規約違反少女がマッチングアプリで無法すぎる!

アメノヒセカイ

文字の大きさ
上 下
132 / 162
9章 驕り少女が我儘すぎる!123~

エピソード3 キヌイという少女

しおりを挟む
 休日。人気の少ない小さな公園で。
「きゃははは。一番貢いでくれたのは、君か。よしよし」
 薄赤色の髪。お団子ツインテール。夏のようなワンピースを着た少女が、跪く三人の男を見ている。
 そのなかの一人に近づくと頭を撫でた。
 それから手を合わせて擦る。
 小さな背負いバッグからウエットティッシュを取り出した。
 ゆっくり手を拭く。
「顔を上げて。プレゼントは五万円以上。出せないなら次は会わない。全然稼げないざこは要らないんだけどな。じゃーねー」
 キヌイは振り返った。
 背を向けた瞬間、男の一人が拳に力を入れて助走を付ける。
「ざあこ。私に逆らっちゃだめだよ。弟が今高校生で、野球部か。ふーむ、私に喧嘩売って大丈夫? 私、壊しちゃうの君だけじゃないよ?」
 男は泣き崩れた。
 キヌイはスマホを開いて通知を見る。
「きゃは。男なのに泣き虫だね。ふーむ、またアカウント停止か。やるね、トアオは。わざわざ人のアカウントを乗っ取るのにすぐに気づくなんて惚れ惚れしちゃう。邪魔だ」
 キヌイは駅まで歩く。
 電車で移動し、さらに駅を出て人通りの少ない裏路地へ。
「怖い、怖い」
 閉店の看板を見るとスマホで写真を撮った。
「きゃはは。もしかして?」
 キヌイは十五分ほど歩く。
 閉店の看板があった。
「最近はアキトヨも大忙しか。で、シュイロも傷ついているだろうし。でもシュイロの仲間がどこまでかだね。最近まで、トアオ、アキトヨ、カワクロのはずだけどー、シフユやメリアも仲間な気がする。せっかくシフユとメリアを敵対させるチャンスだったのにヒウタって人間が邪魔」
 キヌイは柄の悪い通りを抜けると、小さな雑貨の店に入った。
 店主の男が頭を下げると、キヌイは店の裏に進む。
 そこに置いてある紙袋から服を取り出した。
 花の柄のワンピースだ。
「うーむ、作り直し! 嫌なところはないけど、気に入るところもない。残念ってことでよろしく」
 キヌイは店主を呼び出す。
 平手で店主の頬を叩く。
パンッと弾けるような音がした。
「やり直し。かわいくない」
「も、申し訳ございません!」
「いじめるつもりはないよ。はい、百万円あげる。全部作り直しね」
「申し訳ございません」
 キヌイは鼻歌を歌いながら店を出る。
 すると、筋肉質のサングラスを付けた三人組と衝突した。
「痛いな。骨折れたんじゃね」
「そんなんで折れるか!」
「おいおい。それよりその女、めちゃくちゃかわいくね?」
 キヌイは男の一人に近づくと、その胸板に手を置いた。
「強いそう。ほしい」
「あ、お、お姉さん」
 男は頭を掻いて照れるのを隠している。
 キヌイは気にせずに、続いて男の目をじっと見た。
「よし、飼おう」
「?」
「ふーむ、よしよし」
 キヌイは頷く。
「アルバイトお疲れ様。まさか義理堅い君が世話をしてくれた方の顔に泥を塗るわけにはいきませんよね。あなたの家の住所は、……」
 顔に疑問を浮かべていた男たちだが、キヌイが話すにつれて怒りで顔を赤くする。しかし、境遇や家族関係、交友関係、恋人の話になると男たちは真っ青になって動かなくなった。
「で、飼おうって思ってるの。どうかな」
「なんで俺たちのこともそんなにも知って」
「悪い人みたいね。けど、本物に手を出すのはやめた方がいいけどねー。ざあこ」
 男たちは頭の処理が追い付かずに立ったまま動かない。
 痺れを切らしたキヌイは男の靴を踏んで、ぐりぐりと回すように押し付けた。
 男は痛みを堪えている。
「連絡先くらい知ってるけど、君たちから教えてほしいわ。友好の証ね、一応。きゃはは」
 連絡先を受け取るとキヌイは上機嫌になった。
 るんるんとスキップをしながら駅へ向かう。
「シュイロか。ヒウタを料理すればすぐに出てきてくれるっぽいねー。でもメリアとシフユもシュイロ側だとしたら。私の邪魔ができる少数派の方々には消えてもらわないと」
 スマホを開いてアルバムを見る。
 遊園地にて、大きめの麦わら帽子を被ってソフトクリームを食べる幼いキヌイと、キヌイを大事そうに抱きしめる少年。
「お兄様が堕落してしまったのはシュイロのせい。あの女を愛人にするってどういう意味なのか。シュイロが誘惑したに違いない。私は許さない」
 キヌイは歌を口ずさみながら歩く。
 
 





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クールな生徒会長のオンとオフが違いすぎるっ!?

ブレイブ
恋愛
政治家、資産家の子供だけが通える高校。上流高校がある。上流高校の一年生にして生徒会長。神童燐は普段は冷静に動き、正確な指示を出すが、家族と、恋人、新の前では

冴えない俺と美少女な彼女たちとの関係、複雑につき――― ~助けた小学生の姉たちはどうやらシスコンで、いつの間にかハーレム形成してました~

メディカルト
恋愛
「え……あの小学生のお姉さん……たち?」 俺、九十九恋は特筆して何か言えることもない普通の男子高校生だ。 学校からの帰り道、俺はスーパーの近くで泣く小学生の女の子を見つける。 その女の子は転んでしまったのか、怪我していた様子だったのですぐに応急処置を施したが、実は学校で有名な初風姉妹の末っ子とは知らずに―――。 少女への親切心がきっかけで始まる、コメディ系ハーレムストーリー。 ……どうやら彼は鈍感なようです。 ―――――――――――――――――――――――――――――― 【作者より】 九十九恋の『恋』が、恋愛の『恋』と間違える可能性があるので、彼のことを指すときは『レン』と表記しています。 また、R15は保険です。 毎朝20時投稿! 【3月14日 更新再開 詳細は近況ボードで】

マッサージ

えぼりゅういち
恋愛
いつからか疎遠になっていた女友達が、ある日突然僕の家にやってきた。 背中のマッサージをするように言われ、大人しく従うものの、しばらく見ないうちにすっかり成長していたからだに触れて、興奮が止まらなくなってしまう。 僕たちはただの友達……。そう思いながらも、彼女の身体の感触が、冷静になることを許さない。

如月さんは なびかない。~片想い中のクラスで一番の美少女から、急に何故か告白された件~

八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」  ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。  蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。  これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。  一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。

今日の授業は保健体育

にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり) 僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。 その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。 ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。

貞操観念逆転世界におけるニートの日常

猫丸
恋愛
男女比1:100。 女性の価値が著しく低下した世界へやってきた【大鳥奏】という一人の少年。 夢のような世界で彼が望んだのは、ラブコメでも、ハーレムでもなく、男の希少性を利用した引き籠り生活だった。 ネトゲは楽しいし、一人は気楽だし、学校行かなくてもいいとか最高だし。 しかし、男女の比率が大きく偏った逆転世界は、そんな彼を放っておくはずもなく…… 『カナデさんってもしかして男なんじゃ……?』 『ないでしょw』 『ないと思うけど……え、マジ?』 これは貞操観念逆転世界にやってきた大鳥奏という少年が世界との関わりを断ち自宅からほとんど出ない物語。 貞操観念逆転世界のハーレム主人公を拒んだ一人のネットゲーマーの引き籠り譚である。

男女比の狂った世界で愛を振りまく

キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。 その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。 直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。 生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。 デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。 本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...