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15.待機終了10分前に電話は鳴るものである
待機終了10分前に電話は鳴るものである⑤
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「Contact Departure MAYDAY 」(ディパーチャーにコンタクトして緊急事態を宣言して)
その貴堂の声に立花は即座に管制へ緊急事態を宣言した。
そしてエンジンからの出火と即座に旋回したいことを伝える。
緊急事態を宣言することで、今、空を飛んでいるあらゆる機体から優先されるのだ。
『Say again please』(もう一度お願いします)
さすがに管制も驚いたようで繰り返しを要求した。
「JS air 371 MAYDAY engine fire request left turn .(緊急事態、エンジン火災です。左旋回させてください)緊急事態のため今後の交信を日本語でお願いしたい」
『了解JS air 371、今後日本語で交信します。左旋回了解、方位80度』
「左旋回、方位80度」
「30秒経過、火は消えていません」
立花の声に二本目の消化剤を貴堂は使用する。
「Second bottle discharge」
「了解」
「とにかく引き返そう」
『JS air 371 いつでも9000フィートに降りてください』
「9000フィート降下、了解です。貴堂さん鎮火しました!」
「よし、チェックリストだ」
飛行機は、たとえエンジンが片方止まっても墜落することはない。しかし火災が発生している以上、本来は乗客の安全を確保するためなるべく早く着陸したいところだ。
「はい。チェックリスト、コンプリートです」
火は消えた。機体は安定している。
後は着陸するだけなのだが、問題が一つあった。
「着陸するには燃料が多すぎるな」
「はい。投棄しますか?」
パースまでの飛行時間10時間分の燃料を搭載し、まだ離陸したばかりだ。機体はかなりの燃料を積んだままの状態になっている。
着陸するには重量オーバーでこのまま着陸すると車輪や機体の他の部分が破損する可能性があり、そうなれば二次災害である。
それは防がなくてはいけない。
「現状、機体は安定している。旋回して軽くしてから着陸する」
それがベストなのは立花にも理解できた。
一刻も早く着陸したい気持ちはやまやまだが、安全に着陸できなくては意味がない。
「了解です」
「キャビンの確認をして機内放送する。You have control」(操縦を頼む)
「I have control」(操縦します)
客室内のことについては客室乗務員がいるので、彼女達についても貴堂は信頼していた。
貴堂は客室にコールする。
『はい。真木です』
落ち着いた真木の声に貴堂も安心した。
「右のエンジン火災です。コックピットの警報は消えていますがエンジンとキャビンの状況を教えてください」
真木は窓から右エンジンを覗き込んだ。先ほど一瞬大きく立ち上った炎だが、今は消えていてうっすらと煙だけがたなびいているような状況だ。
『ここからは火は消えているように見えます。煙が出ています。目立った損傷はないように見えます』
「ありがとうございます。キャビン内で煙とか異常があれば、すぐに知らせてください」
ざわついたり、席を立とうとする乗客を抑えたのは真木だ。キャプテンには操縦に集中してもらわなくては困る。
その分、客室を担当しお客様を守るのは自分たちだという自負が真木達客室乗務員にはある。
『はい』
「お客様は?」
『炎が出た時は一瞬騒ぎになりましたが、今は落ち着いています』
「引き続き、お願いします」
貴堂は機内アナウンスに切り替えた。
その貴堂の声に立花は即座に管制へ緊急事態を宣言した。
そしてエンジンからの出火と即座に旋回したいことを伝える。
緊急事態を宣言することで、今、空を飛んでいるあらゆる機体から優先されるのだ。
『Say again please』(もう一度お願いします)
さすがに管制も驚いたようで繰り返しを要求した。
「JS air 371 MAYDAY engine fire request left turn .(緊急事態、エンジン火災です。左旋回させてください)緊急事態のため今後の交信を日本語でお願いしたい」
『了解JS air 371、今後日本語で交信します。左旋回了解、方位80度』
「左旋回、方位80度」
「30秒経過、火は消えていません」
立花の声に二本目の消化剤を貴堂は使用する。
「Second bottle discharge」
「了解」
「とにかく引き返そう」
『JS air 371 いつでも9000フィートに降りてください』
「9000フィート降下、了解です。貴堂さん鎮火しました!」
「よし、チェックリストだ」
飛行機は、たとえエンジンが片方止まっても墜落することはない。しかし火災が発生している以上、本来は乗客の安全を確保するためなるべく早く着陸したいところだ。
「はい。チェックリスト、コンプリートです」
火は消えた。機体は安定している。
後は着陸するだけなのだが、問題が一つあった。
「着陸するには燃料が多すぎるな」
「はい。投棄しますか?」
パースまでの飛行時間10時間分の燃料を搭載し、まだ離陸したばかりだ。機体はかなりの燃料を積んだままの状態になっている。
着陸するには重量オーバーでこのまま着陸すると車輪や機体の他の部分が破損する可能性があり、そうなれば二次災害である。
それは防がなくてはいけない。
「現状、機体は安定している。旋回して軽くしてから着陸する」
それがベストなのは立花にも理解できた。
一刻も早く着陸したい気持ちはやまやまだが、安全に着陸できなくては意味がない。
「了解です」
「キャビンの確認をして機内放送する。You have control」(操縦を頼む)
「I have control」(操縦します)
客室内のことについては客室乗務員がいるので、彼女達についても貴堂は信頼していた。
貴堂は客室にコールする。
『はい。真木です』
落ち着いた真木の声に貴堂も安心した。
「右のエンジン火災です。コックピットの警報は消えていますがエンジンとキャビンの状況を教えてください」
真木は窓から右エンジンを覗き込んだ。先ほど一瞬大きく立ち上った炎だが、今は消えていてうっすらと煙だけがたなびいているような状況だ。
『ここからは火は消えているように見えます。煙が出ています。目立った損傷はないように見えます』
「ありがとうございます。キャビン内で煙とか異常があれば、すぐに知らせてください」
ざわついたり、席を立とうとする乗客を抑えたのは真木だ。キャプテンには操縦に集中してもらわなくては困る。
その分、客室を担当しお客様を守るのは自分たちだという自負が真木達客室乗務員にはある。
『はい』
「お客様は?」
『炎が出た時は一瞬騒ぎになりましたが、今は落ち着いています』
「引き続き、お願いします」
貴堂は機内アナウンスに切り替えた。
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