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11.海を飛ぶペンギン
海を飛ぶペンギン④
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音楽に合わせてイルカが何度もジャンプしたり、何頭かで交差する動きを見せたりするのに、二人ではしゃいだり拍手したりして楽しんだのだった。
「はー、カッコよかったですねぇ、イルカのくーちゃん」
「え? 可愛いじゃなくて? カッコいいの?」
「カッコよかったですよ! 最初は可愛いらしいなって思いましたけど、あんなジャンプしたり、賢いし、カッコよかったです」
「僕はまだ紬希にカッコいいところを見てもらってない。機会があったら是非見てほしいんだけど」
「え……」
イルカのカッコ良さを語っていて、なぜそんな流れになるのか紬希には理解出来なかったけれど、貴堂が首を傾げるのに紬希は貴堂の服の袖をそっと掴んだ。
「ん?」
「あの、貴堂さんは素敵ですけど、もっとってことですか?」
「そう! もっと、もっとだよ」
そう言って、貴堂は紬希にとても爽やかな笑顔を向けたのだった。
──どうしよう。これ以上カッコいいところを見せられたら困ってしまうかも。
けれど、そんな風に貴堂が笑顔を見せてくれることに、紬希は間違いなく心が温かくなって幸せな気持ちになったのだった。
ひとしきり水族館の中を見て回った二人は、外に出る。
「紬希、あれに乗ってみない?」
そう言って貴堂が指差したのは、大きな観覧車だった。
ドアが閉まり、ゴンドラがゆっくりと上昇してゆく。
最初は揺れも気になっていたけれど、紬希は窓の外の景色に次第に夢中になっていった。
そうして、目の前の貴堂がじいっと紬希を見ていることに気づく。
「貴堂さん。今日はありがとうございます」
そう言って、紬希は頭を下げた。
「楽しかった?」
「はい。とても」
けれどそれ以上に紬希が嬉しかったのはたくさん貴堂のことを知れたことだった。
水族館の水槽を見ながらたくさんの話が出来たことも嬉しかったし、また、たくさん貴堂の優しさを知れたことも嬉しかった。
貴堂のおかげで怖いなんて思うことはなかったのだ。
場所も貴堂は紬希が怖がらなくても済むようにと考えてくれて、少しでも人の多い時は必ず手を繋いでくれて、人混みからかばうようにしてくれた時もあった。
「こちらこそありがとう」
貴堂は紬希にそう伝える。
「え?」
「苦手だと言っていたのに連れ出してしまって、大丈夫かと思っていた。けれど君はとても楽しそうで、すごく幸せな気持ちになったよ」
「本当に……楽しかったです」
「紬希……」
向かいに座っている紬希の手を貴堂がそっと握る。そうして、紬希の頬に触れた。
紬希はじいっと貴堂を見返している。
すり……とその手に甘えるように擦り寄る仕草を見て、貴堂はその顎をそっと持ち上げた。
ゆっくり顔を近づけて軽く唇を重ねる。
紬希の琥珀のように綺麗な瞳が見開かれて、じっと貴堂を見ていた。
「また、二人でどこかに行こう」
「……はい」
「はー、カッコよかったですねぇ、イルカのくーちゃん」
「え? 可愛いじゃなくて? カッコいいの?」
「カッコよかったですよ! 最初は可愛いらしいなって思いましたけど、あんなジャンプしたり、賢いし、カッコよかったです」
「僕はまだ紬希にカッコいいところを見てもらってない。機会があったら是非見てほしいんだけど」
「え……」
イルカのカッコ良さを語っていて、なぜそんな流れになるのか紬希には理解出来なかったけれど、貴堂が首を傾げるのに紬希は貴堂の服の袖をそっと掴んだ。
「ん?」
「あの、貴堂さんは素敵ですけど、もっとってことですか?」
「そう! もっと、もっとだよ」
そう言って、貴堂は紬希にとても爽やかな笑顔を向けたのだった。
──どうしよう。これ以上カッコいいところを見せられたら困ってしまうかも。
けれど、そんな風に貴堂が笑顔を見せてくれることに、紬希は間違いなく心が温かくなって幸せな気持ちになったのだった。
ひとしきり水族館の中を見て回った二人は、外に出る。
「紬希、あれに乗ってみない?」
そう言って貴堂が指差したのは、大きな観覧車だった。
ドアが閉まり、ゴンドラがゆっくりと上昇してゆく。
最初は揺れも気になっていたけれど、紬希は窓の外の景色に次第に夢中になっていった。
そうして、目の前の貴堂がじいっと紬希を見ていることに気づく。
「貴堂さん。今日はありがとうございます」
そう言って、紬希は頭を下げた。
「楽しかった?」
「はい。とても」
けれどそれ以上に紬希が嬉しかったのはたくさん貴堂のことを知れたことだった。
水族館の水槽を見ながらたくさんの話が出来たことも嬉しかったし、また、たくさん貴堂の優しさを知れたことも嬉しかった。
貴堂のおかげで怖いなんて思うことはなかったのだ。
場所も貴堂は紬希が怖がらなくても済むようにと考えてくれて、少しでも人の多い時は必ず手を繋いでくれて、人混みからかばうようにしてくれた時もあった。
「こちらこそありがとう」
貴堂は紬希にそう伝える。
「え?」
「苦手だと言っていたのに連れ出してしまって、大丈夫かと思っていた。けれど君はとても楽しそうで、すごく幸せな気持ちになったよ」
「本当に……楽しかったです」
「紬希……」
向かいに座っている紬希の手を貴堂がそっと握る。そうして、紬希の頬に触れた。
紬希はじいっと貴堂を見返している。
すり……とその手に甘えるように擦り寄る仕草を見て、貴堂はその顎をそっと持ち上げた。
ゆっくり顔を近づけて軽く唇を重ねる。
紬希の琥珀のように綺麗な瞳が見開かれて、じっと貴堂を見ていた。
「また、二人でどこかに行こう」
「……はい」
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