政略結婚が恋愛結婚に変わる時。

美桜羅

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揺れ動く心

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*瑞紀side*
私を置いて何処かへ行ってしまおうとする知哉さんに対し、瀬川さんは大きな声で
「お、おい、悠河!」
と呼ぶが、知哉さんはその声には見向きもしない。

困った様な顔をする瀬川さん達に対し私はなるべく笑いながら、
「…大丈夫です。私、一人でここにいれますから。心配して下さってありがとうございます。」

そう言うと。

瀬川さんは、益々困った顔をして
「いや~、そう言うわけにもいかないんだよね…」
と言いながら、周りをちらっと見た。

それに続いて周りを見ると。

周りには、沢山の男の人達。

チラチラとこちらを見てる気がする。



私が、その視線に気づかないふりをしてニコリと微笑むと。

瀬川さんは、じっと私を見て。

奥さんに、少し席を外して、と言って奥さんが頷くのを確認すると。

「…ちょっと一緒に話をしようか。」

その言葉に疑問を感じながらも、笑って頷いた。




その場からゆっくりと離れて、人のあまりいない端にある椅子に二人で座って。

何も話す事がなくて、静かに手に持っていたグラスの中身をクルクルと回していると。

「…悠河といると、大変でしょ。」

その言葉に、肯定も、かと言って否定も出来ず黙っていると。

「悠河の女嫌いもさ、理由がなくあんなにひどくなったわけじゃ無いんだ。」

「…」

瀬川さんの重い口調に顔を上げる。

「悠河の母親さ、病気で死んでるんだよ。」

私が黙って前を見ていると、瀬川さんは話し続ける。

「それからみたいなんだ。“女なんて”とか、“特別感情なんて抱かない”って言い出したのは。」

瀬川さんは拳を握りしめながら。

「大切な人が目の前からいなくなる怖さをあいつは知ってるから。怖いんだろうね、また大切な人を失って傷つくのが。」

私はゆっくりと瀬川さんを見て。

「だから、悠河は「…知ってますよ。」

私がそう言うと、瀬川さんは目を見開く。

「知ってますよ、全て。知哉さんのお義母さんが亡くなられた事も、そのせいで女性を愛せないのも。全て、知ってます。」

「…みず、「知ってて、結婚したはずなのに。案外、辛い物ですね。」

悲しそうな顔をして私を見る瀬川さんを見て。

「…瑞紀ちゃんは、悠河の事好きなんだね。」

その言葉に。

『この際に、離婚しよう。』

胸の痛みを必死に抑えながら、頷いた。
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