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(第二部)第二章 出会いと別れ
01 久しぶりの故郷
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天空神ラフテルに強制送還されてしまった樹たち。
樹は急いで学生服の上着を脱ぎ、ソフィーのウサギ耳が見えないように頭から被せた。
「静かにして」
「はいぃ」
全く心臓に悪い。
フクロウは樹の肩に登ってくるが、こちらはそのままにする。
最近は変わったペットを飼っている人も多いので、そんなに変な目で見られないだろう。たぶん……。
「と、とりあえず喫茶店にでも入って、作戦会議しようよ」
結菜が引きつった顔で提案した。
反対する理由はない。
樹たちは連れ立ってファーストフードのチェーン店に入った。物珍しそうにキョロキョロする、ウサギ耳の少女を皆で隠すようにしながら。
ワンコインドリンクを手に、他の客からできるだけ離れた席に座った。
「……途中からよく分からなかったけど、樹と神様が喧嘩しようとしてたってことでOK?」
智輝がコーラを飲みながら樹に聞く。
確かに途中から死の精霊エルルが乱入して、状況が分かりにくくなっていたが。
「うん。そういう理解で良いと思う」
樹はアイスコーヒーを一口飲んで、頷いた。
「あああー、俺たちこれからどうすりゃいいんだ?」
「とりあえず、地球に帰ってきたからには学生業でしょ」
頭を抱える智輝に、結菜がぴしゃりと言った。
その通りだ。
異世界に行って帰ってきたおかげで時間感覚が麻痺してしまっているが、明日からは普通に学校に通わなければならない。
「どうしよう……ソフィーを連れて返ったら僕の親は」
樹は悩んだ。
いきなり女の子を、しかもウサギの耳が生えた女の子を連れて帰ったら、混乱は避けられない。
「じゃあ私がソフィーちゃんの面倒見るよ」
結菜が手を上げる。
彼女の家はちょうど親が外出中らしい。帰ってきたとしても、同じ女性なので友達を泊めると言えば誤魔化せるそうだ。
ソフィーは結菜に任せることにしよう。
樹はフクロウのアウルを連れて、自分の家に戻ることにした。
「ああ、そういえば、僕は英司の連絡先を知らない」
「お。交換しとくか」
樹と英司はスマートフォンを取り出して連絡先を交換した。
同じ高校に通う、智輝・結菜・樹はお互いの連絡先を知っているが、一人だけ別の高校で異世界でも途中から合流した英司は、智輝たちほど樹と親しくない。
今後のことは明日以降に話し合おうということにして、樹たちはひとまず解散した。
仲間と別れた樹はフクロウを肩に乗せたまま、帰路に着く。
徒歩圏内の通学で本当に良かった。
電車やバスに乗ればフクロウを奇異な目で見られただろう。幸い帰路は人通りが少なく、道行く人も樹の肩のフクロウに驚いた目は向けても、騒がずに通りすぎて行く。
樹の家は、住宅街にある一戸建てだ。
広くない庭にはトネリコの大木が植わっていて、細かな葉が風にしゃらしゃらと揺れている。
まだ家族が帰ってきていないようで、玄関の扉には鍵がかかっている。
樹は家に着くと二階に上がって、自分の部屋に入る。
深呼吸すると風の音が聞こえた。
鳥の鳴き声が、木々の震えが、今まで意識していなかった自然の音が聞こえてくる。
それは精霊になってしまった今の樹だからこそ、拾える音だった。
肉体を持っていても、もう樹は普通の人間とは違う。
カーテン越しであっても人間の耳には聞こえない音が、さざめきのように樹を襲った。
アウルが心配そうに樹に聞く。
『イツキや、大丈夫か。世界樹から離れるとお前は……』
「大丈夫だ。今はまだ」
身体が重い。
世界の壁を越えて、本体である世界樹から離れたことで、違和感が強くなっている。
魂があの世界に帰りたがっている。
早く世界樹の元に戻らないと、いずれ体力が落ちて、病気という形で動けなくなってしまうだろう。
「何とか天空神に邪魔されずに、異世界に帰る方法を見つけないとな」
ベッドに横たわった樹は、フクロウの胸毛に手を伸ばしながら考え込んだ。
縹田英司は、自分が平均的な同じ年齢の学生達とは、少し特異であると自覚している。何しろ、異世界で勇者をやってるなんて、普通に同級生に話しても頭がおかしいと思われるだろう。
「ただいまー」
異世界から帰ってきた英司は疲れていた。
買い物に行って欲しいと頼む母親を適当にいなして、自室に逃げ込む。
これでゆっくり休めると思いきや、意外な人物が部屋で待っていた。
「英司、おかえり」
「勝手に部屋に入るなよ、詩乃! くそっ、うちの親も幼なじみだからって、女の子を年頃の男の部屋に通すなんて何考えてんだ」
ショートカットに吊り目の少女が、英司の部屋で我が物顔でくつろいでいる。
彼女は近所に住む幼なじみの岬詩乃という少女だ。早く休みたいと思っている英司は、幼なじみを「出ていけ」と追い出そうとした。
しかし、彼女の目の縁に溜まる涙を見て思いとどまる。
「詩乃?」
「英司、聞いて! こんなこと、英司にしか相談できない!」
涙目で迫る幼なじみの顔を見て英司は目を擦った。
気のせいだろうか。
幼なじみの頭に三角の猫耳が見えるような。
「つ、疲れて目がおかしくなってるんだ。そうか異世界の影響か」
ぶつぶつ呟く英司。
逃げ腰の彼にずずいと迫る詩乃。
「さっき鏡を見たら猫耳が生えてきちゃって。尻尾も!」
「は?!」
「勘違いとかじゃないよね? 私どうなっちゃったのー?!」
何だと。
「ええええーーーっ?!」
幻ではない。
何度目を擦っても幼なじみの猫耳が消えないことに気付いて、英司は絶句した。
樹は急いで学生服の上着を脱ぎ、ソフィーのウサギ耳が見えないように頭から被せた。
「静かにして」
「はいぃ」
全く心臓に悪い。
フクロウは樹の肩に登ってくるが、こちらはそのままにする。
最近は変わったペットを飼っている人も多いので、そんなに変な目で見られないだろう。たぶん……。
「と、とりあえず喫茶店にでも入って、作戦会議しようよ」
結菜が引きつった顔で提案した。
反対する理由はない。
樹たちは連れ立ってファーストフードのチェーン店に入った。物珍しそうにキョロキョロする、ウサギ耳の少女を皆で隠すようにしながら。
ワンコインドリンクを手に、他の客からできるだけ離れた席に座った。
「……途中からよく分からなかったけど、樹と神様が喧嘩しようとしてたってことでOK?」
智輝がコーラを飲みながら樹に聞く。
確かに途中から死の精霊エルルが乱入して、状況が分かりにくくなっていたが。
「うん。そういう理解で良いと思う」
樹はアイスコーヒーを一口飲んで、頷いた。
「あああー、俺たちこれからどうすりゃいいんだ?」
「とりあえず、地球に帰ってきたからには学生業でしょ」
頭を抱える智輝に、結菜がぴしゃりと言った。
その通りだ。
異世界に行って帰ってきたおかげで時間感覚が麻痺してしまっているが、明日からは普通に学校に通わなければならない。
「どうしよう……ソフィーを連れて返ったら僕の親は」
樹は悩んだ。
いきなり女の子を、しかもウサギの耳が生えた女の子を連れて帰ったら、混乱は避けられない。
「じゃあ私がソフィーちゃんの面倒見るよ」
結菜が手を上げる。
彼女の家はちょうど親が外出中らしい。帰ってきたとしても、同じ女性なので友達を泊めると言えば誤魔化せるそうだ。
ソフィーは結菜に任せることにしよう。
樹はフクロウのアウルを連れて、自分の家に戻ることにした。
「ああ、そういえば、僕は英司の連絡先を知らない」
「お。交換しとくか」
樹と英司はスマートフォンを取り出して連絡先を交換した。
同じ高校に通う、智輝・結菜・樹はお互いの連絡先を知っているが、一人だけ別の高校で異世界でも途中から合流した英司は、智輝たちほど樹と親しくない。
今後のことは明日以降に話し合おうということにして、樹たちはひとまず解散した。
仲間と別れた樹はフクロウを肩に乗せたまま、帰路に着く。
徒歩圏内の通学で本当に良かった。
電車やバスに乗ればフクロウを奇異な目で見られただろう。幸い帰路は人通りが少なく、道行く人も樹の肩のフクロウに驚いた目は向けても、騒がずに通りすぎて行く。
樹の家は、住宅街にある一戸建てだ。
広くない庭にはトネリコの大木が植わっていて、細かな葉が風にしゃらしゃらと揺れている。
まだ家族が帰ってきていないようで、玄関の扉には鍵がかかっている。
樹は家に着くと二階に上がって、自分の部屋に入る。
深呼吸すると風の音が聞こえた。
鳥の鳴き声が、木々の震えが、今まで意識していなかった自然の音が聞こえてくる。
それは精霊になってしまった今の樹だからこそ、拾える音だった。
肉体を持っていても、もう樹は普通の人間とは違う。
カーテン越しであっても人間の耳には聞こえない音が、さざめきのように樹を襲った。
アウルが心配そうに樹に聞く。
『イツキや、大丈夫か。世界樹から離れるとお前は……』
「大丈夫だ。今はまだ」
身体が重い。
世界の壁を越えて、本体である世界樹から離れたことで、違和感が強くなっている。
魂があの世界に帰りたがっている。
早く世界樹の元に戻らないと、いずれ体力が落ちて、病気という形で動けなくなってしまうだろう。
「何とか天空神に邪魔されずに、異世界に帰る方法を見つけないとな」
ベッドに横たわった樹は、フクロウの胸毛に手を伸ばしながら考え込んだ。
縹田英司は、自分が平均的な同じ年齢の学生達とは、少し特異であると自覚している。何しろ、異世界で勇者をやってるなんて、普通に同級生に話しても頭がおかしいと思われるだろう。
「ただいまー」
異世界から帰ってきた英司は疲れていた。
買い物に行って欲しいと頼む母親を適当にいなして、自室に逃げ込む。
これでゆっくり休めると思いきや、意外な人物が部屋で待っていた。
「英司、おかえり」
「勝手に部屋に入るなよ、詩乃! くそっ、うちの親も幼なじみだからって、女の子を年頃の男の部屋に通すなんて何考えてんだ」
ショートカットに吊り目の少女が、英司の部屋で我が物顔でくつろいでいる。
彼女は近所に住む幼なじみの岬詩乃という少女だ。早く休みたいと思っている英司は、幼なじみを「出ていけ」と追い出そうとした。
しかし、彼女の目の縁に溜まる涙を見て思いとどまる。
「詩乃?」
「英司、聞いて! こんなこと、英司にしか相談できない!」
涙目で迫る幼なじみの顔を見て英司は目を擦った。
気のせいだろうか。
幼なじみの頭に三角の猫耳が見えるような。
「つ、疲れて目がおかしくなってるんだ。そうか異世界の影響か」
ぶつぶつ呟く英司。
逃げ腰の彼にずずいと迫る詩乃。
「さっき鏡を見たら猫耳が生えてきちゃって。尻尾も!」
「は?!」
「勘違いとかじゃないよね? 私どうなっちゃったのー?!」
何だと。
「ええええーーーっ?!」
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何度目を擦っても幼なじみの猫耳が消えないことに気付いて、英司は絶句した。
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