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8.ここにいなくてもあなたを思う
ここにいなくてもあなたを思う②
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こんな風に真っ直ぐに気持ちをぶつけられることに紬希は慣れていないけれど、貴堂のそれは不快なものではなかった。
会いたいと真っ直ぐ言われることがこんなに胸をぎゅっとつかまれるような気持ちになるものだと紬希は思わなかった。
紬希は困ったときは自分の心に問いかけることにしている。
会いたいと言ってくれた貴堂に対するその答えは、嬉しい、自分も同じ気持ちだということだった。
「貴堂さん、私も会いたいです」
はっきりと言うことは恥ずかしくてとても小さな声になってしまう。
電話口の向こうが一瞬しん、としたので紬希はなんだかどきどきしてきてしまった。
(なにかおかしなことを言ってしまった?)
『今すぐ会いたい……』
紬希はその声にびくんとした。それはとても甘く低く紬希の耳に響いたから。
「……っあ、あの……!」
『ごめん。困らせたね』
困ったのは確かだけれど嫌な気持ちではないというのは……。
紬希はそれをうまく伝える術を知らなかった。
でも誤解はしないでほしい。
そんな気持ちでいっぱいになる。
「あの……私待ってますから。お気をつけて行ってらして下さい」
もっとたくさん伝えたい気持ちがあるような気がするけれど、今の紬希に伝えられるのはそれが精一杯だった。
『ありがとう。行ってきます』
貴堂の晴々とした声が紬希には嬉しかった。
交際してほしいと言われて、それから貴堂は宣言通り誠意をみせてくれているし、それを紬希もとても感じる。
貴堂に真っ直ぐな気持ちをぶつけられても不快感や怖い気持ちは一切ない。
それは気持ちと行動が一致しているからだろう。
前の会社の人の時は紬希のことなど気にしていないと言いながら、時折舐めるように見られるのがとても苦手だった。
貴堂は真っ直ぐに紬希を見て、会いたいとハッキリ言ってくれてそこに乖離はない。
だから、信頼できる人なのだと紬希は思う。
貴堂が示してくれている一つ一つの行動がこの前言っていた『信頼関係が安心感を強め、心の共鳴や理解を促進し、関係性が強固になるという効果を生む』ということに繋がっている。
紬希はそれまで自分が誰かと交際することなど考えたことがなかった。そんなことはもうずっとないんだろうと思っていた。
けれど、こんな風に示してくれる貴堂をとても尊敬するし、信頼している。
時折胸がきゅっとしたり、ふわふわしたりするし、頬が熱くなって困ることもあるけれど……。
紬希はそうっとため息をつく。
──貴堂さんはどうしてあんなにお声まで素敵なのかしら。
携帯をリビングテーブルに置いた貴堂はふーっと大きなため息をつく。
採寸のあと、紬希を連れて公園にランチに行った時から……いや、そうではない。
あの空港のデッキで風をまとわせる紬希を見てからだ。あの綺麗な瞳で雪真を見ていたのを見たときからだ。
今の自分の全部をかけて紬希がほしいと思ったし、少しでも傾けてもらえる気持ちがあるのならそれを自分に向けてほしい。
こんな感情を自分が持つことになるなんて貴堂は思わなかった。
会えば会うだけ、触れ合えば触れ合うだけ、紬希が欲しくなる。
会いたいと真っ直ぐ言われることがこんなに胸をぎゅっとつかまれるような気持ちになるものだと紬希は思わなかった。
紬希は困ったときは自分の心に問いかけることにしている。
会いたいと言ってくれた貴堂に対するその答えは、嬉しい、自分も同じ気持ちだということだった。
「貴堂さん、私も会いたいです」
はっきりと言うことは恥ずかしくてとても小さな声になってしまう。
電話口の向こうが一瞬しん、としたので紬希はなんだかどきどきしてきてしまった。
(なにかおかしなことを言ってしまった?)
『今すぐ会いたい……』
紬希はその声にびくんとした。それはとても甘く低く紬希の耳に響いたから。
「……っあ、あの……!」
『ごめん。困らせたね』
困ったのは確かだけれど嫌な気持ちではないというのは……。
紬希はそれをうまく伝える術を知らなかった。
でも誤解はしないでほしい。
そんな気持ちでいっぱいになる。
「あの……私待ってますから。お気をつけて行ってらして下さい」
もっとたくさん伝えたい気持ちがあるような気がするけれど、今の紬希に伝えられるのはそれが精一杯だった。
『ありがとう。行ってきます』
貴堂の晴々とした声が紬希には嬉しかった。
交際してほしいと言われて、それから貴堂は宣言通り誠意をみせてくれているし、それを紬希もとても感じる。
貴堂に真っ直ぐな気持ちをぶつけられても不快感や怖い気持ちは一切ない。
それは気持ちと行動が一致しているからだろう。
前の会社の人の時は紬希のことなど気にしていないと言いながら、時折舐めるように見られるのがとても苦手だった。
貴堂は真っ直ぐに紬希を見て、会いたいとハッキリ言ってくれてそこに乖離はない。
だから、信頼できる人なのだと紬希は思う。
貴堂が示してくれている一つ一つの行動がこの前言っていた『信頼関係が安心感を強め、心の共鳴や理解を促進し、関係性が強固になるという効果を生む』ということに繋がっている。
紬希はそれまで自分が誰かと交際することなど考えたことがなかった。そんなことはもうずっとないんだろうと思っていた。
けれど、こんな風に示してくれる貴堂をとても尊敬するし、信頼している。
時折胸がきゅっとしたり、ふわふわしたりするし、頬が熱くなって困ることもあるけれど……。
紬希はそうっとため息をつく。
──貴堂さんはどうしてあんなにお声まで素敵なのかしら。
携帯をリビングテーブルに置いた貴堂はふーっと大きなため息をつく。
採寸のあと、紬希を連れて公園にランチに行った時から……いや、そうではない。
あの空港のデッキで風をまとわせる紬希を見てからだ。あの綺麗な瞳で雪真を見ていたのを見たときからだ。
今の自分の全部をかけて紬希がほしいと思ったし、少しでも傾けてもらえる気持ちがあるのならそれを自分に向けてほしい。
こんな感情を自分が持つことになるなんて貴堂は思わなかった。
会えば会うだけ、触れ合えば触れ合うだけ、紬希が欲しくなる。
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