寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。

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「かしこまりました。大きいのを作るので私の分も取り分けてくださいね。それと足りなかったらミリアさんが帰ってきたら、また頼んでください」

「リーヤが作るオムライス、楽しみに待っています」

「シッシシ、美味いのを頼む」

「はい、待ってる!
「僕も待ってる!」

「何か手伝うことがあったら遠慮なく言えよ」
「ありがとう、アサトさん。みんな頑張るね」

 頑張ると言ったからにはしっかりやるわよと厨房に立った。材料はあらかじめ料理に合わせて切ってあるから、炒めて合わせるだけなんだけど。

 フライパンを温めてバターを入れチキンにピーマン、玉ねぎを塩胡椒でしっかり炒めて手作りケチャップを絡める。次にご飯をいれて絡めればチキンライスの完成。それにトロトロ卵を乗せてたら出来上がり。みんなに出来た! と振り向くと。

 待ちきれなかったのか、それとも心配だったのか、みんながカウンター席に勢揃いしていた。

「へぇ、来た頃よりも出際が良くなったな、最初は危なっかしくて見ていられなかったもんな、シッシシ」

「ナサに下手くそだって言われてから……ちゃんと毎日、家で自炊もしているもの」

「なんと自炊をしているのですか、それは感心ですね。あぁ、リーヤのご飯を毎日食べたい。今度食べに家に行ってもいいですか?」

 本音かどうだかわからないことを言い出した、ロカにアサトは目を細める。

「ロカ、おまえは! リーヤ、気を付けろよ本当にコイツ着いて行くぞ」
「シ、シッシ。そうだな、ロカは家まで着いて行くな」

「えっ、家はダメよ。洗濯物は干しっぱなしだし、掃除は適当だもの」

 それでも構いません、なんなら私が掃除します。と言い出したロカをアサトとナサは全力で止めた。お前、いまに騎士団に捕まるぞと言って……

 そんな騒ぎの中、可愛い二人がお腹をさする。

「リーヤ、僕、お腹空いた早く」
「僕もお腹すいた、早く」

「もうすぐ、出来るから待ってカヤ君、リヤ君。よし、みんなオムライスできたよ、卵が上手くまけなくて出来なくて、見た目が悪いけど食べてみて」

 残念ながら想像の中では、トロトロのオムライスができていたのに……卵が硬めのオムライスがテーブルに運んだ。

「やったぁ!」
「カヤ、ここに座ろ!」

 みんなが奥の六人掛けのテーブル席に集まった。何時もは好きな席に座るのだけど、いまだけは並んで仲良く座っている。人数分のスプーンと取り分けのお皿を用意して、残っていたカボチャのスープを温めて、サラダを用意する。

「ありがとうな。いただきます」

「リーヤ、いただきまーす!」
「リーヤ、いただきまーす!」

「リーヤの手作りですね、いただきます」

「どれどれ、味は? いただきます」

「召し上がれ!」

 みんなはお皿を使わず、スプーンをオムライスに突っ込んだ。一口食べてみんなの口がほころぶ。

「うん、美味しいです」
「本当、ロカさん!」

 温めたカボチャスープとサラダだを持って、みんなの所に行く。

「リーヤはここに座れ、ロカの横には絶対に座るなよ!」

 ナサに呼ばれて大きな体のコンビ、アサトさんとナサの真ん中に座った。

「ほら、リーヤの分」
「ナサ、ありがとう。いただきます」

 ワカさんのアドバイス通り野菜をしっかり炒めて、味が薄かったからコンソメを入れてみた、前よりも味が良くなったかも。
 
 お腹が空いていたからたくさんスプーンに取り、大きな口を開けたら横に座るナサと目があった。

「でかい口だなぁ、シッシシ。それにいい食べっぷりだ」
「動いたから、お腹空いちゃった」
「そうか、オレも腹減った」

 ナサもわたしの真似をして元々大きな口で食べだした。そして、まあまあだなとわたしを見て口元を緩ました。

「うまうま」
「うまうま!」

 カヤ、リヤも大きな口だけど、ケチャップを口の端に付けて食べてる。

(もう、可愛いな)

「カヤ君、リヤ君。口の周りケチャップだらけだよ。ほっぺにもご飯粒が付いてる!」

 そう言ったら、んっ? とお互いの顔を見合わせ笑ってる、その横から肘でつっかれた。

「リーヤ、美味しいよ」
「アサトさん、ありがとう」

 みんなでのんびり食事をしてると、カランコロンとドアベルが鳴り、用事を終えたミリアが帰ってきた。

「ただいま、いい匂いだね」
「お帰りなさい、ミリアさん」

「ミリア、肉! 肉を焼いてくれ!」

「お肉!」
「お肉!」

「私もお肉が欲しいです」
「お前らは……悪いなリーヤ、俺にも肉」

「いいえ、わたしもお肉食べたいです!」

 オムライスだけでは足りない、みんなのお肉コールが始まった。ミリアはふぅとため息をつき袖をまくった。

「分厚いステーキを今作るから待ってな。リーヤは悪いけど手伝ってね!」
「はーい!」

 しばらくすると、店内にお肉の焼ける良い香りが漂った。
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