壊れた空に白鳥は哭く

沈丁花

文字の大きさ
34 / 41
それから。

それから。

しおりを挟む
互いにシャワーを浴び、ゆっくり話でもしようかと、2人でバスタブに浸かることにした。

小さなバスタブは男2人で浸かるには狭すぎて、自然と足を伸ばしたアランの上にアルが背を向けて座る形となる。

晒されたうなじに刻まれた跡に、アランは軽く湯を滑らせた。

「もしかしてまだ、俺の幸せがどうだとか、考えてますか?」

不意にアルがこちらを向いて問うてきた。

ずっと一緒にいたわけでもないのに、どうして彼にはわかってしまうのだろう。

不思議に思いながらも彼の言うことは図星で、アランは頷く代わりに苦笑してみせた。

「俺は幸せですよ。あなたに出会えて、あなたを護ることができて、あなたの傍にいることができて。」

「だが… 」

彼があれだけ真剣に伝えてくれたから、わかっているのだ。でも、何年間も抱き続けた自分の体質への嫌悪は、簡単には無くならない。

「あなたは?」

「?」

「あなたは、本当に俺でよかった?」

予想外の質問に、驚きが隠せない。先ほどまでアランが全く同じことを考えていて、アルはそれを読み取ったのに。

「ねえ… 」

不安そうに彼がアランの顔を覗き込んだ。大きなトパーズとアクアマリン。彼の瞳は本当に美しい。

「アル以外、考えられない。」

耳元に囁きかけながら、後ろからぎゅっと抱きしめると、彼の首がかぁっと真っ赤に染まっていく。

「…俺も、です。」

行為の最中に覗いた笑顔とは反対の、ぶっきらぼうな声。そんなところも可愛くて、愛おしいと思う。

そのあとアルは、アランに自分の過去のことについて話をした。

もちろん彼が娼館の前に捨てられていた時点であらかた予想はついていたが、自ら辛い過去を話してくれたことにアランは感謝した。

そして最後に、

「でも俺は、あなたに出会えて初めて誰かを欲しいと思いました。人と交わることで感じたのも、初めてで。

離れている間もずっと頭から離れなくて、何度も泣きました。」

と、締めくくった。
 
彼の言葉の一つ一つが愛おしい。どこまで彼は自分を惹き付けるのかと、恐ろしくさえある。

「俺も同じだ。」

伝えると、アルは再びアランの方を向いて。

嬉しい、と、先ほどのひまわりのような笑みを再び浮かべた。

濡れた髪のかかった赤く熟れた唇に、たまらず唇を押し付けた。彼はこんなにもアランを思い、全てを受け入れてくれる。

シリウスを脱け出してから、やりたいことを見つけ、達成し、その過程で大切な人に再び出会えた。

自分のことが嫌いだった。無力で、欠陥品で、そのうえ常に心の中に、満たされない空虚を抱えていて。

でも、今は違う。

この理不尽な世界で、こんなにたくさんの幸せを手に入れて、

何より大切な人を、笑顔にすることができるから。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、 隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。 しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです… オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が なかたのでした。 本当の花嫁じゃない。 だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

番解除した僕等の末路【完結済・短編】

藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。 番になって数日後、「番解除」された事を悟った。 「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。 けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。 2026/02/14 累計30万P突破御礼バレンタインSS追加しました 2026/02/15 累計いいね♡7777突破御礼SS 19時に公開します。 様々な形での応援ありがとうございます!

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

オメガの復讐

riiko
BL
幸せな結婚式、二人のこれからを祝福するかのように参列者からは祝いの声。 しかしこの結婚式にはとてつもない野望が隠されていた。 とっても短いお話ですが、物語お楽しみいただけたら幸いです☆

処理中です...