92 / 110
87
しおりを挟む
滝の街でお目当てのバナナタルト大量にを買い、街を離れようとしていた。その理由はこの街にルールリア王太子天下と、聖女となったロローナが来るからだ。
(髪色と瞳の色が変わってしまったし、あの人は私には気付かないと思うけど……私が会いたくない)
街を出てシシとチェルはフェルリルの姿に戻り、姿消しの魔法で姿を消して、北の森近くで野営が出来る場所を探す。
〈アーシャ、チェル乗って〉
しゃがんでくれたシシの背中にチェルと乗り、走りだろうとした――その時、私たちの横を騎士が乗る馬と、外装が派手な黒塗りの馬車、荷馬車が数台通っていく。その中の馬車は王家の特別な馬車……外装に、私が魔法でかけた、魔物避けの魔法がかかる馬車だ。
(ふうっ。魔術師たちは私がいなくなってから、一度も魔物避けの魔法をかけていないみたいね)
私の瞳には欠けた魔物避けの魔法陣が見える。その魔法陣は魔力を持たない、少ないものには見えない。しかし魔力を持つ、魔術師たちのには見えるはずなのだけど。
(近衛騎士と騎士団の姿は見えるが魔術師、聖職者の姿がない。その馬車は私が遠出に使用していたからか……放置されていたのかしら?)
滝の街に向かう、ルールリア王太子殿下と聖女ロローナが乗る馬車と近衛騎士、騎士たちを見送った。
馬車の中でルールリアは王家に伝わる「守りの首飾り」が光を放ちはじめた。これは――近くに王族の血を持つモノがいるという証拠。
「馬車を止めよ! 皆のもの聞け、滝の街に王族の血を持つモノがいる!」
近衛騎士と、騎士団はルールリア王太子殿下の声に馬車と馬、荷馬車を止めた。いきなり止まった馬車の中、遠出なのにまるで舞踏会の様に着飾ったロローナは、お菓子を片手に首を傾げた。
「ねぇ、ルル。それはどう言うことなの?」
「僕と同じ王族の血を持つ者がいたんだ。もしかして、ロロ、君に僕との子供が出来たのかい?」
それなら、嬉しいがとルールリア王太子殿下が言うが、聞かれたロローナは首を振る。
「いいえ、2日前に月ものもが終わったばかり、それはないわ」
「あ、そうなのか……なら、僕と同じ血を持つ者がいる。と、なると――それはどう言うことだ?」
ルールリア王太子殿下は訳がわからないと、首を傾げるが――もしかして、前王太子妃のアーシャに僕との子供がいたとしたら、どうなる。
彼女が見つかればまた公務、視察など任せて楽ができるし。アーシャが見つかれば子供も手に入る――これは一石二鳥じゃないか。
(アーシャめ、このような場所に隠れて僕の子供を産み、ひっそり子供と暮らしていたのか?)
僕の場所へ戻ってきて、また僕のために働きアリなように働いてくれ。
(髪色と瞳の色が変わってしまったし、あの人は私には気付かないと思うけど……私が会いたくない)
街を出てシシとチェルはフェルリルの姿に戻り、姿消しの魔法で姿を消して、北の森近くで野営が出来る場所を探す。
〈アーシャ、チェル乗って〉
しゃがんでくれたシシの背中にチェルと乗り、走りだろうとした――その時、私たちの横を騎士が乗る馬と、外装が派手な黒塗りの馬車、荷馬車が数台通っていく。その中の馬車は王家の特別な馬車……外装に、私が魔法でかけた、魔物避けの魔法がかかる馬車だ。
(ふうっ。魔術師たちは私がいなくなってから、一度も魔物避けの魔法をかけていないみたいね)
私の瞳には欠けた魔物避けの魔法陣が見える。その魔法陣は魔力を持たない、少ないものには見えない。しかし魔力を持つ、魔術師たちのには見えるはずなのだけど。
(近衛騎士と騎士団の姿は見えるが魔術師、聖職者の姿がない。その馬車は私が遠出に使用していたからか……放置されていたのかしら?)
滝の街に向かう、ルールリア王太子殿下と聖女ロローナが乗る馬車と近衛騎士、騎士たちを見送った。
馬車の中でルールリアは王家に伝わる「守りの首飾り」が光を放ちはじめた。これは――近くに王族の血を持つモノがいるという証拠。
「馬車を止めよ! 皆のもの聞け、滝の街に王族の血を持つモノがいる!」
近衛騎士と、騎士団はルールリア王太子殿下の声に馬車と馬、荷馬車を止めた。いきなり止まった馬車の中、遠出なのにまるで舞踏会の様に着飾ったロローナは、お菓子を片手に首を傾げた。
「ねぇ、ルル。それはどう言うことなの?」
「僕と同じ王族の血を持つ者がいたんだ。もしかして、ロロ、君に僕との子供が出来たのかい?」
それなら、嬉しいがとルールリア王太子殿下が言うが、聞かれたロローナは首を振る。
「いいえ、2日前に月ものもが終わったばかり、それはないわ」
「あ、そうなのか……なら、僕と同じ血を持つ者がいる。と、なると――それはどう言うことだ?」
ルールリア王太子殿下は訳がわからないと、首を傾げるが――もしかして、前王太子妃のアーシャに僕との子供がいたとしたら、どうなる。
彼女が見つかればまた公務、視察など任せて楽ができるし。アーシャが見つかれば子供も手に入る――これは一石二鳥じゃないか。
(アーシャめ、このような場所に隠れて僕の子供を産み、ひっそり子供と暮らしていたのか?)
僕の場所へ戻ってきて、また僕のために働きアリなように働いてくれ。
72
あなたにおすすめの小説
『胸の大きさで婚約破棄する王太子を捨てたら、国の方が先に詰みました』
鷹 綾
恋愛
「女性の胸には愛と希望が詰まっている。大きい方がいいに決まっている」
――そう公言し、婚約者であるマルティナを堂々と切り捨てた王太子オスカー。
理由はただ一つ。「理想の女性像に合わない」から。
あまりにも愚かで、あまりにも軽薄。
マルティナは怒りも泣きもせず、静かに身を引くことを選ぶ。
「国内の人間を、これ以上巻き込むべきではありません」
それは諫言であり、同時に――予告だった。
彼女が去った王都では、次第に“判断できる人間”が消えていく。
調整役を失い、声の大きな者に振り回され、国政は静かに、しかし確実に崩壊へ向かっていった。
一方、王都を離れたマルティナは、名も肩書きも出さず、
「誰かに依存しない仕組み」を築き始める。
戻らない。
復縁しない。
選ばれなかった人生を、自分で選び直すために。
これは、
愚かな王太子が壊した国と、
“何も壊さずに離れた令嬢”の物語。
静かで冷静な、痛快ざまぁ×知性派ヒロイン譚。
【完結】長い眠りのその後で
maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。
でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。
いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう?
このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!!
どうして旦那様はずっと眠ってるの?
唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。
しょうがないアディル頑張りまーす!!
複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です
全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む)
※他サイトでも投稿しております
ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです
※表紙 AIアプリ作成
婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました
由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。
彼女は何も言わずにその場を去った。
――それが、王太子の終わりだった。
翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。
裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。
王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。
「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」
ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。
もう二度と、あなたの妻にはなりたくありません~死に戻った嫌われ令嬢は幸せになりたい~
桜百合
恋愛
旧題:もう二度と、あなたの妻にはなりたくありません〜死に戻りの人生は別の誰かと〜
★第18回恋愛小説大賞で大賞を受賞しました。応援・投票してくださり、本当にありがとうございました!
10/24にレジーナブックス様より書籍が発売されました。
現在コミカライズも進行中です。
「もしも人生をやり直せるのなら……もう二度と、あなたの妻にはなりたくありません」
コルドー公爵夫妻であるフローラとエドガーは、大恋愛の末に結ばれた相思相愛の二人であった。
しかしナターシャという子爵令嬢が現れた途端にエドガーは彼女を愛人として迎え、フローラの方には見向きもしなくなってしまう。
愛を失った人生を悲観したフローラは、ナターシャに毒を飲ませようとするが、逆に自分が毒を盛られて命を落とすことに。
だが死んだはずのフローラが目を覚ますとそこは実家の侯爵家。
どうやらエドガーと知り合う前に死に戻ったらしい。
もう二度とあのような辛い思いはしたくないフローラは、一度目の人生の失敗を生かしてエドガーとの結婚を避けようとする。
※完結したので感想欄を開けてます(お返事はゆっくりになるかもです…!)
独自の世界観ですので、設定など大目に見ていただけると助かります。
※誤字脱字報告もありがとうございます!
こちらでまとめてのお礼とさせていただきます。
侯爵家の婚約者
やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。
7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。
その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。
カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。
家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。
だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。
17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。
そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。
全86話+番外編の予定
【完】瓶底メガネの聖女様
らんか
恋愛
伯爵家の娘なのに、実母亡き後、後妻とその娘がやってきてから虐げられて育ったオリビア。
傷つけられ、生死の淵に立ったその時に、前世の記憶が蘇り、それと同時に魔力が発現した。
実家から事実上追い出された形で、家を出たオリビアは、偶然出会った人達の助けを借りて、今まで奪われ続けた、自分の大切なもの取り戻そうと奮闘する。
そんな自分にいつも寄り添ってくれるのは……。
編み物好き地味令嬢はお荷物として幼女化されましたが、えっ?これ魔法陣なんですか?
灯息めてら
恋愛
編み物しか芸がないと言われた地味令嬢ニニィアネは、家族から冷遇された挙句、幼女化されて魔族の公爵に売り飛ばされてしまう。
しかし、彼女の編み物が複雑な魔法陣だと発見した公爵によって、ニニィアネの生活は一変する。しかもなんだか……溺愛されてる!?
【完結】わたしの婚約者には愛する人がいる
春野オカリナ
恋愛
母は私を「なんて彼ににているのかしら、髪と瞳の色が同じならまるで生き写しだわ」そう言って赤い長い爪で私の顔をなぞる仕種をしている。
父は私に「お前さえいなければ、私は自由でいられるのだ」そう言って詰る。
私は両親に愛されていない。生まれてきてはいけない存在なのだから。
だから、屋敷でも息をひそめる様に生きるしかなかった。
父は私が生まれると直ぐに家を出て、愛人と暮らしている。いや、彼の言い分だと愛人が本当の妻なのだと言っている。
母は父に恋人がいるのを知っていて、結婚したのだから…
父の愛人は平民だった。そして二人の間には私の一つ下の異母妹がいる。父は彼女を溺愛していた。
異母妹は平民の母親そっくりな顔立ちをしている。明るく天使の様な彼女に惹かれる男性は多い。私の婚約者もその一人だった。
母が死んで3か月後に彼らは、公爵家にやって来た。はっきり言って煩わしい事この上ない。
家族に愛されずに育った主人公が愛し愛される事に臆病で、地味な風貌に変装して、学園生活を送りながら成長していく物語です。
※旧「先生、私を悪い女にしてください」の改訂版です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる