転生巫女は『厄除け』スキルを持っているようです ~神様がくれたのはとんでもないものでした!?〜

鶯埜 餡

文字の大きさ
22 / 35

22.信じる者は馬鹿を……

しおりを挟む
「もう見ないでくださーいー」
 レオンさんたちと合流してから少し経った馬車の中は、かなーり重―い雰囲気だった。
 それはミミィが出発直後に気づいてしまったことに始まった。

『そういえば、あの騎士さんたちって、どうやって選ばれたんでしょうか?』
『……? どうしたんだ急に』
 そのときにミミィの声には純粋な疑問だけではない、少しの嫉妬が入ったようなものだった。けれど、ジェイドさんはその嫉妬心に気づかなかったようで、うわべだけの返しをした。
『レオンさんをはじめ、かなり剣やなんらかの武術がすぐれている方が多いような気がするんですけれど』
『まあ、そうだろう。王命で動いている以上、外聞のこともあるだろうし、さっきも言ったけれど本気で殿下は心配してくれているんだろう』
 なるほど。
 どうやら自分だけでは戦力になっていないのかという心配だった模様。
 安心してくれと言ったジェイドさんだけれど、ミミィは少しうつむき加減ででもですねぇと続けた。
『それだったら、多分、第一護衛隊の方だけで構成されてもおかしくありませんか』
『そうじゃなかったのか?』
 どういうこと?
 私はその言葉の意味がわからなかった。しかし、今の段階でその疑問に答えてくれることはなさそうだから、とりあえず二人の会話をしっかり聞いておくことにした。
『はい。先日、私は第一護衛隊の方々に特訓をつけてもらいましたけれど、そこで見た方ではない人が紛れているような気がするんです』
 ふむふむ。
 言われてみればそうかもしれないか。記憶が間違っていなければ、だれも階級を名乗っていなかったような。だから、どういった基準で選んだのかがわからない。
 ジェイドさんも考えこんじゃっているよ。
 アイリーンも口をはさんでいない。今は静観するといったスタンスなのだろう(と信じたい)。
 それでもミミィはすっと息を吐いて、あくまでも可能性ですがと続ける。
『もしかしたらほかの部隊の方とかこのためだけに第一護衛隊に昇進された方なのかもしれませんので、思い過ごしならばそれでいいんですけれど……――――』
『そうだな。とりあえず今はこのことをだれにも言うな』
 そうだねえ。今はだれが怪しいかわからない状態で動くことはできない。ジェイドさんも同じように考えていたようで、休憩のときにレオンに尋ねてみるからと請け負ってくれた。
 ミミィは素直によろしくお願いしますと頭を下げて、猫化した。
 今日の道のりは長いから、エネルギーを消耗しないようにするようだ。

 途中の休憩のときにレオンさんにジェイドさんがこっそりと聞いてくれたようで、その報告を聞いたのだけれど……――
「で、どうやらあなたの見間違いだったようね」
「恥ずかしいですぅ」
 どうやらミミィの見間違いだったようで、全員が第一護衛隊のメンバーだった。レオンさんにこっそり見せてもらったメンバー表にはちゃんと所属も身体的特徴などが細やかに書かれていて、今この場にいた人たちと一致した。
 ちなみに第一護衛隊とは、騎士団の中でもエリート集団と言われる部隊で、王族や国賓級の来客の警護に当たる騎士が所属する。代々の騎士団長はこの第一護衛隊から選ばれ、レオンさんも若くから第一護衛隊メンバーに選ばれていたらしい。
「大丈夫だ。レオンも顔がよく似た騎士ならいくらでもいるからと言っている」
「うううぅ……――」
 ジェイドさんの慰めに余計に恥じらうミミィ。
 自分が見間違えて、あらぬ疑いをかけてしまったことがどうにも悔しかったらしい。
「もう見ないでくださーいー」
 猫化して尻尾をぶんぶん降っている姿はやっぱり可愛いんですが。

「そんなことより、この前、来たときよりも瘴気というか、魔物臭が強くなっているわね」
 これ以上、ミミィが使い物にならなくなる前にという心遣いか、アイリーンが話題を急に変えた。
 その感覚は同意できるものだった。
 なんか前にここに来たときよりもピリピリするっていうか。なんていうんだろうか、水で薄めたお酒を肌に塗ったときのような感じが常にしているような感覚。
 ローザさんは大丈夫だろうか。
「そうだな。今度こそ目の前に現れてくれるといいんだが」
「まったくね。とりあえずこちらには『大撃弾』と『洗浄』、それに攻撃スキルを持っている方々が数名いるんだから、こちら側の命が失われることはないといいんだけれど」
 ジェイドさんとアイリーンの“願い”に私とミミィはただ黙るしかなかった。馬車の中は今まで以上に重い雰囲気になってしまった。


 夕暮れどき、もう少ししたら日が沈みそうなところで私たちはローザさんと出会った街にたどり着いた。
「じゃあ、今日は宿にはいっちゃおうか」
「そうだな」
 明日はここを拠点にして“魔物”の探索を行うけれど、別にその直前にギルドに行けばいいんだから、今日はもうなにもしないでおこうというという配慮なんだろう。

「なぁ、ジェイドとミコちゃん、ちょっといいか」
 アイリーンとミミィ、そして護衛の皆さんが荷物を持って部屋に向かったのを見届けると、レオンさんが私とジェイドさんを呼びとめた。
「なんでしょうか」
「エリックからの魔法伝言で、『おそらくお前たちが捜している魔物の発生源は南部。ヒトに注意したほうがいいかもしれん』って、言われたんだけど、どういう意味かわかる?」
 小さい羊皮紙を出して私たちに見せるレオンさん。
 今更だけれど魔法ってすごいよねぇ。
 魔法伝言はどうやら、メールみたいに揃えられた、整えられた文字で羊皮紙に宛先、差出人、そして内容が書かれているんだ。こんな技術を一度でいいから使ってみたいねぇ。
 おっと、いけない。本題はそこじゃない。
「正直わからん」
「そうですね。発生源はここのあたりということでしょうけれど、ヒトに注意っていうことだけではなんとも」
 そう。
 羊皮紙に書かれていたのはレオンさんが言ったことそのままだけれど、その忠告はよくわからないというのが実際だ。ジェイドさんも同じ様子だったので、安心した。
「ここの人を注意すればいいのか、今いる奴らに注意すればいいのか……」
「おいおい、俺たちを疑うのか?」
「あくまでも可能性だ。エリックの伝言だと“だれ”というのが特定できんからな」
「…………ったく、わかったよ。疑うなら疑え」
 ジェイドさんの考察に少し気分を悪くしたようなレオンさんだけれど、その疑いを否定はしなかった。多分、これが二人の仲の良さ、なんらかの信頼があるんだろう。
「ああ、そうさせてもらう」
「お前も気をつけろ」
 二人の中で話がついたので、私にも気をつけるように注意された。
 というか、そもそもなんで私たちだけに言って、アイリーンとミミィに言わないんだろうっていうことに今更気づいたけれど、それを質問するのははばかられた。
 私は素直に頷いた。


 夕ご飯をとり終えた私たちは、明日のための軽く打ち合わせをしてすぐに部屋に戻った。湯あみだけ済ませて寝ようと思って、その支度をしながらレオンさんとの会話を思いだしてしまった。
「なんだか嫌な雰囲気になってきちゃったなぁ」
 ここにいる人たちのことを疑わなきゃいけない。本当は嫌だなぁ。でも、信じて馬鹿を見るのはもっと嫌なんだよなぁ。
「今は私にできることをしよっか」
 それでも、自分の役割は決まっている。
『洗浄』
 ただそれだけしかない。だから、できる限りどうにかして“魔物”を封じこむ方法を考えないとね。
 ちょうどそのとき、部屋の扉がノックされた。
 こんなときにだれだろうと思ったけれど、宿の人も護衛さんたちも私がすでにこの部屋に入っていることはわかっている。
 居留守を使ったら、逆に怪しまれるだろうよねぇ。しょうがないから声をかける。
「はい、どなたですか?」
『すみません、第一護衛隊のヴィルヘルムです。レオン団長がお呼びです。申し訳ありませんが、下の食堂まで来ていただけませんでしょうか』
 ふむ。
 さっきレオンさんに見せてもらった名簿にそんな名前の人がいたね。
 とりあえず宿から出ないから大丈夫かと思って、上着を羽織って廊下に出ると、ヴィルヘルムと名乗った男性がちょこんと頭を下げる。揃いの騎士服を着ていたから、まだ――というかずっと職務中なのか。ありがたや。
「すみません、夜分に」
 律義な彼にいいえと返した私は、食堂に向かったのだが……――

「あれ、レオンさん、いな、い……?」

 呼びだした側のレオンさんの姿はなく、私宛の書き置きが残されていた。それには“宿を出て、右に進んで三つ目の角の緑のランプがともっているレストランにいるから、そこで話がしたいんだ”って書かれていた。
 私はちょっとの外出ならと宿の主人と騎士さんに声をかけて、出ていく。そこまで行ってしたい話ってなんだろう。
「あ、そこのことだね」
 書き置きにあったレストランを発見した私は嬉しくなって、小走りになった。

「まさかここまでキミが愚鈍だとは思わなかったよ」

 しかし、突然背後からかけられた言葉にへ?と驚いて振りむくと、だれもいない・・・・・・
やっぱり・・・・キミは平凡だね。まさかキミが『厄除け』を持っているって、さっきまで確信持てなかった、ミコ・ダルミアン」
 だれ?
 どこかで聞いたことのあるような声だったけれど、声の主は私に質問を許さなかった。
「《奪えスイーパー》」
 その詠唱とともに、私の周りから景色が消えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

侯爵家の婚約者

やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。 7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。 その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。 カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。 家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。 だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。 17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。 そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。 全86話+番外編の予定

召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?

浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。 「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」 ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。

【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!

ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。 ※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

「わざわざ始まるまでまたないで、今のうちに手を打ったってよくない?」

イチイ アキラ
恋愛
アスター公爵令嬢エステルは、夢をみる。それは先を映す夢。 ある日、夢をみた。 この国の未来を。 それをアルフレッド王太子に相談する。彼女を愛して止まない婚約者に。 彼は言う。 愛する君とぼくの国のためなら、未来を変えるのも仕方なくない?

聖女の座を奪われてしまったけど、私が真の聖女だと思うので、第二の人生を始めたい! P.S.逆ハーがついてきました。

三月べに
恋愛
 聖女の座を奪われてしまったけど、私が真の聖女だと思う。だって、高校時代まで若返っているのだもの。  帰れないだって? じゃあ、このまま第二の人生スタートしよう!  衣食住を確保してもらっている城で、魔法の勉強をしていたら、あらら?  何故、逆ハーが出来上がったの?

無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから―― ※ 他サイトでも投稿中

処理中です...