7 / 99
六
しおりを挟む
亜人隊。彼らが付けている鎧や服にはこのガレーン国の象徴ドラゴンの刺繍が入っている。いかつい獣人族は戦闘中以外、常に半獣でいなくてはならない決まりらしく。いつも北区と中央区の境界線にある、宿舎からミリア亭まで半獣の姿でやって来てくる。
彼らがいる宿舎の反対側は騎士団の宿舎で、常に騎士団が目を光らせているらしい。亜人隊が結成された五年前、当時はお昼の時間帯にミリヤ亭に来ていたのだけど。体格が大きいアサトとナサ。北区以外の地区から来たお客が店に入れないと文句を言った。
しかし、彼は何を言われても知らん振りをする、契約によって魔物以外の戦闘は御法度。彼らは問題を起こすと騎士団に捕らえられてしまう。
『言わせておけば!』
『ナサ、やめろ! 捕まっちまうぞ!』
人が嫌いで暴れるナサをロカが押さえながら、隊長になったばかりのアサトはみんなに頭を下げた。
『すまない、迷惑をかけた』
それを厨房で聞いていた、ミリアは出てきて
『頭を下げなくでいい。いつも体を張って私達を守ってくれてるんだ、ありがとうとこっちが言いたい!』
店に来ていた亜人のみんなにもありがとう! 助かる! お礼を言われたそうだ。
『そうだ! 店が閉まった後の2時ごろにおいでよ。いくらでも店で寛いでいいし、なんなら肉でもなんでも好きなものをたらふく食べさせる。ここなら騎士団の目も届かないからいつでもおいで!』
だから、皆んなはお店の中で元の姿に戻り、ゆったりと寛いでいる。ご飯を食べた後は訓練が始まる時間までお昼寝をする。みんなの寝姿がこれまた可愛いんだ。
「お腹空いたね、カヤ」
「空いたねリヤ」
いつも仲の良い竜人の双子の男の子。彼らに両親はおらず、ニ年前までは北区で盗人を働いていて、みんなに悪ガキ竜と呼ばれ追いかけ回されていた。
そんな彼らもアサトさん達に捕まり「牢屋に行くか俺たちの部隊入るか決めろ」と言われて、同じ部隊になったと本人達から聞いた。彼らはいつ見てもカッコいい。学生の頃に出会えていたら本気で剣を交えたかった。
隊長のアサトが持つ大きな斧。
みんなを守る、ナサの大きな盾。
ロカさんは魔法を使いみんなのサポート。
カヤ君に、リヤ君の武器はクローだ。
「ミリアまだかな? 腹減った」
ナサはテーブルの上に伏せているけど、誰か来るのか入り口に耳を向けていた。他のみんなも顔を上げて入り口を見たと同時に、カランコロンとドアベルが鳴った。
入って来た人は大きな体、大きな手、大きな斧を持ち大あくびした。
「ふぁ~っ騎士団に昼寝を起こされた。ついでだから、昨日の報告もして来たぞ」
「おぉ! 流石は隊長!」
「ナサ、お前はいつも調子がいいなぁ。それとお前ら! みんなで一緒に宿舎の庭先で昼寝をしていたくせに、騎士団の奴が現れると蜘蛛の子を散らしたようにいなくなりやがって!」
アサトさんがナサやみんなに詰め寄る。
ナサはパンと手と手を合わせた。
「すまんアサト隊長。オレ、騎士団の連中が苦手なんだよ」
カヤとリヤも手を挙げて?
「僕も苦手」
「うん、僕も苦手」
ロカさんは頭を下げて
「すみません。私もあの方達は苦手です」
みんなが謝るなかアサトは声を上げた。
「「うるせぇ! 騎士団が苦手なのは俺も同じだ! 後の訓練で覚えてろよ!」」
「シッシシ、それは勘弁だ!」
「私も遠慮いたします」
「僕も嫌だよ!」
「僕も、僕も!」
「「聞いてやらん! みんなまとめて扱いてやるからなぁ!」」
アサトが来るとお店の中が騒がしくなる。
みんなに頼りにされている隊長さんだ。
「いらっしゃい、アサトさん」
「よっ、あれっ? ミリアはいないのか」
「いま東区の叔母さんの家に行っています。もし、よかったらオムライスなら作れますが食べますか? 味は……普通ですけど」
「「オムライス! 食べる!」」
みんなの声が一斉にハモった。
彼らがいる宿舎の反対側は騎士団の宿舎で、常に騎士団が目を光らせているらしい。亜人隊が結成された五年前、当時はお昼の時間帯にミリヤ亭に来ていたのだけど。体格が大きいアサトとナサ。北区以外の地区から来たお客が店に入れないと文句を言った。
しかし、彼は何を言われても知らん振りをする、契約によって魔物以外の戦闘は御法度。彼らは問題を起こすと騎士団に捕らえられてしまう。
『言わせておけば!』
『ナサ、やめろ! 捕まっちまうぞ!』
人が嫌いで暴れるナサをロカが押さえながら、隊長になったばかりのアサトはみんなに頭を下げた。
『すまない、迷惑をかけた』
それを厨房で聞いていた、ミリアは出てきて
『頭を下げなくでいい。いつも体を張って私達を守ってくれてるんだ、ありがとうとこっちが言いたい!』
店に来ていた亜人のみんなにもありがとう! 助かる! お礼を言われたそうだ。
『そうだ! 店が閉まった後の2時ごろにおいでよ。いくらでも店で寛いでいいし、なんなら肉でもなんでも好きなものをたらふく食べさせる。ここなら騎士団の目も届かないからいつでもおいで!』
だから、皆んなはお店の中で元の姿に戻り、ゆったりと寛いでいる。ご飯を食べた後は訓練が始まる時間までお昼寝をする。みんなの寝姿がこれまた可愛いんだ。
「お腹空いたね、カヤ」
「空いたねリヤ」
いつも仲の良い竜人の双子の男の子。彼らに両親はおらず、ニ年前までは北区で盗人を働いていて、みんなに悪ガキ竜と呼ばれ追いかけ回されていた。
そんな彼らもアサトさん達に捕まり「牢屋に行くか俺たちの部隊入るか決めろ」と言われて、同じ部隊になったと本人達から聞いた。彼らはいつ見てもカッコいい。学生の頃に出会えていたら本気で剣を交えたかった。
隊長のアサトが持つ大きな斧。
みんなを守る、ナサの大きな盾。
ロカさんは魔法を使いみんなのサポート。
カヤ君に、リヤ君の武器はクローだ。
「ミリアまだかな? 腹減った」
ナサはテーブルの上に伏せているけど、誰か来るのか入り口に耳を向けていた。他のみんなも顔を上げて入り口を見たと同時に、カランコロンとドアベルが鳴った。
入って来た人は大きな体、大きな手、大きな斧を持ち大あくびした。
「ふぁ~っ騎士団に昼寝を起こされた。ついでだから、昨日の報告もして来たぞ」
「おぉ! 流石は隊長!」
「ナサ、お前はいつも調子がいいなぁ。それとお前ら! みんなで一緒に宿舎の庭先で昼寝をしていたくせに、騎士団の奴が現れると蜘蛛の子を散らしたようにいなくなりやがって!」
アサトさんがナサやみんなに詰め寄る。
ナサはパンと手と手を合わせた。
「すまんアサト隊長。オレ、騎士団の連中が苦手なんだよ」
カヤとリヤも手を挙げて?
「僕も苦手」
「うん、僕も苦手」
ロカさんは頭を下げて
「すみません。私もあの方達は苦手です」
みんなが謝るなかアサトは声を上げた。
「「うるせぇ! 騎士団が苦手なのは俺も同じだ! 後の訓練で覚えてろよ!」」
「シッシシ、それは勘弁だ!」
「私も遠慮いたします」
「僕も嫌だよ!」
「僕も、僕も!」
「「聞いてやらん! みんなまとめて扱いてやるからなぁ!」」
アサトが来るとお店の中が騒がしくなる。
みんなに頼りにされている隊長さんだ。
「いらっしゃい、アサトさん」
「よっ、あれっ? ミリアはいないのか」
「いま東区の叔母さんの家に行っています。もし、よかったらオムライスなら作れますが食べますか? 味は……普通ですけど」
「「オムライス! 食べる!」」
みんなの声が一斉にハモった。
32
お気に入りに追加
659
あなたにおすすめの小説
殿下、側妃とお幸せに! 正妃をやめたら溺愛されました
まるねこ
恋愛
旧題:お飾り妃になってしまいました
第15回アルファポリス恋愛大賞で奨励賞を頂きました⭐︎読者の皆様お読み頂きありがとうございます!
結婚式1月前に突然告白される。相手は男爵令嬢ですか、婚約破棄ですね。分かりました。えっ?違うの?嫌です。お飾り妃なんてなりたくありません。
前略、旦那様……幼馴染と幸せにお過ごし下さい【完結】
迷い人
恋愛
私、シア・エムリスは英知の塔で知識を蓄えた、賢者。
ある日、賢者の天敵に襲われたところを、人獣族のランディに救われ一目惚れ。
自らの有能さを盾に婚姻をしたのだけど……夫であるはずのランディは、私よりも幼馴染が大切らしい。
「だから、王様!! この婚姻無効にしてください!!」
「My天使の願いなら仕方ないなぁ~(*´ω`*)」
※表現には実際と違う場合があります。
そうして、私は婚姻が完全に成立する前に、離婚を成立させたのだったのだけど……。
私を可愛がる国王夫婦は、私を妻に迎えた者に国を譲ると言い出すのだった。
※AIイラスト、キャラ紹介、裏設定を『作品のオマケ』で掲載しています。
※私の我儘で、イチャイチャどまりのR18→R15への変更になりました。 ごめんなさい。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
「わかれよう」そうおっしゃったのはあなたの方だったのに。
友坂 悠
恋愛
侯爵夫人のマリエルは、夫のジュリウスから一年後の離縁を提案される。
あと一年白い結婚を続ければ、世間体を気にせず離婚できるから、と。
ジュリウスにとっては亡き父が進めた政略結婚、侯爵位を継いだ今、それを解消したいと思っていたのだった。
「君にだってきっと本当に好きな人が現れるさ。私は元々こうした政略婚は嫌いだったんだ。父に逆らうことができず君を娶ってしまったことは本当に後悔している。だからさ、一年後には離婚をして、第二の人生をちゃんと歩んでいくべきだと思うんだよ。お互いにね」
「わかりました……」
「私は君を解放してあげたいんだ。君が幸せになるために」
そうおっしゃるジュリウスに、逆らうこともできず受け入れるマリエルだったけれど……。
勘違い、すれ違いな夫婦の恋。
前半はヒロイン、中盤はヒーロー視点でお贈りします。
四万字ほどの中編。お楽しみいただけたらうれしいです。
この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。
天織 みお
恋愛
「おめでとうございます。奥様はご懐妊されています」
目が覚めたらいきなり知らない老人に言われた私。どうやら私、妊娠していたらしい。
「だが!彼女と子供が出来るような心当たりは一度しかないんだぞ!!」
そして、子供を作ったイケメン王太子様との仲はあまり良くないようで――?
そこに私の元婚約者らしい隣国の王太子様とそのお妃様まで新婚旅行でやって来た!
っていうか、私ただの女子高生なんですけど、いつの間に結婚していたの?!ファーストキスすらまだなんだけど!!
っていうか、ここどこ?!
※完結まで毎日2話更新予定でしたが、3話に変更しました
※他サイトにも掲載中
王妃だって有休が欲しい!~夫の浮気が発覚したので休暇申請させていただきます~
ぽんぽこ@書籍発売中!!
恋愛
【書籍発売記念!】
1/7の書籍化デビューを記念いたしまして、新作を投稿いたします。
全9話 完結まで一挙公開!
「――そう、夫は浮気をしていたのね」
マーガレットは夫に長年尽くし、国を発展させてきた真の功労者だった。
その報いがまさかの“夫の浮気疑惑”ですって!?貞淑な王妃として我慢を重ねてきた彼女も、今回ばかりはブチ切れた。
――愛されたかったけど、無理なら距離を置きましょう。
「わたくし、実家に帰らせていただきます」
何事かと驚く夫を尻目に、マーガレットは侍女のエメルダだけを連れて王城を出た。
だが目指すは実家ではなく、温泉地で有名な田舎町だった。
慰安旅行を楽しむマーガレットたちだったが、彼女らに忍び寄る影が現れて――。
1/6中に完結まで公開予定です。
小説家になろう様でも投稿済み。
表紙はノーコピーライトガール様より
婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました
Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。
順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。
特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。
そんなアメリアに対し、オスカーは…
とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる