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よくあるテンプレものの悪役令嬢に敵対する、性悪ヒロインに転生してしまった……
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「お嬢様!」
「グレース!大丈夫か!」
大きな声が響いていく。そうだ、私は確か、ピアノの前の椅子の上から落ちて……。
うっ、頭が痛い。割れる様だ。私は慌てて両手で頭を抑える。
その時だ。私の頭の中に産まれた時に封じ込められていた記憶が卵を求めて遡る鮭のように勢いよく流れ込んでいく。
前世のハッキリと覚えている事から、細々とした所まで何もかも明確に思い出していく。そのせいか、頭痛は勝手に収まってしまったらしい。
私はいや、俺は確か、前世では平凡な高校生で、世界史とアニメが大好きな高校二年生だった。
あの時、俺は真夜中に塾の帰りに『悪役令嬢』もののアンソロジーの漫画を読んでて、それで赤信号に気が付かずに……。
「ァァァァァァァァァァ!!!俺のアホォォォォォ~!!!」
俺は自らの馬鹿さ加減を思い出してピアノの側で叫ぶ。
そして、怒りに任せて、ぶつけたばかりの頭をもう一度、鉄筋の床の上に叩き付けようとしたところに、俺の頭は誰かに優しく包み込まれていく。
温かく、それでいて優しい手。もし、前世の事を思い出さなければ、俺はその男に心底から、惚れていたに違いない。
俺がその人物を眺めると、
「あッ!サミュエル王子!」
と、思わず先程までの記憶を思い出して叫んでしまう。
サミュエル・ラングドーア。ラングドーア王国の第二王子にして、公爵令嬢、オリビア・コーンドールの婚約者。
そして、忘れてはならないのが、長い黄金の絹の様な金髪に男でも惚れそうになる程の美貌、そして、スポーツ選手や鍛え上げられた騎士さえも、もやしに見えてしまう程の逞しい体型。
歴史や美術、法律などに精通した英名な頭脳。そして、女性に対する紳士的な態度。
まさしく、テンプレ的、完璧王子。
まぁ、もっとも、俺の頭の中ではこういった王子=悪役令嬢ものの王子だという認識が出来上がってしまっているが……。
そして、今、俺を抱き抱えているこの完璧王子こそ、俺が死ぬ直前まで読んでいた悪役令嬢ものの漫画『婚約破棄されたものの、それは王子様の策略でした』に登場する人物なのだ。
『婚約破棄されたものの、それは王子様の策略でした』はいわゆるテンプレ的悪役令嬢ものので、ヒロインのオリビア・コンドールと婚約を結んでいたその王子の前に性悪主人公のグレース・ベンフォールが現れて、王子に迫る。
王子は彼女(今の俺なのだが)の父親の罪を暴くために、騙されたフリをする。
そこで、卒業記念パーティーでオリビアを断罪するという名目のグレースの断罪イベントを開いて、彼女を暴れる父親と共に逮捕させ、二人は結ばれて幸せになるという話だ。
その後にも話があったが、そこまで読んだところで事故に遭ったので、その後の話は読めていない。
まぁ、俺が買ったのはアンソロジーだから、恐らく、というか絶対に別の話だから、そこは気を揉む必要はないだろう。
事故に至るまでの経緯は、走馬灯の様に俺の中に流れたが、向こうから見れば、俺は相当に放心していたらしく、無意識のうちに口をパクパクと動かしていた俺に王子は優しく声をかけて、
「どうしたんですか?ミス・ベンフォール。大丈夫ですか?あなたに万一の事があれば、ぼくは、ぼくはーー」
彼は青ざめた顔をする。恐らく、俺に拗ねられたら、親父に近付くのが不利になるだろうから、大方、演技なのだろうが。
だから、俺はニッコリとした笑顔で、それでいて王子の機嫌を損ねない様に、おふざけを混ぜて言う。
「大丈夫なのです。にぱー」
王子はそれを聞いて微笑む。だが、王子よ、お前は知らんよな。俺が某タイムリープ作品のロリ巫女の台詞をパロった事を。
「グレース!大丈夫か!」
大きな声が響いていく。そうだ、私は確か、ピアノの前の椅子の上から落ちて……。
うっ、頭が痛い。割れる様だ。私は慌てて両手で頭を抑える。
その時だ。私の頭の中に産まれた時に封じ込められていた記憶が卵を求めて遡る鮭のように勢いよく流れ込んでいく。
前世のハッキリと覚えている事から、細々とした所まで何もかも明確に思い出していく。そのせいか、頭痛は勝手に収まってしまったらしい。
私はいや、俺は確か、前世では平凡な高校生で、世界史とアニメが大好きな高校二年生だった。
あの時、俺は真夜中に塾の帰りに『悪役令嬢』もののアンソロジーの漫画を読んでて、それで赤信号に気が付かずに……。
「ァァァァァァァァァァ!!!俺のアホォォォォォ~!!!」
俺は自らの馬鹿さ加減を思い出してピアノの側で叫ぶ。
そして、怒りに任せて、ぶつけたばかりの頭をもう一度、鉄筋の床の上に叩き付けようとしたところに、俺の頭は誰かに優しく包み込まれていく。
温かく、それでいて優しい手。もし、前世の事を思い出さなければ、俺はその男に心底から、惚れていたに違いない。
俺がその人物を眺めると、
「あッ!サミュエル王子!」
と、思わず先程までの記憶を思い出して叫んでしまう。
サミュエル・ラングドーア。ラングドーア王国の第二王子にして、公爵令嬢、オリビア・コーンドールの婚約者。
そして、忘れてはならないのが、長い黄金の絹の様な金髪に男でも惚れそうになる程の美貌、そして、スポーツ選手や鍛え上げられた騎士さえも、もやしに見えてしまう程の逞しい体型。
歴史や美術、法律などに精通した英名な頭脳。そして、女性に対する紳士的な態度。
まさしく、テンプレ的、完璧王子。
まぁ、もっとも、俺の頭の中ではこういった王子=悪役令嬢ものの王子だという認識が出来上がってしまっているが……。
そして、今、俺を抱き抱えているこの完璧王子こそ、俺が死ぬ直前まで読んでいた悪役令嬢ものの漫画『婚約破棄されたものの、それは王子様の策略でした』に登場する人物なのだ。
『婚約破棄されたものの、それは王子様の策略でした』はいわゆるテンプレ的悪役令嬢ものので、ヒロインのオリビア・コンドールと婚約を結んでいたその王子の前に性悪主人公のグレース・ベンフォールが現れて、王子に迫る。
王子は彼女(今の俺なのだが)の父親の罪を暴くために、騙されたフリをする。
そこで、卒業記念パーティーでオリビアを断罪するという名目のグレースの断罪イベントを開いて、彼女を暴れる父親と共に逮捕させ、二人は結ばれて幸せになるという話だ。
その後にも話があったが、そこまで読んだところで事故に遭ったので、その後の話は読めていない。
まぁ、俺が買ったのはアンソロジーだから、恐らく、というか絶対に別の話だから、そこは気を揉む必要はないだろう。
事故に至るまでの経緯は、走馬灯の様に俺の中に流れたが、向こうから見れば、俺は相当に放心していたらしく、無意識のうちに口をパクパクと動かしていた俺に王子は優しく声をかけて、
「どうしたんですか?ミス・ベンフォール。大丈夫ですか?あなたに万一の事があれば、ぼくは、ぼくはーー」
彼は青ざめた顔をする。恐らく、俺に拗ねられたら、親父に近付くのが不利になるだろうから、大方、演技なのだろうが。
だから、俺はニッコリとした笑顔で、それでいて王子の機嫌を損ねない様に、おふざけを混ぜて言う。
「大丈夫なのです。にぱー」
王子はそれを聞いて微笑む。だが、王子よ、お前は知らんよな。俺が某タイムリープ作品のロリ巫女の台詞をパロった事を。
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