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第五部
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メルフは鳥のような見た目をした精霊で、彼(精霊に明確な性別はないと思うがどちらかといえば彼)が羽ばたくたびに、羽の周囲にぱちぱちと、花火のように弾けて輝く火花が飛ぶ。ちなみに普段は片手で握ると姿が隠れるくらい、非常に小さい。その気になれば、人が一人乗るのも余裕なくらい大きくなれるはずだが。
――そして、師匠が使役していた精霊のうちの一体である。
師匠が死んで、自由になって、千年もの間、ずっと彷徨っていたのだろうか。精霊に、寿命と言う概念はあまりないし。
師匠がいくら年齢不詳で、もう何百年も生きていそうな雰囲気があったとはいえ、あの人も人間なので、千年も生きて、今も使役されているわけがない。
しかし、メルフがこの事態を引き起こしたと思うと、どこか納得してしまう。
メルフは花が好きだけれど、花の香りに弱く酔ってしまうのだ。こんなにも街中に花があふれていたら、酔っ払って炎のコントロールが出来なくなっていても不思議ではない。
温室で植物の世話をしている師匠と兄弟子の元へ遊びに行き、花に酔って温室の花壇一角を駄目にしたことは一度や二度じゃないので、彼がやらかすことは珍しくない。
花に引かれていくものの、コントロールが出来なくなって花に引火したりあんなにも炎が吹き出たのだろう。
とはいえ、メルフが正体だと分かったところで、この火事騒ぎがどうにかなるわけじゃない。
「――やめなさい、メルフ!」
わたしが叫ぶと、メルフはこちらに気が付いたようで、わたしの方へと飛んでくる。かなり酔っているようで、その飛行はよろよろと心もとない。同時に、彼が羽ばたくときに弾ける火花が、普段よりかなり大きかった。
「まれえぜ」
うわやば、声もべろべろだ。メルフはそこそこの年齢を重ねている精霊のようだから、しろまるのように幼さを感じる喋り方じゃないはずなのに、かなり舌ったらずで聞き取りにくい話し方だ。
ひょろひょろと飛んで、今にも落ちそうなので思わず手を差し出して受け皿を作ってしまう――が。
「あっっっっつ!」
わたしは反射でメルフを叩き落とした。さっき、持っていた花が燃えたときの比じゃないくらい、メルフは熱かった。ジュッって手が焼ける音したわ。
「大丈夫!?」とイナリが声をかけてくるが、素直に言葉を返せるだけの余裕がない。わたしの頭の中で、脳内師匠が「メルフが酔っているときは触るなって言っただろ馬鹿たれ」と怒っていた。そう言えばそうだった。すっかり忘れていたが、これ、前にもやらかしたんだった。
地面に落ちたメルフだったが、酔っているからか、わたしに叩き落されたという状況を飲み込めていないようだ。痛みにも鈍くなっているらしい。
ぐでんぐでんのメルフは、起き上がることも出来ず、くねくねと体をよじらせるだけだ。途中、諦めたのか、ぴた、と脱力して固まっては、また身を動かす。起き上がる気があるのか、と言いたくなるくらい酷い有り様だった。
駄々をこねて地面に仰向けになる子供のような動きをするメルフ。動き自体は緩慢だけど。
「まれえぜ、かえろぉ」
「――え?」
メルフの言葉に、わたしは固まってしまった。
――そして、師匠が使役していた精霊のうちの一体である。
師匠が死んで、自由になって、千年もの間、ずっと彷徨っていたのだろうか。精霊に、寿命と言う概念はあまりないし。
師匠がいくら年齢不詳で、もう何百年も生きていそうな雰囲気があったとはいえ、あの人も人間なので、千年も生きて、今も使役されているわけがない。
しかし、メルフがこの事態を引き起こしたと思うと、どこか納得してしまう。
メルフは花が好きだけれど、花の香りに弱く酔ってしまうのだ。こんなにも街中に花があふれていたら、酔っ払って炎のコントロールが出来なくなっていても不思議ではない。
温室で植物の世話をしている師匠と兄弟子の元へ遊びに行き、花に酔って温室の花壇一角を駄目にしたことは一度や二度じゃないので、彼がやらかすことは珍しくない。
花に引かれていくものの、コントロールが出来なくなって花に引火したりあんなにも炎が吹き出たのだろう。
とはいえ、メルフが正体だと分かったところで、この火事騒ぎがどうにかなるわけじゃない。
「――やめなさい、メルフ!」
わたしが叫ぶと、メルフはこちらに気が付いたようで、わたしの方へと飛んでくる。かなり酔っているようで、その飛行はよろよろと心もとない。同時に、彼が羽ばたくときに弾ける火花が、普段よりかなり大きかった。
「まれえぜ」
うわやば、声もべろべろだ。メルフはそこそこの年齢を重ねている精霊のようだから、しろまるのように幼さを感じる喋り方じゃないはずなのに、かなり舌ったらずで聞き取りにくい話し方だ。
ひょろひょろと飛んで、今にも落ちそうなので思わず手を差し出して受け皿を作ってしまう――が。
「あっっっっつ!」
わたしは反射でメルフを叩き落とした。さっき、持っていた花が燃えたときの比じゃないくらい、メルフは熱かった。ジュッって手が焼ける音したわ。
「大丈夫!?」とイナリが声をかけてくるが、素直に言葉を返せるだけの余裕がない。わたしの頭の中で、脳内師匠が「メルフが酔っているときは触るなって言っただろ馬鹿たれ」と怒っていた。そう言えばそうだった。すっかり忘れていたが、これ、前にもやらかしたんだった。
地面に落ちたメルフだったが、酔っているからか、わたしに叩き落されたという状況を飲み込めていないようだ。痛みにも鈍くなっているらしい。
ぐでんぐでんのメルフは、起き上がることも出来ず、くねくねと体をよじらせるだけだ。途中、諦めたのか、ぴた、と脱力して固まっては、また身を動かす。起き上がる気があるのか、と言いたくなるくらい酷い有り様だった。
駄々をこねて地面に仰向けになる子供のような動きをするメルフ。動き自体は緩慢だけど。
「まれえぜ、かえろぉ」
「――え?」
メルフの言葉に、わたしは固まってしまった。
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