48 / 200
第四十七話
しおりを挟む
奈々実がきちんと食事を残さずに食べるようになったら、今度は江里香が食事を残すようになった。最初は、優等生の化けの皮が少しつらくなってきたのかな、くらいに思っていた奈々実は、ある夜、となりの寝台から聞こえる苦し気なうめき声に、目を覚ました。
「う・・・」
「・・・?」
闇の中で、江里香が喉を引きつらせるような、悲痛な泣き声を押し殺している。
「江里香ちゃん?」
「・・・いや・・・、やめて・・・っ」
「江里香ちゃん? どうしたの?」
外はまだ暗い。血晶石に充填してある魔力を銀輝石に反射させる室内灯に、奈々実は魔力を流して灯す。このくらいのことは、魔力をコントロールできるようになっている。
「江里香ちゃん、江里香ちゃん」
細い身体を縮めるようにして泣いている江里香を揺り起こす。
「江里香ちゃん、大丈夫?」
「あ・・・、奈々実ちゃん・・・」
涙と鼻水でぐしゃぐしゃの顔を奈々実は手巾でそうっと拭ってやる。
「ありがと・・・、ごめんね、起こしちゃって」
「いいけど、大丈夫? 怖い夢、見ちゃった?」
「うん・・・」
奈々実は枕元の小さな机に置いてある水差しから、少しだけ水を入れて、カップを渡す。ダイエットのせいかやたら喉が渇くので、夜でも枕元に用意して寝るのだ。昼間のハードワークで疲れ切っているから目を覚まして飲むようなことは滅多にないが、ゼロではない。
「ありがとう・・・」
「ゆっくり飲んで。足りる? 足らない?」
「大丈夫・・・。本当にごめん・・・」
新たな涙を自分の手で拭うと、江里香は奈々実からカップに、視線を移す。
「奈々実ちゃん、聞いて・・・。わたし、処女じゃないの・・・」
「は・・・、あ、え、えっ」
突然のとんでもないカミングアウトに、奈々実はびっくりして、けれどあまりびっくりした様をあからさまに出すのも良くない気もして、どう返事をすればいいのかわからない。
「わたしが小学校三年生の時にママが再婚して、新しいお父さんって人が一緒に住むようになって・・・、触られたり、なめられたり、気持ち悪いこといっぱいされた・・・。もうちょっと大きくなったら、俺のが入るかなって、今はまだ入らないよなあ、こんな小さいのに入れたら、壊れちゃうのかなって、俺のデカイからな、って、見せられて、なめろって言われて、言う通りにしないと、殴られたり、叩かれるから、怖くて・・・」
「・・・」
性的虐待? それって、と言いかけて、奈々実は声が出ない。声に出してそれを言ってしまうことが、江里香の傷をもっと抉ってしまうのではないかと怯えて、何も言えない。
「う・・・」
「・・・?」
闇の中で、江里香が喉を引きつらせるような、悲痛な泣き声を押し殺している。
「江里香ちゃん?」
「・・・いや・・・、やめて・・・っ」
「江里香ちゃん? どうしたの?」
外はまだ暗い。血晶石に充填してある魔力を銀輝石に反射させる室内灯に、奈々実は魔力を流して灯す。このくらいのことは、魔力をコントロールできるようになっている。
「江里香ちゃん、江里香ちゃん」
細い身体を縮めるようにして泣いている江里香を揺り起こす。
「江里香ちゃん、大丈夫?」
「あ・・・、奈々実ちゃん・・・」
涙と鼻水でぐしゃぐしゃの顔を奈々実は手巾でそうっと拭ってやる。
「ありがと・・・、ごめんね、起こしちゃって」
「いいけど、大丈夫? 怖い夢、見ちゃった?」
「うん・・・」
奈々実は枕元の小さな机に置いてある水差しから、少しだけ水を入れて、カップを渡す。ダイエットのせいかやたら喉が渇くので、夜でも枕元に用意して寝るのだ。昼間のハードワークで疲れ切っているから目を覚まして飲むようなことは滅多にないが、ゼロではない。
「ありがとう・・・」
「ゆっくり飲んで。足りる? 足らない?」
「大丈夫・・・。本当にごめん・・・」
新たな涙を自分の手で拭うと、江里香は奈々実からカップに、視線を移す。
「奈々実ちゃん、聞いて・・・。わたし、処女じゃないの・・・」
「は・・・、あ、え、えっ」
突然のとんでもないカミングアウトに、奈々実はびっくりして、けれどあまりびっくりした様をあからさまに出すのも良くない気もして、どう返事をすればいいのかわからない。
「わたしが小学校三年生の時にママが再婚して、新しいお父さんって人が一緒に住むようになって・・・、触られたり、なめられたり、気持ち悪いこといっぱいされた・・・。もうちょっと大きくなったら、俺のが入るかなって、今はまだ入らないよなあ、こんな小さいのに入れたら、壊れちゃうのかなって、俺のデカイからな、って、見せられて、なめろって言われて、言う通りにしないと、殴られたり、叩かれるから、怖くて・・・」
「・・・」
性的虐待? それって、と言いかけて、奈々実は声が出ない。声に出してそれを言ってしまうことが、江里香の傷をもっと抉ってしまうのではないかと怯えて、何も言えない。
0
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
『出来損ない』と言われた私は姉や両親から見下されますが、あやかしに求婚されました
宵原リク
恋愛
カクヨムでも読めます。
完結まで毎日投稿します!20時50分更新
ーーーーーー
椿は、八代家で生まれた。八代家は、代々あやかしを従えるで有名な一族だった。
その一族の次女として生まれた椿は、あやかしをうまく従えることができなかった。
私の才能の無さに、両親や家族からは『出来損ない』と言われてしまう始末。
ある日、八代家は有名な家柄が招待されている舞踏会に誘われた。
それに椿も同行したが、両親からきつく「目立つな」と言いつけられた。
椿は目立たないように、会場の端の椅子にポツリと座り込んでいると辺りが騒然としていた。
そこには、あやかしがいた。しかも、かなり強力なあやかしが。
それを見て、みんな動きが止まっていた。そのあやかしは、あたりをキョロキョロと見ながら私の方に近づいてきて……
「私、政宗と申します」と私の前で一礼をしながら名を名乗ったのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる