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ウィンストン・セイライム・セレモニー編
国王陛下の在位三十周年を祝う記念式典
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結論から言えば、ウィンストン・セイライム王国における国王の在位三十年を祝う記念式典は無事に開催され何事もなく終わったと言っても良いだろう。
王立魔法学院の体育館を使用して行われた在位三十周年記念式典はある一つの異様な出来事が起こった事を除けば、無事に終わったと言っても過言では無い。
当日の流れとしてはまず、宰相や他の式典の出席者を乗せた馬車が早朝に到着し、運動会に向かうという形になっていた。
正午に国王専用の豪華な紋章をあしらえた特製の馬車とそれを追う王室専門の記者、数人の乗る黒い馬車がアンダードームシティーに到着し、その前にシティーの市長や重役、そして貴族一同が出迎えるという流れになっていた。
その後、頭を下げる街の市長と握手を交わした後にシティーが用意した馬に乗せられ、市長と市内の重役や貴族の案内の元に学院へと案内されるのだという。
その後に国王は馬に揺られながら、学院の前の街を歩いていく。
彼は通常ならば、あまり目にしない学院前の街を移動の際に物珍しげに眺めていたそうだが、入り口の近くが不自然に塞がれていたり、大慌てで土を被せたためか、土の色が変わっている場所を確認し、市長を問い詰める。
市長は平伏するばかりであり、心の内でどうやって部下に責任を取らせようかと考えていると、国王は小さな声で「良い」と不愉快そうに鼻を鳴らして馬を進ませていく。
そして自身の指示で作らせた校舎を見上げる。
国王はその大きさに魅了されたのか、暫くの間は呆然としていたらしいが、直ぐに馬の手綱を引いて前へと進む。
国王が目の前に進むと待機していた職員たちが扉を開けてここで歌を降りるように頼み込む。
国王はその命令を聞き入れ、馬を降りる。職員の男性が馬を片付けたかと思うと国王の前に二人の女性と護衛と思われる女子生徒二人に帝国の制服を着た男子生徒一人の計五人が出迎えに現れた。
国王は出迎えに現れた女性のうち、一人はかつて王都での反乱が起きた時に、家族の夕食の席(最も、彼はウェンディが落ちこぼれだと判断してからは彼女を家族とはみなしておらず、シンディがどうしてもというから同席させただけに過ぎないが)に乱入したあのオレンジ色な髪の女性で間違いは無いだろう。
そして翌日の討論会では見事な討論術を見せ、その手腕に舌を巻いた事を覚えている。
国王は出迎えに現れたゴールドマン校長との挨拶はぶっきらぼうに終わらせたものの、生徒会長は気に入ったのか、口元を微かに緩めながら穏やかな声で言葉を返す。
その反応に動揺したのは同席した新聞記者たちも驚きを隠さずにはいられない。
あのぶっきらぼうで常に王族としての威厳を緩める事なく訪問に向かった国王が初めて生徒会長とは言え平民相手に笑ってみせたのだ。
直ぐに集まった記者たちは手元のメモに会長との握手の記事を書いていく。
だが、彼らの驚きはそれだけには留まらない。彼は明らかに不快そうに鼻を鳴らし、生徒会長の護衛を務める銀色の髪の少女を見つめたのだ。
彼は少女を出迎えるなり吐き捨てるような調子で言った。
「なぜ、お前は銀色の髪なのだ。非常に不愉快だ。以後、余の前に現れる時は帽子を被り、その銀色の髪を余に見せぬようにせよ」
記者たちの動揺ぶりは尋常ではない。確かに、護衛の少女は長い銀色の髪であるし、何だったらその少女の顔は彼の一人娘であるシンディ王女と瓜二つであったのだ。
勿論、記者一同は彼女がシンディ王女の双子の姉である事は知らない。
だから、単純に瓜二つの顔と髪である彼女が許せなかったのだと悟った。
無論、この事実を知っている人間の反応は別だ。ウェンディは悔しさのために腕を震わせていたし、会長はウェンディの悔しそうな姿を見て自分の顔が綻びている事に気が付く。
実に父に『不愉快』と呼ばれる気分はどんな感じなのだろう。あぁ、考えただけで興奮してくる。
火照った頬を全力で撫でて腰を動かしたい気分であったのだが、今が式典の直前という事もあり、彼女は必死に国王の接待に務めた。
学校を一通り案内した後に、校長と彼女はいつもは学校内での集会を行う講堂へと国王を迎え入れる。
講堂の前では担当の生徒や教職員が花道を作っており、二人の学校の代表に連れられて国王が現れるのと同時に一斉に頭を下げて国王を出迎えた。
講堂には王国内における有力貴族や政治家、実力者などが集う講堂に現れた国王はそんな彼らに拍手で迎え入れられた。
講堂の前の花道をくぐり抜け、国王は校長に連れられて舞台の上に登っていく。
そして台の中央に用意された王室の紋章があしらわれた演説台の前に立つと台の上に置かれた式典の内容を読み上げていく。
一見すると原稿用紙をそのまま読んでいるものかと思われたのだが、国王の声はハキハキとしたものであり、王としての威厳を纏ったものであり、集まった国民に王としての威厳を放つものであった。
次に先に到着した宰相が台の上に上がり、懐から取り出した祝辞を述べていく。
その後に各有力貴族や政治家の祝辞が述べられ、その後に最後に参列者が国王への忠誠を誓い終わる予定であったのだが、国王は不意に背後で佇んでいた長いオレンジ色の髪の少女を指差す。
「お主、祝辞を読んでみよ」
その言葉に参列者に響めきが湧いていく。当然だろう。彼女は王立魔法学院の生徒会長でこそあるものの、彼女自身は単なる庶民の出の人間である。
宰相は国王の元に近寄り、苦言を呈そうとしたのだが、国王の怒鳴り声によって席へと戻っていく。
彼女は満面の笑みを浮かべて制服の黒色のロングスカートの端を摘み、丁寧に頭を下げて何の紙も無いままに祝辞を述べていく。
失敗するだろうとある者は国王の不興を買う恐れを、ある者はしみどもろになる平民を笑おうとしたのだが、彼らは生徒会長のカンニングペーパー無しの祝辞の素晴らしさに思わず言葉を失ってしまう。
計五分のスピーチを一度も噛まず、一度も言葉に詰まらなかった事に拍手が巻き起こっていく。
彼女は相変わらずの笑顔のまま機会を与えた国王に頭を下げてそのまま彼の背後に下がっていく。
国王は最後にもう一度クラウン会長の素晴らしさを褒め称えるという異様っぷりを見せてから、式典を締め括った。
こうして、特定の人物を国王が褒め称えているという異様な形を除けば、式典は至極無事に終了したと言っても良いだろう。
王立魔法学院の体育館を使用して行われた在位三十周年記念式典はある一つの異様な出来事が起こった事を除けば、無事に終わったと言っても過言では無い。
当日の流れとしてはまず、宰相や他の式典の出席者を乗せた馬車が早朝に到着し、運動会に向かうという形になっていた。
正午に国王専用の豪華な紋章をあしらえた特製の馬車とそれを追う王室専門の記者、数人の乗る黒い馬車がアンダードームシティーに到着し、その前にシティーの市長や重役、そして貴族一同が出迎えるという流れになっていた。
その後、頭を下げる街の市長と握手を交わした後にシティーが用意した馬に乗せられ、市長と市内の重役や貴族の案内の元に学院へと案内されるのだという。
その後に国王は馬に揺られながら、学院の前の街を歩いていく。
彼は通常ならば、あまり目にしない学院前の街を移動の際に物珍しげに眺めていたそうだが、入り口の近くが不自然に塞がれていたり、大慌てで土を被せたためか、土の色が変わっている場所を確認し、市長を問い詰める。
市長は平伏するばかりであり、心の内でどうやって部下に責任を取らせようかと考えていると、国王は小さな声で「良い」と不愉快そうに鼻を鳴らして馬を進ませていく。
そして自身の指示で作らせた校舎を見上げる。
国王はその大きさに魅了されたのか、暫くの間は呆然としていたらしいが、直ぐに馬の手綱を引いて前へと進む。
国王が目の前に進むと待機していた職員たちが扉を開けてここで歌を降りるように頼み込む。
国王はその命令を聞き入れ、馬を降りる。職員の男性が馬を片付けたかと思うと国王の前に二人の女性と護衛と思われる女子生徒二人に帝国の制服を着た男子生徒一人の計五人が出迎えに現れた。
国王は出迎えに現れた女性のうち、一人はかつて王都での反乱が起きた時に、家族の夕食の席(最も、彼はウェンディが落ちこぼれだと判断してからは彼女を家族とはみなしておらず、シンディがどうしてもというから同席させただけに過ぎないが)に乱入したあのオレンジ色な髪の女性で間違いは無いだろう。
そして翌日の討論会では見事な討論術を見せ、その手腕に舌を巻いた事を覚えている。
国王は出迎えに現れたゴールドマン校長との挨拶はぶっきらぼうに終わらせたものの、生徒会長は気に入ったのか、口元を微かに緩めながら穏やかな声で言葉を返す。
その反応に動揺したのは同席した新聞記者たちも驚きを隠さずにはいられない。
あのぶっきらぼうで常に王族としての威厳を緩める事なく訪問に向かった国王が初めて生徒会長とは言え平民相手に笑ってみせたのだ。
直ぐに集まった記者たちは手元のメモに会長との握手の記事を書いていく。
だが、彼らの驚きはそれだけには留まらない。彼は明らかに不快そうに鼻を鳴らし、生徒会長の護衛を務める銀色の髪の少女を見つめたのだ。
彼は少女を出迎えるなり吐き捨てるような調子で言った。
「なぜ、お前は銀色の髪なのだ。非常に不愉快だ。以後、余の前に現れる時は帽子を被り、その銀色の髪を余に見せぬようにせよ」
記者たちの動揺ぶりは尋常ではない。確かに、護衛の少女は長い銀色の髪であるし、何だったらその少女の顔は彼の一人娘であるシンディ王女と瓜二つであったのだ。
勿論、記者一同は彼女がシンディ王女の双子の姉である事は知らない。
だから、単純に瓜二つの顔と髪である彼女が許せなかったのだと悟った。
無論、この事実を知っている人間の反応は別だ。ウェンディは悔しさのために腕を震わせていたし、会長はウェンディの悔しそうな姿を見て自分の顔が綻びている事に気が付く。
実に父に『不愉快』と呼ばれる気分はどんな感じなのだろう。あぁ、考えただけで興奮してくる。
火照った頬を全力で撫でて腰を動かしたい気分であったのだが、今が式典の直前という事もあり、彼女は必死に国王の接待に務めた。
学校を一通り案内した後に、校長と彼女はいつもは学校内での集会を行う講堂へと国王を迎え入れる。
講堂の前では担当の生徒や教職員が花道を作っており、二人の学校の代表に連れられて国王が現れるのと同時に一斉に頭を下げて国王を出迎えた。
講堂には王国内における有力貴族や政治家、実力者などが集う講堂に現れた国王はそんな彼らに拍手で迎え入れられた。
講堂の前の花道をくぐり抜け、国王は校長に連れられて舞台の上に登っていく。
そして台の中央に用意された王室の紋章があしらわれた演説台の前に立つと台の上に置かれた式典の内容を読み上げていく。
一見すると原稿用紙をそのまま読んでいるものかと思われたのだが、国王の声はハキハキとしたものであり、王としての威厳を纏ったものであり、集まった国民に王としての威厳を放つものであった。
次に先に到着した宰相が台の上に上がり、懐から取り出した祝辞を述べていく。
その後に各有力貴族や政治家の祝辞が述べられ、その後に最後に参列者が国王への忠誠を誓い終わる予定であったのだが、国王は不意に背後で佇んでいた長いオレンジ色の髪の少女を指差す。
「お主、祝辞を読んでみよ」
その言葉に参列者に響めきが湧いていく。当然だろう。彼女は王立魔法学院の生徒会長でこそあるものの、彼女自身は単なる庶民の出の人間である。
宰相は国王の元に近寄り、苦言を呈そうとしたのだが、国王の怒鳴り声によって席へと戻っていく。
彼女は満面の笑みを浮かべて制服の黒色のロングスカートの端を摘み、丁寧に頭を下げて何の紙も無いままに祝辞を述べていく。
失敗するだろうとある者は国王の不興を買う恐れを、ある者はしみどもろになる平民を笑おうとしたのだが、彼らは生徒会長のカンニングペーパー無しの祝辞の素晴らしさに思わず言葉を失ってしまう。
計五分のスピーチを一度も噛まず、一度も言葉に詰まらなかった事に拍手が巻き起こっていく。
彼女は相変わらずの笑顔のまま機会を与えた国王に頭を下げてそのまま彼の背後に下がっていく。
国王は最後にもう一度クラウン会長の素晴らしさを褒め称えるという異様っぷりを見せてから、式典を締め括った。
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