28 / 90
三章R:汝、剣を振るえ
五話:重量級の一押し
しおりを挟む
「オレと手合わせしろ」
厳つい鎧を着たその人は、私にそう言った。とても低くて響く声だ。
「まさか勇者様が、しっぽ巻いて逃げる訳ねぇよな?そうだろう? 黙って俺と戦え」
彼は私の顔を覗き込むように肉薄した。兜の中がぎらりと光る。睨んできているようだ。……なんだか嫌な感じだ。
彼は怒っている。そうじゃなければ騎士同士の一騎打ちなんて、とんでもないことを提案してくるはずが無いのだ。
とりあえず私は、一歩下がって聞いた。
「あの……私なにかしましたか? そこまでして怒られている理由がわからないんですが……」
「あぁ? お前が信用に足るかどうかわざわざ手合わせして確かめてやろうってのに、てめえはそれが納得出来ねぇってのか?」
「はい……めちゃくちゃだと思います」
私がそう言うと、彼は頭を抱えた。
「あーもう、めんどくさいなお前。ツラ貸せ」
「え? ちょっと!?」
彼は私の手を引いてどこかへと向かう。本当に押しが強い人が多いなここ……。
仕方が無いので付いていくと、私がこの館に入ってきた道を戻るようだった。
そのまま私たちは、孤児院前の草原に出た。
「ここなら院の中が血で汚れることも無い」
「 そんなことなら、手合わせなんかしない方がいいんじゃないですか!? 絶対子供の教育に悪いですよ!」
「知ったこっちゃねえよ」
そう言って彼はどこからか、大槌を引っ張り出してきた。彼の背丈ぐらいある。持ち手の先に立派な彫刻がされた柱の先端のような装飾が付いていて、見るからに重そうだ。
根元から先まで、全て金属でできている。
鉄塊を彼は右肩に担いだ。そして、彼は私の方を睨んだ。
「オレはこの手できちんと殴りあったやつしか信用出来ない。さあ……俺と戦え!!! 」
どうやら、退路は絶たれたようだ。
厳つい鎧を着たその人は、私にそう言った。とても低くて響く声だ。
「まさか勇者様が、しっぽ巻いて逃げる訳ねぇよな?そうだろう? 黙って俺と戦え」
彼は私の顔を覗き込むように肉薄した。兜の中がぎらりと光る。睨んできているようだ。……なんだか嫌な感じだ。
彼は怒っている。そうじゃなければ騎士同士の一騎打ちなんて、とんでもないことを提案してくるはずが無いのだ。
とりあえず私は、一歩下がって聞いた。
「あの……私なにかしましたか? そこまでして怒られている理由がわからないんですが……」
「あぁ? お前が信用に足るかどうかわざわざ手合わせして確かめてやろうってのに、てめえはそれが納得出来ねぇってのか?」
「はい……めちゃくちゃだと思います」
私がそう言うと、彼は頭を抱えた。
「あーもう、めんどくさいなお前。ツラ貸せ」
「え? ちょっと!?」
彼は私の手を引いてどこかへと向かう。本当に押しが強い人が多いなここ……。
仕方が無いので付いていくと、私がこの館に入ってきた道を戻るようだった。
そのまま私たちは、孤児院前の草原に出た。
「ここなら院の中が血で汚れることも無い」
「 そんなことなら、手合わせなんかしない方がいいんじゃないですか!? 絶対子供の教育に悪いですよ!」
「知ったこっちゃねえよ」
そう言って彼はどこからか、大槌を引っ張り出してきた。彼の背丈ぐらいある。持ち手の先に立派な彫刻がされた柱の先端のような装飾が付いていて、見るからに重そうだ。
根元から先まで、全て金属でできている。
鉄塊を彼は右肩に担いだ。そして、彼は私の方を睨んだ。
「オレはこの手できちんと殴りあったやつしか信用出来ない。さあ……俺と戦え!!! 」
どうやら、退路は絶たれたようだ。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
転生勇者の三軒隣んちの俺
@aozora
ファンタジー
ある日幼馴染のエミリーと遊んでいる時に木の枝から落ちて気を失ったジェイク。目を覚ました時、彼は自分が転生したと言う事を自覚する。ここはRPGファンタジーゲーム”ソードオブファンタジー”の世界、そして俺はオーランド王国の勇者、”赤髪のジェイク”。あのゲームで主人公は国王からの依頼で冒険の旅に旅立ったはず。ならばそれまでにゲーム開始時以上の力を手に入れれば。滾る想い、燃え上がる野心。少年は俺Tueeeをすべく行動を開始するのだった。
で、そんな様子を見て”うわ、まさにリアル中二病、マジかよ。”とか考える男が一人。
これはそんな二人が関わったり関わらなかったりする物語である。
この作品はカクヨム様、ノベルピア様、小説になろう様でも掲載させて頂いております。
よろしくお願いします。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる