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語り、そして、付き合うまで

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私、如月涼子は兄二人に、弟一人に両親という男家系に産まれた。

如月家の中で女子は母と私だけなので、そのせいか、母は私を一番よく可愛がってくれたような気がする。

口癖は「母さんの認めた人でなければ、結婚は許しませんよ!」であったのだ。

これが、中々に難しい。母のお眼鏡にかなう相手などいるのだろうか。

当然、小中と男子の友達と遊ぶというだけでも、母は激しく反応し、例え、子供だろうが睨んでいた。

そのため、男子の友達を呼ぶ時は、必ず母は家を空け、応対は常に父が担当していた。

父は強面で、一見すれば、ヤクザのように思われるかもしれないが、実はかなり柔和な人なので、初対面の人にはそれが驚かれる。

と、いうか、普通反対ではないか。そんな事を考えていると、引きこもりの二人目の兄が壁を叩いたので、私の思考は中断させられてしまう。

一人目の兄、幸樹こうきは音楽会社の社員であり、尚且つ、そこそこ顔の売れているミュージシャン。そして、私の弟の元樹もときは才色兼備で優秀な中学3年生であるのに、どうして、二人目の兄だけこんな風になってしまったのだろう。

ちなみに、二人目の兄の名前は健司けんじ
やはり、名前に『樹』が付かなかったのがいけなかったのだろうか。

思えば、父の名前も良樹よしきである。
そう考えるとますます『樹』が付かなかったのが駄目なのだと思ってしまう。

ちなみに母の名前は『亜美子』である。
世間から見れば、大家族に支えられた私は平穏に過ごしていた。

小中もそれ相応の暮らしをし、地域のそこそこの高校に進学した。
そこの高校はそれなりに歴史もあり、進学実績もまぁまぁという程度である。

制服は男女共にブレザー。校舎は一応はプールも付いているそれなりに大きい高校である。

高校生活が始まると同時に、私は文化部に入り、授業が終わると同時に、そこで部活に励む。

そんな楽しくも充実した、学生生活を変えたのは、一人の男子生徒からの告白だった。

ある日、部活で練習をしていたら、仲の良い友達の高杉泉たかすぎいずみに呼ばれ、学校の校舎の裏側に呼び出された。

学校の校舎の裏側には、一人の男子生徒が立っていた。

中々に整った顔立ちをしており、眩いばかりの笑顔を浮かべた優しそうな風貌をした、少年はいきなり頭をかげると、私に手紙を差し出す。

「あ、あの……こ、この手紙を読んでください!そ、そして、手紙の返事を聞かせてください!」

そう言うと、彼は慌ててその場を去っていく。

後に残されたのは、それを呆然とした表情で眺める私と何故か、ニヤニヤとした表情を浮かべる高杉泉。

泉は私を肘で突くと、私に手紙を読むように催促していく。

私は泉に促されるままに手紙を読む。
すると、そこには在らん限りの想いを綴った文が書かれていた。

思わず、こちらが赤面するほどの内容だったが、それでも、彼の熱い想いは充分に伝わった。
そして、思った。少しだけなら、付き合ってあげても良い、と。
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