だった。
「和也くんって、前に公園で話していた事覚えてる?」
「……覚えてるけど、どうして急にそんな事を?」
和也は急な話にドキリと、胸中少し痛みを覚えた。
「……お姉ちゃんってこういう場所が好きだったのを思い出して。よく考えたら潟ケ谷神社にも良く行っていた様な気がするなあ」
「神社に、よく来ていた……」
それは、和也にとっては何だか偶然とは思えなかった。
「お姉ちゃんって、私よりずっと年上だったの。いくつくらいだと思う?」
「えっ……う~ん。四歳?」
「ううん。十一歳も離れていたの」
「マジか」
そうなると、結構な年上だ。自分より年上……と考えると、今もしいたなら……二十代後半ぐらいなのだろうか。
「懐かしいなあ。私、手芸とかを趣味にするようになったのお姉ちゃんの影響なの」
「そう、なんだ」
「今より小さい頃に、お姉ちゃんに教えて貰っていたの。それがずっと楽しくて……」
凛はスラスラと思い出話をしていた。
それだけ姉の事を話せるのは、きっと凛にとって大好きなお姉さんだったんだろうというのが全く知らない和也からしても聞いているだけでそう思えるのだから間違いない。
「けれどね……その時からお姉ちゃん病気がちで」
「……そっか」
それは、公園で話していた十年前の事を話しているのだろう。
「よく思い出したらお姉ちゃんが家にいる事ってあまりなかったの。後から考えるとそういう事だったのかなって」
「でも、神社にはよく行っていたって話じゃないの?」
「それは確か、病院から歩いて行けるくらい近い距離だったから健康目的で歩いていただけだったと思う」
そういう事だったのか……。和也は、凛からの話を聞く度に彼女の姉の身にまつわる状況をなんとなく想像できた。
和也は、今ある仮説があった。
その仮説というのは自分のある記憶の中に突然現れた女性と凛の話す女性の事についてだった。まず、記憶の中の女性にこれを将来大事な人に渡して欲しいという形で渡されたパンダ柄の封筒。
何故、パンダ柄なのか。それは、自分が書いたものだと送りたい相手に伝えたかった証拠だと思う。
「……凛、話があるんだ」
そして、あの少年は……凛に渡して欲しいと言って来たのだ。更には、前日の準備で凛が見せてくれたもの。
見よう見真似で作ったものだと、凛は言っていたアレはパンダの折り紙だった。それも封筒としても使える様に折られた。そこから、和也はもしかして……と考えた。
「どうしたの?」
「ある人から……これを、凛に渡すようにって言われたものがあるんだ」
恐らく、凛はこの話をされてすぐには理解できなかっただろう。
「えっ……どう言う事?」
かなり困惑している様子で、聞いてきた。
こんな話を急にさせられて凛は困っている事は確実だろう。けれど、これだけはやらなければいけないのだと和也はなんとなく理解していた。
これは。いや、これも自分がやらなければいけない。
「……それが、これなんだ」
和也は今朝から、ずっとポケットにしまっていたそれを凛の目の前で見せる。
「……え!?」
それを見た凛の顔は、すぐに驚愕の表情となった。
それは、彼女にとって思い出となっていたものだったからだ。
「お姉ちゃんの……封筒だ……?!」
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