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第一部

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 白い毛並みだけれど、ところどころ灰と黒の縞模様部分のある柄。首元には黒いリボンタイがつけられている。縁の模様が豪華な丸眼鏡はどうやって顔につけてるんだろう。人間のものと違ってツルの部分がない。あっ、もしかして魔法でどうにかしてるの? かわいいね!
 獣人の祖先の種族と言われているだけあって、結構しっかりと二足歩行だ。レティちゃんが立ち上がったときは、四足歩行の猫が一時的に立ち上がった、という風だったけど、このエルナモンテスちゃん――もとい、ギンクちゃんは違う。ファンタジーよろしく、立ってしゃべる猫だ。最高。

 ギンクちゃんをつい、まじまじと観察してしまう。ギンクちゃんが扉のドアノブに手をかけているのを見て、扉の違和感の正体に気が付いた。普通のものと違って、ドアノブの位置が低かったのだ。
 ギンクちゃん自身は、骨格はしっかり立っている猫だけれど、サイズは人間サイズではなく、一般的な猫のサイズ。人間仕様のドアノブだとちょっと高いのだろう。

「邪魔です」

 ギンクちゃんの可愛さにメロメロになっているわたしをアビィさんが押しのける。

「出口の鍵を持っているそうで。私たち、ここから出たいんです。……ほら、さっさと渡してください!」

 アビィさんにうながされるまま、わたしはアラインさんから預かっていたメモをギンクちゃんに渡す。

 渡すときに、ぷにっとした触感が指先に伝わり、思わず「はわわ」と声をこぼしてしまった。エルナモンテスという種族の肉球、触っちゃった! なかなかの柔らかさだった。ありがとう。見た目通り、猫ちゃんと同じような肉球を持っているんだね……。むしろ、二足歩行な分、手の肉球は柔らかさを増すのかもしれない。帰ったらショドーに触らせてもらって確かめよう。

「あーん? ……、……にゃるほど」

 手は普通の猫と変わりないのに、器用に折りたたまれた紙を開いて中を読むギンクちゃん。
 しばらくして、ギンクちゃんが扉の前から動いた。

「ほら、さっさと入れ。出口をあんにゃいしてやる」

 あんにゃいだって。多分、案内のことだと思うけど、『な』が『にゃ』になっちゃうの、いかにも過ぎて好き。

「――ッ、でっ!」

 部屋に入る際に、アビィさんが、杖でわたしの頭を叩いてから入った。……ギンクちゃんに夢中になっているのがバレバレだったらしい。手より口を先に出してほしい……と思いつつも、言われたところで気が付かなかったかもしれないから、ある意味では自業自得なのか? アビィさんから、わたしに対しての信用がない。
 わたしは殴られた部分をさすりながら、案内されるがままに部屋の中へと入った。
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