異世界ダイエット

Shiori

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第四十七話

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 奈々実がきちんと食事を残さずに食べるようになったら、今度は江里香が食事を残すようになった。最初は、優等生の化けの皮が少しつらくなってきたのかな、くらいに思っていた奈々実は、ある夜、となりの寝台から聞こえる苦し気なうめき声に、目を覚ました。
「う・・・」
「・・・?」
闇の中で、江里香が喉を引きつらせるような、悲痛な泣き声を押し殺している。
「江里香ちゃん?」
「・・・いや・・・、やめて・・・っ」
「江里香ちゃん? どうしたの?」
外はまだ暗い。血晶石に充填してある魔力を銀輝石に反射させる室内灯に、奈々実は魔力を流して灯す。このくらいのことは、魔力をコントロールできるようになっている。
「江里香ちゃん、江里香ちゃん」
細い身体を縮めるようにして泣いている江里香を揺り起こす。
「江里香ちゃん、大丈夫?」
「あ・・・、奈々実ちゃん・・・」
涙と鼻水でぐしゃぐしゃの顔を奈々実は手巾でそうっと拭ってやる。
 「ありがと・・・、ごめんね、起こしちゃって」
「いいけど、大丈夫? 怖い夢、見ちゃった?」
「うん・・・」
奈々実は枕元の小さな机に置いてある水差しから、少しだけ水を入れて、カップを渡す。ダイエットのせいかやたら喉が渇くので、夜でも枕元に用意して寝るのだ。昼間のハードワークで疲れ切っているから目を覚まして飲むようなことは滅多にないが、ゼロではない。
「ありがとう・・・」
「ゆっくり飲んで。足りる? 足らない?」
「大丈夫・・・。本当にごめん・・・」
 新たな涙を自分の手で拭うと、江里香は奈々実からカップに、視線を移す。
「奈々実ちゃん、聞いて・・・。わたし、処女じゃないの・・・」
「は・・・、あ、え、えっ」
突然のとんでもないカミングアウトに、奈々実はびっくりして、けれどあまりびっくりした様をあからさまに出すのも良くない気もして、どう返事をすればいいのかわからない。
「わたしが小学校三年生の時にママが再婚して、新しいお父さんって人が一緒に住むようになって・・・、触られたり、なめられたり、気持ち悪いこといっぱいされた・・・。もうちょっと大きくなったら、俺のが入るかなって、今はまだ入らないよなあ、こんな小さいのに入れたら、壊れちゃうのかなって、俺のデカイからな、って、見せられて、なめろって言われて、言う通りにしないと、殴られたり、叩かれるから、怖くて・・・」
「・・・」
性的虐待? それって、と言いかけて、奈々実は声が出ない。声に出してそれを言ってしまうことが、江里香の傷をもっと抉ってしまうのではないかと怯えて、何も言えない。
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