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第三章 指切
第五十二話
しおりを挟む最近ずっと見えざる視線に悩まされている遥希、いく先々で監視されているようで不快な気分が拭えない。けれど周りを見渡しても犯人と疑わしい影もなく鬱屈と過ごす。
出勤をすれば暗い顔をしているわけにもいかず、いつもの柔和な笑みで接客はこなしている。龍哉に相談をしたくても、一大との一件ですっかりと関係に溝ができてしまい隠すことなく避けられている。
そんな状態では会話も成り立たず、今ではすっかり部屋を分け合う同居人だ。唯一のコミュニケーションといえば、たまに求められる性行為くらいのみ。
それも数いる女の誰もに都合がつかず、欲の発散をする相手がいないときに限っての誘いだった。それでもまだ自分を求めてくれるという事実に、遥希は壊れそうなプライドを辛うじて保っている。
閉店し客が引けると、いつものように龍哉は女とすがたを晦ます。高峻は一度たがが外れてしまってからは、自身の店を構える以前より贔屓の極太客とあらぬ関係になり現在進行中。
以降はベッドの誘いはかからなくなった遥希、既婚女性に手をつけ相手夫に訴えられなければいいがと密かに案じている。
客とは肉体関係にならないをモットーにする遥希だ、今は淋しさを後輩ホストたちにつき合うことによって紛らわせる日々だった。
「遥希さん。今日も飯あざっしたっ」
「ご馳走さまっす」
後輩たちとファーストフード店によりその帰り道。上下関係の厳しいホスト界の先輩である遥希に、彼らは腰を深く折り食事代を払ってもらったことに礼を言う。
酒が入ると妙に腹が空くものだ。しかも彼らは若い男とあってよく呑みよく食べ、呆れるほど健常な胃袋を持ち合わせている。無論のこと遥希も若いが。
「ああ。みんな帰ったら筋トレして寝なよ、若いからって油断してたら後悔するよ」
じゃあ気をつけてねと遥希は後輩たちに背を向けた。
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