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寄り道の先で
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『えー、ちょっと待って!?食べてくるってそれどういうこと!?』
電話の向こうで俺の元カノ兼現お袋が叫ぶ。
だが、今日はなんとなく食べる気になれないのだ。なので、簡潔に「外で食べる」とだけ告げ、俺は夜の街へと繰り出す。
夜の街と言っても、この街の中心にある賑やかな場所だから、俺が一人で出歩いていても、特に怖い事はない。
何処でも良いのだが、街を歩いていると、ふとラーメン屋の看板が目に入ったので、俺はそこの暖簾をくぐっていく。
繁華街の隅にあるこのラーメン屋はこじんまりとした場所であるが、店内は中々綺麗であった。
テーブル席か、カウンター席かを問われたので、俺はカウンター席を選ぶ。
カウンター席に座り、俺がメニューを眺めると、そこには豊富な種類のラーメンの名前と様々な中華の名前が書き記されていた。
俺は手始めに、餃子と炒飯、醤油ラーメンを注文した。
すると、ラーメン屋の奥で、皿を洗っている少年の姿が見えた。
恐らく、中学生くらいだろう。まだそのくらいの年齢で、社会を回す作業の一端に携わるとは偉い。
俺は懸命に働く、中学生にこっそりと敬礼を送り、それから、醤油ラーメンを啜っていく。
合間に食べる炒飯も餃子もなんと旨いのだろう。
全てを食べ終え、レジに向かおうとすると、俺の耳にある一言が届く。
「如月」という単語が。俺は改めて耳を澄ませていく。
「おい、如月、今のお客さんのお皿ちゃんと洗っておけよ!」
やはり、「如月」と聞こえた。俺の聞き間違いなどではない。
気が付けば、俺は半ば咄嗟にその少年に向かって尋ねる。
「あんた、もしかして、弟か!?あの如月涼子の!?」
それを聞くと、少年は一瞬、唖然とした表情を浮かべていたが、すぐに中華包丁を取り出し、俺に向かっていく。
店の人たちは慌ててそれを止める。
「離せッ!ぼくはこいつを殺すんだって!」
「な、落ち着けって、如月!何があったのかは知らんが!」
「そうだ、落ち着け!」
「うるさい!うるさい!よくも、姉さんを奪ったな!」
姉さん?という事は彼ら弟なのだろうか。
俺は改めて、彼に名前を問う。
「あんた、名前は?あの親父に苦労させられた、身内同士、ちょっと、話し合おうぜ」
「なんで、お前にそんな事を言わなくちゃあいけないんだ!ぶっ殺すぞ!」
「そんなに興奮しないでくれ」
俺が冷笑を含みながら発言したからだろう。涼子の弟は眉間に皺を寄せ、両眉をも寄せて、無我夢中で中華包丁を振っていく。
取り敢えず、涼子の弟君は落ち着くまで隔離する事になり、俺はその間、店のテーブルで待つ事になった。
暫く、俺はテーブル席で店側が好意で出してくれたお冷を啜っていると、白いエプロンを外した弟君が現れた。
弟君は俺に向かって頭を下げると、改めて名前を名乗っていく。
「先ほどは頭に血が登りまして、大変、失礼致しました。ぼくの名前は如月元樹。あなたの新しいお母さん、如月涼子の弟です」
やはり、彼は弟であったらしい。俺もそれに向かって頭を下げる。
電話の向こうで俺の元カノ兼現お袋が叫ぶ。
だが、今日はなんとなく食べる気になれないのだ。なので、簡潔に「外で食べる」とだけ告げ、俺は夜の街へと繰り出す。
夜の街と言っても、この街の中心にある賑やかな場所だから、俺が一人で出歩いていても、特に怖い事はない。
何処でも良いのだが、街を歩いていると、ふとラーメン屋の看板が目に入ったので、俺はそこの暖簾をくぐっていく。
繁華街の隅にあるこのラーメン屋はこじんまりとした場所であるが、店内は中々綺麗であった。
テーブル席か、カウンター席かを問われたので、俺はカウンター席を選ぶ。
カウンター席に座り、俺がメニューを眺めると、そこには豊富な種類のラーメンの名前と様々な中華の名前が書き記されていた。
俺は手始めに、餃子と炒飯、醤油ラーメンを注文した。
すると、ラーメン屋の奥で、皿を洗っている少年の姿が見えた。
恐らく、中学生くらいだろう。まだそのくらいの年齢で、社会を回す作業の一端に携わるとは偉い。
俺は懸命に働く、中学生にこっそりと敬礼を送り、それから、醤油ラーメンを啜っていく。
合間に食べる炒飯も餃子もなんと旨いのだろう。
全てを食べ終え、レジに向かおうとすると、俺の耳にある一言が届く。
「如月」という単語が。俺は改めて耳を澄ませていく。
「おい、如月、今のお客さんのお皿ちゃんと洗っておけよ!」
やはり、「如月」と聞こえた。俺の聞き間違いなどではない。
気が付けば、俺は半ば咄嗟にその少年に向かって尋ねる。
「あんた、もしかして、弟か!?あの如月涼子の!?」
それを聞くと、少年は一瞬、唖然とした表情を浮かべていたが、すぐに中華包丁を取り出し、俺に向かっていく。
店の人たちは慌ててそれを止める。
「離せッ!ぼくはこいつを殺すんだって!」
「な、落ち着けって、如月!何があったのかは知らんが!」
「そうだ、落ち着け!」
「うるさい!うるさい!よくも、姉さんを奪ったな!」
姉さん?という事は彼ら弟なのだろうか。
俺は改めて、彼に名前を問う。
「あんた、名前は?あの親父に苦労させられた、身内同士、ちょっと、話し合おうぜ」
「なんで、お前にそんな事を言わなくちゃあいけないんだ!ぶっ殺すぞ!」
「そんなに興奮しないでくれ」
俺が冷笑を含みながら発言したからだろう。涼子の弟は眉間に皺を寄せ、両眉をも寄せて、無我夢中で中華包丁を振っていく。
取り敢えず、涼子の弟君は落ち着くまで隔離する事になり、俺はその間、店のテーブルで待つ事になった。
暫く、俺はテーブル席で店側が好意で出してくれたお冷を啜っていると、白いエプロンを外した弟君が現れた。
弟君は俺に向かって頭を下げると、改めて名前を名乗っていく。
「先ほどは頭に血が登りまして、大変、失礼致しました。ぼくの名前は如月元樹。あなたの新しいお母さん、如月涼子の弟です」
やはり、彼は弟であったらしい。俺もそれに向かって頭を下げる。
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