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揺れ動く心

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入り口から入ってすぐの所には、見慣れた会社員達が既にお酒を楽しみながら話していて。

俺がポケットに片手を入れながら歩いて行くと、周りが自然と静かになって俺と瑞紀に注目が集まっているのが良くわかる。

その視線をなるべく気にしない様にしながら、近づいてきたスタッフからシャンパンを受け取って、テーブルに置いてあったグラスを手に取る。

それから、後ろを歩いていた瑞紀を振り返って、シャンパンじゃ無い方のグラスを手渡しながら、
「スタッフが持ってるのは、全てお酒だから飲まない様に。分かったね。」

その言葉に瑞紀は、控えめに頷いた。

「…バルコニーまであるんですね。」

その言葉に、俺も瑞紀と同じ方向を向くと、その先には確かに色鮮やかな花が飾られているバルコニーがあって。

「そうだね。あとで行って見ると良い。」

俺がそう言うと。

瑞紀は泣きそうな表情をしながら、俺のスーツの裾を引っ張って。

「私は、知哉さんと「副社長の息子さんとね。」

俺のその言葉に、瑞紀は益々眉を下げて。

「と、「悠河!」

瑞紀が何か言おうとした時。

瀬川の声がして。

そちらを振り向くと。

瀬川は奥さんと一緒にこちらへ歩いて来ていた。

「瀬川…」

俺がそう言うと。

瀬川は笑いながら
「お前もやっと来たのか。」

「…来たくて来たわけじゃない。」

「え?」

「副社長に言われたから仕方なく来ただけだよ。」

そう言うと、瀬川は目を見開きながら。

「何だよ、悠河ばっかり!」

「うるさいな。」

そんな会話をしていると。

瀬川が、俺の隣に黙って立っていた瑞紀を見て。

「…今日は益々綺麗だな、お前の奥さん。」

俺は瑞紀の方を一切見ない様にしながら。

「…そんな事ないでしょ。」

俺がそう言うと瀬川は慌てた様に。

「…っお、おい!そんな事言って照れんなって!」

「照れるも何も、好きも嫌いもそんな感情すら持ち合わせてない。と言うか興味がない。」

俺がそう言うと。

瀬川は眉を寄せながら。

「…っ、おい!!!」

俺が知らんぷりしながらシャンパンを飲むと。

瀬川は瑞紀の方を見ながら。

「ごめんね、こいつ…」

その時。

「優雅君、やっと来たんだね。」

遠くから部長に呼ばれて。

ちら、と瑞紀を見ると瑞紀はこっちを一切見ずに瀬川と話していて。

それなら大丈夫だろう、その場を離れた。

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