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八十五

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「嘘だ!! フォール国王陛下……あなた様にもう一度、お会いできるなんて思っておりませんでした」

「私もです。お久しぶりです、フォール陛下」

『おお、アサトとロカかお前達も立派に大きくなったな。ナサに着いてガレーン国にきてくれたんだな感謝する……おお、この者たちはナサの仲間か? 竜人のおチビども、エルフと鬼人かーー貴殿たちは力を隠してはいるがなかなかに強いな』

「いいえ、私は貴方様の足元にも及びません」
「ええ、敵いません」

「謙遜するな……まあ、貴殿たちが息子のナサ、アサト、ロカと一緒にいてくれるのなら安心だな。チビ達もだぞ、将来かならず心も体も強くなるな」

「ほんと? リヤ、ボクたち強くなるって嬉しいね、ありがとうございます!!」

「嬉しいです、ぼく、ナサのように強くなりたい」

「ガハハ、いまのまま、みんなと仲良く過ごしておれば、おのずと強くなるぞ!!」

 ハッと、アサトとロカは膝を突き、カヤとリヤ、リキとミカは頭を下げた。ここの誰とも違う圧倒的な力の差を感じた。
 
「シッシシ、やっぱり親父はスゲェなぁ。そして、お袋のこと好きだったもんな」

『ハッハハ、今も大好きだ、愛している。ワシにはアイツしかいない! が、早くワシのところに来てほしいとは思っておらんよ。息子たちの成長を見守り、心ゆくまで生きてからワシのところに来てほしい……好きな人ができないでいてほしいと、思うのはワシのエゴだな」

 ナサとお父様は親子で楽しそうに会話してる。
 ワシにはアイツしかいないと言ったお父様の言葉ーー獣人の愛の深さ、それが番なのだとすると、わたしはナサにそうとう愛されている。

(嬉しい。その愛にわたしは返せるかしら?)

『それで人間のお嬢さんはそこに隠れて何をしておる?』

 わたしがコッソリ眺めていたことが、ナサのお父様にバレていたらしくて、鋭い視線が突き刺さる。

 それにナサはすかさず。

「オレの嫁です」

 ナサの言葉に瞳を大きく開いたお父様。

『え、ええ、ナサはそこにいる人間のお嬢さんと結婚したのか? 人だぞ、あの子はワシらを怖がらないのか?』

「はい、まったく怖がりませんし、オレをーーオレだけを愛してくれます」

『ほおっ、そんな人間がおるのだな……近寄って、顔を見せてくれるかな?』

 お父様の瞳が細められて、こちらに来いと手招きされた。

「リーヤ、おいで」

 ナサに呼ばれて門から顔を出した。

「は、はい、いま行くね。………は、はじめまして、リーヤと言います」

 ドッシリみんなの中央に座るナサのお父様の前に移動して、スカートを掴んで挨拶した。

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