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19.3割から5割増しらしい
3割から5割増しらしい②
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可愛らしいベージュピンクのスーツケースで、貴堂からプレゼントされたタグが付いているのですぐに分かるのだ。
「大丈夫ですか?」
隣にいた男性が紬希のスーツケースをターンテーブルから降ろしてくれて、そう声を掛けてくれた。
「はい。ありがとうございます」
紬希はふわりとした笑顔を向ける。
「お一人で旅行ですか?」
「あ……いいえ」
「ああ、どなたかと。彼氏ですか?」
「はい……」
「沖縄はいいですよ。楽しんで」
男性はそう言って紬希に笑いかけた。
「ありがとうございます」
スーツ姿の男性は旅行ではなくて出張なのかもしれないと紬希は思った。ゴロゴロとスーツケースを引っ張って、到着ロビーに出る。
貴堂は全員が降りてからしか出てこないはずだ。
(お茶が欲しいな……)
ロビーに出て見まわすとコンビニがあったので、紬希は入ってみた。お茶のある奥の冷蔵庫の方に向かう。
(さんぴん茶?ってなにかしら)
紬希には分からないが、冷蔵庫にはたくさん並んでいる。手ごろなものを一つ手にして、紬希はレジに向かった。
コンビニにも物珍しいものがいっぱい売っていて、なんだかわくわくしてしまう。
今日は朝から気分がふわふわしてしまって、まったく落ち着かない。今こうして沖縄にいるのもまるで夢の中にいるかのような出来事なのだ。
きっと1年前の紬希ならこんなことは考えられなかった。
緊張と浮足立ったような気分で喉が渇いてしまっていて、ロビーでお茶を飲みながら貴堂が出てくるのを待っていたら、先ほどの男性にまた、声を掛けられたのだ。
「あれ? 彼氏はまだなんですか?」
「はい。もうそろそろ……」
紬希が到着口の方を見ると自動ドアが開いて、ちょうど貴堂が出てくるところだった。
「誠一郎さん!」
「紬希、ごめんね、待ったかな?」
半袖の制服姿の貴堂が笑顔で紬希に近寄ってきた。
──誠一郎さん!カッコイイ!
紬希はうっとりしてしまう。
そして声をかけてきた男性はいつの間にか姿を消していた。
「あら?」
「ん?」
「なんだか知らない方に声を掛けられて……」
うん、それはナンパってやつだよね、という心の声を貴堂は笑顔で押し隠す。
旅行の準備もあり、このところよく二人で一緒に出掛けるようになったのだが、紬希はとにかく人目を引く。綺麗過ぎるのだ。
その割に本人にその自覚がなくて無防備なところがまた魅力になっている。
最近は貴堂と一緒にいて、外出にもだいぶ慣れて来たようではあるが、貴堂としてはその無防備なところにたまに不安を感じるのだ。
人見知りな紬希のこと、付いていくようなことはないだろうが親切っぽく声をかけられたら感じよく対応してしまう子なので、何かあっても困る。
しかし紬希と出会った当初は、透と雪真は紬希を甘やかし過ぎなのではないかと貴堂は感じた事もあった。
なのに最近は『貴堂さん、紬希を甘やかしていませんか?』と透に言われることにはちょっと戸惑う貴堂である。
──そうか?甘やかしている?いや、もっと甘やかしたいんだが……。
今日の紬希はいつもは下ろしている前髪を上げて、ハーフアップに髪をゆるく結んでいる。
マキシ丈のふわりとしたワンピースが雰囲気にとても似合っていた。
「今日は髪をあげているんだな。可愛いな」
「え……誠一郎さんも制服……とってもカッコイイです」
「大丈夫ですか?」
隣にいた男性が紬希のスーツケースをターンテーブルから降ろしてくれて、そう声を掛けてくれた。
「はい。ありがとうございます」
紬希はふわりとした笑顔を向ける。
「お一人で旅行ですか?」
「あ……いいえ」
「ああ、どなたかと。彼氏ですか?」
「はい……」
「沖縄はいいですよ。楽しんで」
男性はそう言って紬希に笑いかけた。
「ありがとうございます」
スーツ姿の男性は旅行ではなくて出張なのかもしれないと紬希は思った。ゴロゴロとスーツケースを引っ張って、到着ロビーに出る。
貴堂は全員が降りてからしか出てこないはずだ。
(お茶が欲しいな……)
ロビーに出て見まわすとコンビニがあったので、紬希は入ってみた。お茶のある奥の冷蔵庫の方に向かう。
(さんぴん茶?ってなにかしら)
紬希には分からないが、冷蔵庫にはたくさん並んでいる。手ごろなものを一つ手にして、紬希はレジに向かった。
コンビニにも物珍しいものがいっぱい売っていて、なんだかわくわくしてしまう。
今日は朝から気分がふわふわしてしまって、まったく落ち着かない。今こうして沖縄にいるのもまるで夢の中にいるかのような出来事なのだ。
きっと1年前の紬希ならこんなことは考えられなかった。
緊張と浮足立ったような気分で喉が渇いてしまっていて、ロビーでお茶を飲みながら貴堂が出てくるのを待っていたら、先ほどの男性にまた、声を掛けられたのだ。
「あれ? 彼氏はまだなんですか?」
「はい。もうそろそろ……」
紬希が到着口の方を見ると自動ドアが開いて、ちょうど貴堂が出てくるところだった。
「誠一郎さん!」
「紬希、ごめんね、待ったかな?」
半袖の制服姿の貴堂が笑顔で紬希に近寄ってきた。
──誠一郎さん!カッコイイ!
紬希はうっとりしてしまう。
そして声をかけてきた男性はいつの間にか姿を消していた。
「あら?」
「ん?」
「なんだか知らない方に声を掛けられて……」
うん、それはナンパってやつだよね、という心の声を貴堂は笑顔で押し隠す。
旅行の準備もあり、このところよく二人で一緒に出掛けるようになったのだが、紬希はとにかく人目を引く。綺麗過ぎるのだ。
その割に本人にその自覚がなくて無防備なところがまた魅力になっている。
最近は貴堂と一緒にいて、外出にもだいぶ慣れて来たようではあるが、貴堂としてはその無防備なところにたまに不安を感じるのだ。
人見知りな紬希のこと、付いていくようなことはないだろうが親切っぽく声をかけられたら感じよく対応してしまう子なので、何かあっても困る。
しかし紬希と出会った当初は、透と雪真は紬希を甘やかし過ぎなのではないかと貴堂は感じた事もあった。
なのに最近は『貴堂さん、紬希を甘やかしていませんか?』と透に言われることにはちょっと戸惑う貴堂である。
──そうか?甘やかしている?いや、もっと甘やかしたいんだが……。
今日の紬希はいつもは下ろしている前髪を上げて、ハーフアップに髪をゆるく結んでいる。
マキシ丈のふわりとしたワンピースが雰囲気にとても似合っていた。
「今日は髪をあげているんだな。可愛いな」
「え……誠一郎さんも制服……とってもカッコイイです」
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