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カチ、それはスイッチの入る音です
カチ、それはスイッチの入る音です③
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「じゃあ、一緒に食べましょう。ビーフストロガノフ、お嫌いじゃないといいんですけど」
「ハヤシライスとは違うの?」
楓真はきょとんとして結衣に聞いてくる。
あまり、人見知りしないタイプのようだ。
「似てますけどちょっと違いますね。デミグラスでも味付けするんですけど、私のは、ローリエの風味と味が濃いんです。本当はサワークリームを入れるんですけど、私は生クリームを入れるのが好きで」
そう言って、結衣は仕上げの生クリームを分量入れた。
バターライスにパセリを振りビーフストロガノフをかけて、どうぞ」と2人に出す。
一口食べた2人が笑顔になったので結衣はとても嬉しくなってしまった。
「ご飯、喜んで下さって良かったです」
キッチンに立って洗い物をしている結衣の横に立ち、涼真は布巾で拭いて器をしまってゆく。
「あいつ、結構食べましたね」
結衣の作ったものは、誰にも分け与えたくなかった涼真が、少しへこみつつ、結衣に呟く。
「いい食べっぷりでしたね」
うふふっと、結衣が笑う。
へこんでいる涼真が、少し可愛いのと、そんなのいつでも作ってあげるのにと思うからだ。
最後に洗い上げた皿を、涼真に手渡した。
涼真はそれを拭いて仕舞うと、シンクを拭いている結衣を後ろから抱きしめる。
そんな話をしていると、シャワーを浴び終わった楓真が、2人の横を通って、冷蔵庫を開けた。
「お邪魔―、水、もらうよー。」
結衣は固まってしまったが、涼真は結衣を抱きしめたまま、離さない。
「仲良しだね。」
2人に笑いかけて、楓真はキッチンを出ていった。
「……。」
「ね?」
いや、ね?じゃないでしょう。
「私もシャワーしてきます。」
「一緒に…」
「今日はダメ!」
「分かりましたよ…。」
しぶしぶ、といった感じで涼真は了承したが、当然だよねっ!
結衣がシャワーを浴びて、髪を乾かしていると、涼真がシャワーから戻ってくる。
結衣がドライヤーを使っていたので、タオルドライしたままの涼真をベッドに座らせる。
結衣はその涼真の髪に、後ろからドライヤーをかけて、乾かす。
「ん…、結衣さん、気持ちいいです。」
「そう?良かった。」
「結衣さん、まだ髪濡れている。乾かしますね。」
今度は交代して、ベッドに座っている結衣の髪に、涼真がドライヤーを当てる。
涼真の大きな手で、わしゃわしゃ、されながら乾かしてもらうと確かに気持ちいい。
最後にきれいに、ブラシしながらブローして、ヘアオイルまで付けてくれた。
正直、癖になりそうなくらい快適…。
「出来ましたよ。」
涼真の仕上げはいつも完璧だ。
「ありがとうございます。」
「お礼はキスでいいですよ?」
これも、最近いつものやりとりだ。
結衣は涼真の首の後ろに、そっと両手を回して唇を重ねる。
それが、だんだん深くなるのもいつものこと…だが。
「涼真さん、ダメ…。」
「嫌です。」
「気にしないでください。」
「今日はダメ。」
「なんで?」
いや、超絶気になるし!
分かっているはずなのに、涼真は緩く首を傾げる。
もちろん、理由は楓真がいるからだ。
しかし、ベッドに腰掛けて、結衣の腰を抱いていた涼真は、全く腕を緩める気配はない。
「だって、楓真、さんが…」
「じゃあ、声、出しちゃダメ、ですよ。」
しー、と涼真は口元に人差し指をあてる。
壮絶に、艶っぽいけれど、結衣は嫌な予感がした。
「ハヤシライスとは違うの?」
楓真はきょとんとして結衣に聞いてくる。
あまり、人見知りしないタイプのようだ。
「似てますけどちょっと違いますね。デミグラスでも味付けするんですけど、私のは、ローリエの風味と味が濃いんです。本当はサワークリームを入れるんですけど、私は生クリームを入れるのが好きで」
そう言って、結衣は仕上げの生クリームを分量入れた。
バターライスにパセリを振りビーフストロガノフをかけて、どうぞ」と2人に出す。
一口食べた2人が笑顔になったので結衣はとても嬉しくなってしまった。
「ご飯、喜んで下さって良かったです」
キッチンに立って洗い物をしている結衣の横に立ち、涼真は布巾で拭いて器をしまってゆく。
「あいつ、結構食べましたね」
結衣の作ったものは、誰にも分け与えたくなかった涼真が、少しへこみつつ、結衣に呟く。
「いい食べっぷりでしたね」
うふふっと、結衣が笑う。
へこんでいる涼真が、少し可愛いのと、そんなのいつでも作ってあげるのにと思うからだ。
最後に洗い上げた皿を、涼真に手渡した。
涼真はそれを拭いて仕舞うと、シンクを拭いている結衣を後ろから抱きしめる。
そんな話をしていると、シャワーを浴び終わった楓真が、2人の横を通って、冷蔵庫を開けた。
「お邪魔―、水、もらうよー。」
結衣は固まってしまったが、涼真は結衣を抱きしめたまま、離さない。
「仲良しだね。」
2人に笑いかけて、楓真はキッチンを出ていった。
「……。」
「ね?」
いや、ね?じゃないでしょう。
「私もシャワーしてきます。」
「一緒に…」
「今日はダメ!」
「分かりましたよ…。」
しぶしぶ、といった感じで涼真は了承したが、当然だよねっ!
結衣がシャワーを浴びて、髪を乾かしていると、涼真がシャワーから戻ってくる。
結衣がドライヤーを使っていたので、タオルドライしたままの涼真をベッドに座らせる。
結衣はその涼真の髪に、後ろからドライヤーをかけて、乾かす。
「ん…、結衣さん、気持ちいいです。」
「そう?良かった。」
「結衣さん、まだ髪濡れている。乾かしますね。」
今度は交代して、ベッドに座っている結衣の髪に、涼真がドライヤーを当てる。
涼真の大きな手で、わしゃわしゃ、されながら乾かしてもらうと確かに気持ちいい。
最後にきれいに、ブラシしながらブローして、ヘアオイルまで付けてくれた。
正直、癖になりそうなくらい快適…。
「出来ましたよ。」
涼真の仕上げはいつも完璧だ。
「ありがとうございます。」
「お礼はキスでいいですよ?」
これも、最近いつものやりとりだ。
結衣は涼真の首の後ろに、そっと両手を回して唇を重ねる。
それが、だんだん深くなるのもいつものこと…だが。
「涼真さん、ダメ…。」
「嫌です。」
「気にしないでください。」
「今日はダメ。」
「なんで?」
いや、超絶気になるし!
分かっているはずなのに、涼真は緩く首を傾げる。
もちろん、理由は楓真がいるからだ。
しかし、ベッドに腰掛けて、結衣の腰を抱いていた涼真は、全く腕を緩める気配はない。
「だって、楓真、さんが…」
「じゃあ、声、出しちゃダメ、ですよ。」
しー、と涼真は口元に人差し指をあてる。
壮絶に、艶っぽいけれど、結衣は嫌な予感がした。
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