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五大ファミリーの陰謀編

ジャック・カルデネーロの暴走ーその③

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ジャックは自らのCMSを見せる事により、自分は止められないのだと主張したいのだろう。
どのような魔法を使うのかは、知らないのだが、アンドリューとしては怯むわけにはいかない。
引き続き、対峙し続けていた。
「だから、そんな事をしても無駄なんだって! おれの背後には強力なコネが付いてあるんだからッ! おれはこのニューヨークを手に入れ、アメリカを……いや、世界を手に入れる男なんだッ!お前らのような凡人に負ける筈がないッ!」
「失礼、今凡人と仰られましたね?私としましては、訂正を要求したいところであります」
そう喋った顔色の悪いだが、容姿端麗な男こそが、アンドリュー・カンブリアであった。
「私はサセックス王国国立魔法大学を首席という地位で卒業し、現在もそれに合った職を国王陛下から与えられてあります。ですが、あなた様はただ利用されているだけ……私はそんなあなた様のお顔がものすごく惨めに見えます。ただ、利用されているだけの暴力団の首領にしか見えないのです。私の意見は間違っていますか?間違っておられるなら……」
アンドリューの挑発はまさに挑発のためのものであった。彼は人を馬鹿にする事でしか、動けないのだろうか。
チャーリーは思わずそう叫びたくなってしまう。だが、チャーリー以上に怒っていたのは、ジャック・カルデネーロ本人であった。
「いいだろう、おれをなめ腐りやがって! この場でテメェを片付けてやる! 」
ジャックは真っ直ぐにアンドリューに向かってCMSで斬りかかってくる。
アンドリューは容易に飛び上がり、ジャックのCMSの刃を回避したのだが、次の瞬間にアンドリューの代わりに餌食となった高層ビルが爆発した。
「い、一体何が!?」
チャーリーはビルの様子を見て、目を丸くしていたが、アンドリュー・カンブリア自身は冷めた目で崩壊するビルを見ていた。
(あの男の操る魔法は、恐らく爆発魔法……あれを使っていたのか、厄介だな、チャーリーにあいつの相手が務まるとは思えん。私が相手をする必要があるな)
アンドリューはチャーリーに周りのジャックの手下やジャックの連れている怪物を相手にするように指示を出し、自らはジャック・カルデネーロにその刃を向ける。
「フフフ、おれの魔法に敵う奴がいる筈がねぇ、お前も気の毒にな、おれのような奴を相手にする事になって……」
同情しているような口ぶりではあったが、その口調は馬鹿にしているとしか思えない口調であった。
アンドリューはそれに怒ることもなく、ただ、笑顔を浮かべながら、指をパチンと鳴らすだけであった。
「やれやれだな、私のような天才が、あなたのような低脳な魔法剣士と戦わなくてもはならないなんて……泣きたくなってしまうよ」
「逆に挑発する勇気は買うが、マフィアの世界では、それはあまり賢くない手段だと言っておくぜ! 」
ジャックは再びアンドリューに向かって斬りかかっていく。
アンドリューは自らのCMSの刃先で刃を受け止め、そのまま相手の刃ごと後方に向かって吹き飛ばす。
だが、ジャックはその場に踏み止まり、相変わらずアンドリューを挑発し続ける。
ジャックは今度はCMSの刃を向け、次に刃先から黒色の衝撃波を飛ばす。
アンドリューはこの衝撃波をジャックの魔法のようなものだと判断し、自らの吸収魔法で吸収し、今度は自分の魔法として使用する。つまり、ジャックが先ほど放った衝撃波をもう一度放った。今度は、ジャックに仇す魔法として。
ジャックはもう一度衝撃波を放つ事により、二つの衝撃波が重なり合い二人の間で爆発する。
「終わりかな?私としては少しばかり物足りないのだが……」
アンドリューの挑発に乗るのは危険だと、ジャックは何度も言い聞かせ、もう一度衝撃波を放つ。
今度もまた、衝撃波を吸収する。ただし、こちらには放ってこない。
何をしたいのだろうか。ジャックが首を傾げていた時だ。
アンドリューが目の前にまで迫る。一体どんな魔法を使ったのだろうか。いや、それとも常識的にあり得ない体術でも使えるのだろうか。
だが、今はそんな議論はジャックには重要な事ではない。
アンドリューはCMSを付けた腕で、自らを斬りかかろうとするが、ジャックは何とか自らのCMSで防ぐ。
ホッと一息つきたい気分だった。だが、それもつかの間の事なのだろうと気付かされた。何故なら……。
「な、爆発しだと!?」
「あなたの魔法をそのまま私のCMSに使わせていただきました。もっとも、使えるのは一回限りなんですがね」
アンドリューの勝利を確信した笑みが見えた瞬間に、ジャックは全てを悟ったようにその場に崩れこむ。
「終わりですね、あなたもカルデネーロ・ファミリーとやらも終わりだ」



市街地では、カルデネーロ・ファミリー及びこの世にあらざる怪物たちとニューヨーク市警が激闘を繰り広げていた。
「オークは頭を狙うんだッ!オークは頭が弱いはずだッ!」
チャーリーはパトカーのドアに隠れながら、街中に現れたオークに対して闇雲に発砲する警官たちに指示を出す。
オークはノコギリのような形をした剣を振り回してはいたが、飛び道具は使えないようだ。
その証拠に近づいた警官たちは全て、無残な肉片となっているのに対し、距離を保ちつつ攻撃している警官はそんな目には遭っていない。
チャーリーの言葉には十分に説得力があった。警官たちは勇気付けられ、オークの軍団に向かって拳銃を撃ち続けている。
「チャーリー! あんた一体どこから、そんな知識を!?」
だが、その警官たちの間で、唯一疑問をぶつけたのは、相棒のメアリー・青山冬菜。
彼女は怪訝そうな目で尋ねるのだが、肝心のチャーリーが出した答えとしては、
「映画だよ、異世界を舞台にした映画で、オークの弱点になったのは、頭だった! 」
「頭!?あなたの根拠は映画なの!?」
「悪いかよ! ハリウッドの主人公は大体こんなジョークを言うだろ!?」
チャーリーは南極の氷のような真っ白な歯を見せて笑う。
「全くだわ、あなたにはこの責任を取ってもらうわよ! 」
メアリーはオークを撃ちながら言った(ギャングどもの方は、別の警官隊が処置している)
「アンドリューにも我々ができるという事を証明してやるんだッ!」
チャーリーの一言にメアリーは満更でもなさそうな笑顔を浮かべて同意する。



チャーリーはそれからというもの、ひたすら仲間の警察に銃を撃ち続ける指示を出す。
警察官たちにオークは人間ではない。ゾンビ映画に出てくるゾンビと同じだと、檄を飛ばす。
そのためだろう。オークたちはニューヨークの時計の針が翌日の時刻を指すよりも前に全滅していた。
「これで、終わりかな?」
チャーリーは何人かの警察官に銃を突きつけながら、パトカーに入れらる様子を見ながら、安堵の溜息を吐く。
「かもしれないな、でも、あれは何だい?」
アンドリューが指差したのは、合衆国空軍のアパッチヘリ。
何故、ここに来たのだろうか。チャーリーがそんな疑念を抱いていると、アパッチのヘリはチャーリーたちの目の前に降下し、一人の短い金髪の中年の男が降りてくる。
「私の名前はジョン・エヴァンズ! 階級は中佐で、この件の処理を合衆国より命令された! 」
「待ってください、エヴァンズ中佐……この件の処理とは?」
だが、チャーリーの言葉など無かったかのように口を紡ぐ。
「いいか、この件は終わりだッ!警察関係者にしろ、一般人にしろ、この件を口に出したもの、もしくはSNS等に上げた人間には、それなりの処罰が下る事を覚悟しておくように! 」
エヴァンズはそれだけ告げると、アパッチヘリへと戻っていく。
「キミらの政府はあんなに強引なのかい?」
アンドリューのその言葉に何も返せないチャーリーは悔しくて仕方がなかった。
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