親父の再婚相手が俺の元カノだった件について

親父の提案

その翌日、あの二人のイチャイチャっぷりが気になって、俺は結局、部活棟に行きそびれた。

朝の時には一応は渡そうとしたのだが、その後はあの二人の事で頭がいっぱいになり、全ての授業が終わるのと同時に、学校を飛び出したのだ。

授業終わりに家に戻り、部屋に篭り、またしてもゲーム。ゲーム三昧である。
オープンワールドのゲームも楽しいのだが、やはり、俺が好きなのは格ゲー。
何も使わずに、力だけで相手を倒すというのは面白い。

俺がコンピューターを相手に戦い、気が付けば、窓から差し込む光がオレンジ色に変わった時に変化は起きた。
そう、俺の新しいお袋もとい涼子が帰宅したのだ。

俺は慌てて二階からお帰りの声を出すと、再びゲームに集中していく。
恐らく、この後に彼女は俺たち家族のために旨い夕食を作ってくれるだろう。
涼子の料理があんなにも旨かったとはあの時は知る由もなかったが……。

そう考えて、俺はここ数日、あいつが作った料理の事を思い返していく。
朝食も夕食も絶品だ。弁当はあの日の晩、降りる途中に声をかけて、俺が断ったので、作られていないが、もしかすれば、弁当も美味しいのかもしれない。
今度、機会があれば食べてみてもいいかもしれない。

そう考えていると、親父が帰宅した。
同時に、涼子が明るい声を出し、親父を夕食に誘う。
同時に、俺も大きな声で呼び付ける。

俺は面倒臭そうな返事を返し、夕食を食いに降りていく。
夕食を食べていると、涼子は今日の部活の話をしていく。
どうやら、今日の夕食は部活のメニューに影響を受けたらしい。

ほうれん草のおひたしがそれらしい。俺が飯を食べていると、親父に熱心に解説する元カノの姿。
やはり、そんな姿を見せられると、少し胸が痛んでしまう。
と、言うのも、涼子は俺の元カノ。つまり、元は愛し合った仲なのだ。

親父とはいえ、あんな風にイチャイチャを見せられると、こちらとしてもくるものがある。
居た堪れなくなった俺はその場から立ち上がろうとしたのだが、その前に親父が俺を呼び止める。

「なんだよ？」

俺が問い掛けると、親父は俺に手を振って、

「今度の週末なんだがな。家族三人で遊びに行こうかと思ってるんだ」

「遊びにって……何処に？」

「そりゃあ、決まってるだろ。巨大アミューズメントパークだ」

俺の頭の中にあの巨大遊園地が思い浮かぶ。
と、言うか、親父は俺の年齢を小さい子と勘違いしているのではないだろうか。
アミューズメントパークとは……。だが、ここで駄々をこねるのも何処か子供っぽい。

なので、一応は承諾を口にしておく。
涼子の奴はともかく、親父はそれを聞いて、顔を明るくさせた。
その顔を見ると、たまにはそういった場所に行くのも悪くはないだろう。