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「ここにいても話は進まないかラ、さあ、僕の家へ行こうカ」
「ああ、行こう」
テトとシシは住む住民達の視線を集めながら、街の中央を歩き、奥の立派な屋敷へと向かった。さっき、マキロの森で2人の話を聞いていて、テトがドラゴンの国をおさめる王だと――どことなく気付いていた。
でも国をおさめる王なら、幼い頃から婚約者がいるはず。……だけど、彼はどうして森に出て女性を攫うのかしら……見た目もステキだと思うけど。
それが表情に出ていたのだろう、テトが話しをはじめた。
「やっぱリ、シシのお嫁さんは、僕がなぜ女性をさらうのか気になっているネ? その理由は、僕の婚約者が相手してくれないからダ!」
「え、婚約者がいるのですか?」
「おまえ、婚約者がいるのか!」
そして女性をさらう理由が、婚約者が相手にしてくれないから。
「ああ、婚約者とはいま同じ城で暮らして、来年には結婚するんだガ。婚約者は僕の側近を気に入っていて、ズッとそばに置いていル。キャ……あの人はきっと、僕と結婚して権力を手に入れたいだけダ」
――悲しい瞳。テトさんと婚約者は幼い頃からの婚約者で、政略結婚なのかな? でもそれだと、2人のどちらかに本命ができてしまうと。いくら仲が良くても……関係は簡単に変わってしまう。
(前の私も、そうだったから……)
「権力が欲しいねぇ。それはおまえにも原因がないか? おまえは魔力を持った人間の女性ばかりを攫って、必要がなくなったら、人里へと帰すと噂を数年前から聞いているぞ」
シシか話していた話ね。
「僕だって出来れば婚約者と仲良くしたいし、愛されたイ。でもさ、ここ5年間もの間、執務中、剣の稽古中、食事中と――2人の仲の良い姿を見ていれば悲しいし、寂しイ。たがら僕も他の女性仲良くしようとしタ。でも魔力を持つ女性ではないと、瘴気が濃いここの国では暮らせないし、体調が悪くなる前に里へと帰していただけだ」
「そうなのか……噂がひとり歩きして変わったのか」
「……だろうナ」
ドラゴンの国は――大昔、魔王の国があったからか元からか瘴気が濃い。街の中は魔法がかかっていて瘴気は薄いが、耐性がない人は何年も暮らせないだろう。
(先ほどテトさんが言った街の外――マグマが流れる危険だと言っていた場所と、魔王城の跡地はかなりの濃度の瘴気が濃いのだろう。行ってみないとわからないけど、私の浄化魔法を使っても他の森とは違い、瘴気は簡単になくせないかも。完璧に消すには聖女の力が必要ね)
+
ここは屋敷のテトの客間。ロローナはいきなり連れてこられて「忘れ物をした」と、部屋を出ていった男性をソファで待っていた。
「あのイケメン、いつになったら戻って来るのよ」
ロローナは行儀悪く、ソファ前のテーブルに足を投げだし楽な姿勢をとる。そのテーブルの端には魔吸い石だと商人に聞いた、魔導具が淡い光りを放ちながら置かれている。
「ああ――暇だし、喉が渇いたわ」
連れてきた本人もメイドも、誰も来ない部屋でロローナは退屈していた。その客間の扉がコンコンコンと鳴る。
ロローナはようやく、あのイケメンの男性が戻ってきたと、テーブルから足を下ろして素早く身なりを整え「はーい、どうぞ」と声をあげた。
「あら? 今回は元気なお嬢さんだこと……失礼しますわ」
と、開いた扉から現れたのはあのイケメンと男性と同じ、赤い髪をした胸の大きな女性だった。
「ああ、行こう」
テトとシシは住む住民達の視線を集めながら、街の中央を歩き、奥の立派な屋敷へと向かった。さっき、マキロの森で2人の話を聞いていて、テトがドラゴンの国をおさめる王だと――どことなく気付いていた。
でも国をおさめる王なら、幼い頃から婚約者がいるはず。……だけど、彼はどうして森に出て女性を攫うのかしら……見た目もステキだと思うけど。
それが表情に出ていたのだろう、テトが話しをはじめた。
「やっぱリ、シシのお嫁さんは、僕がなぜ女性をさらうのか気になっているネ? その理由は、僕の婚約者が相手してくれないからダ!」
「え、婚約者がいるのですか?」
「おまえ、婚約者がいるのか!」
そして女性をさらう理由が、婚約者が相手にしてくれないから。
「ああ、婚約者とはいま同じ城で暮らして、来年には結婚するんだガ。婚約者は僕の側近を気に入っていて、ズッとそばに置いていル。キャ……あの人はきっと、僕と結婚して権力を手に入れたいだけダ」
――悲しい瞳。テトさんと婚約者は幼い頃からの婚約者で、政略結婚なのかな? でもそれだと、2人のどちらかに本命ができてしまうと。いくら仲が良くても……関係は簡単に変わってしまう。
(前の私も、そうだったから……)
「権力が欲しいねぇ。それはおまえにも原因がないか? おまえは魔力を持った人間の女性ばかりを攫って、必要がなくなったら、人里へと帰すと噂を数年前から聞いているぞ」
シシか話していた話ね。
「僕だって出来れば婚約者と仲良くしたいし、愛されたイ。でもさ、ここ5年間もの間、執務中、剣の稽古中、食事中と――2人の仲の良い姿を見ていれば悲しいし、寂しイ。たがら僕も他の女性仲良くしようとしタ。でも魔力を持つ女性ではないと、瘴気が濃いここの国では暮らせないし、体調が悪くなる前に里へと帰していただけだ」
「そうなのか……噂がひとり歩きして変わったのか」
「……だろうナ」
ドラゴンの国は――大昔、魔王の国があったからか元からか瘴気が濃い。街の中は魔法がかかっていて瘴気は薄いが、耐性がない人は何年も暮らせないだろう。
(先ほどテトさんが言った街の外――マグマが流れる危険だと言っていた場所と、魔王城の跡地はかなりの濃度の瘴気が濃いのだろう。行ってみないとわからないけど、私の浄化魔法を使っても他の森とは違い、瘴気は簡単になくせないかも。完璧に消すには聖女の力が必要ね)
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ここは屋敷のテトの客間。ロローナはいきなり連れてこられて「忘れ物をした」と、部屋を出ていった男性をソファで待っていた。
「あのイケメン、いつになったら戻って来るのよ」
ロローナは行儀悪く、ソファ前のテーブルに足を投げだし楽な姿勢をとる。そのテーブルの端には魔吸い石だと商人に聞いた、魔導具が淡い光りを放ちながら置かれている。
「ああ――暇だし、喉が渇いたわ」
連れてきた本人もメイドも、誰も来ない部屋でロローナは退屈していた。その客間の扉がコンコンコンと鳴る。
ロローナはようやく、あのイケメンの男性が戻ってきたと、テーブルから足を下ろして素早く身なりを整え「はーい、どうぞ」と声をあげた。
「あら? 今回は元気なお嬢さんだこと……失礼しますわ」
と、開いた扉から現れたのはあのイケメンと男性と同じ、赤い髪をした胸の大きな女性だった。
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