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 ロローナは急に部屋へと入ってきた、女性を訝しげに見つめた。その女性もまたロローナを、上から下まで見つめている。

「ふふ、テトはあなたを置いて出ていったようね。やはり、わたくしのような豊満な肉体をもたないとね、人の世界へと帰してあげましょう」

「豊満? ――いいえ大丈夫です。彼は急用が出来て出ているだけなので、すぐに戻ってきますわ」

 ロローナも負けてはいなかったが。彼女にはルールシア王太子殿下がいるはずなのに、今は頭の隅に彼を追いやったようだ。

(なんて、イヤな視線――人の体をジロジロと見やがって、気分が悪いわ……さっきのイケメンな人、はやく帰ってきてよね)

「あなた、彼はわたくしが好きなの。あなたは人の世界へと帰りなさい!」
 
「イヤです。勝手に連れて来られて、彼と話もせずに帰りません!」

「なんですって!」

(かなりイケメンだってから。私のために王城へ来て欲しいわ)

 2人がいがみ合うなか、付いてきたテトの側近は……何も言わず「これ以上、巻き込まれるのは面倒だ。これっきりにして欲しい」と、部屋の隅で気配を消していた。



 テトは、ひときわ豪華な、奥の屋敷の前で足を止めた。

「シシ、お嫁さん、息子さん、ここが僕の屋敷ダ、遠慮なくくつろいデ。疲れただろう、なにか冷たいものを食べよウ」

 使用人を呼ぼうとしたテトを、シシが止める。
 
「待て、テト……冷たいものを食べるもの、くつろぐのは全てが終わった、後にだろう!」

「……ハハッ、そうだったネ。終わったら、冷たいものを食べようネ、客間へ案内するヨ」

 魔王の心臓のカケラに近付きたくないのだろうか、少し嫌がる仕草をしたテトに案内されて、私達はロローナがいる客間へ向かった。「ここが客間だヨ」と、客間の扉前でテトとシシの足が止める。そして、2人ともに眉をひそめた。

「あ、アーシャ、チェルの耳を塞いで」
「ええ、わかった」

 チェルの耳を両手で塞ぎ、どうしたのかと耳を澄ますと、客間の中から女性の甲高い声が聞こえる。

「あなたのような脂肪なくても、男性はキレイな私を見るわ!」
 
「そんなはずはありません。あなたこそ、性格の悪さが表情に出ていますわ!」

「なっ!」

 あ――、私も耳を塞ぎたい内容だ。客間の中にいるのはロローナと誰なのかしら。テトを見ると誰だかわかってのか、眉をひそめたまま瞳をつぶり。

「……キャロル」

 と、小さく呟いた。
 どうやら客間の中にいるのはロローナと、テトさんの婚約者のキャロルさんのようだ。
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