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馬車の事故に遭った姫様とトリシュだけど、街に行くために徒歩か馬車かどっちが良い?と問えば2人揃って馬車と答えた。
うん、トラウマとかになってなくて安心したよ。
ならもう1つ聞きたいことがある。
「姫様、今から街に行って買い物しようと思うんだけどさ」
なにか欲しい物があるんだったら先に言ってーとか、レッドドラゴンは留守番だからねーってことでもなくて。
「金銭の問題か?」
そうでもなくて!
「俺が払うから支払いは気にしなくて良いよ!じゃなくて、服装!ドレスじゃなくて動きやすい服装で行こう」
俺は見慣れてるから良いんだけど、始めて見る人なら3度見はすると思うんだよね……でもなくてだ。
姫様は兄さんと同じように命を狙われている可能性が高いから、姫様ってのが丸分かりなドレスは避けた方が良いと思ってさ。
後、ドレスじゃあイザって時に全力疾走できないだろうから。
「……分かりました……着替えてまいりますので少しお待ちください」
礼をした姫様は、護衛騎士のトリシュだけを従えて帰ろうとするから、慌てて呼び止めた。
「待って、俺も着替えと馬車を準備するため屋敷に帰るんだ。一緒に帰ろ」
一応、森から屋敷までの道中も危ないかもしれないからな……だとすると、姫様には会いに来るなって言っとかないと駄目なんだろうけど、それって物凄く狭いんじゃないかなって思うから言い難い。
屋敷では寛げないのに、外出も駄目とか鬼じゃん?
庭はあるけど庭師と薬師が協力し合って薬草育ててるから、俺ですら行ったら迷惑そうな顔されるんだよ。
食堂にしたって、お菓子あげるから早く帰りなさいね~って子供扱いだしさ。
だよなぁ……。
そんな俺の妻として屋敷にいる姫様が、寛げないのは当然だ。
ソファーとかベッドが合わないわけではなくて、屋敷の居心地が悪いんだな。
「小侯爵様、発言をお許しください」
昼間は騎士達に森の見回りを任せて屋敷にいようかな?とか考えていると、トリシュが必要以上に丁寧な礼をして話しかけてきた。
発言をお許しって……こんなの始めて言われたわ。
「な、なにかな?」
「……いえ、やはりなんでもありません」
なにそれ!?
え?受け答えが駄目だったとか?
かなり気になるから言って欲しいし、もしかしたらその質問から話しやすくなって、もう少しは気安く話せるようになるかもしれないし……。
いや、ちょっと待てよ?
姫様は今から屋敷に着替えに戻って、トリシュは姫様の護衛騎士だから一緒に戻るのはまぁ自然だ。
だけど、理由もなくついて行こうとする俺は、姫様の着替えを覗こうとする変質者的な感じに映ったのでは?
「ち、違うからな!着替えを見ようとか思ってないし!馬車だし!なんなら俺も着替えるし!」
慌てて弁解するも、自分で分かる。
これでは逆効果だと。
「あぁ……そういう……。良いですよ。夫婦となるのです、着替えくらいなにを恥ずかしがることがありましょう」
違う!
思い切りが良いな!
少しは恥ずかしがって!?
兄さんに悪いわ!
「ひとりで着替えてください!」
姫様は兄さんのことが好きなくせしてなに言ってんだよ……って、もしかして揶揄われただけ、とか?
いや、そもそも俺は着替えを覗こうとか一切思ってなかったし一緒に着替えようとかも思いつきさえしなかった。
それなのになにを焦ったんだよ。
「ふふっ、アイン様もおひとりでお着換えください」
ちくしょう。
よし、ここはとりあえず早急に落ち着いて、今の会話全てそっくりそのままなかったことにしよう。
「ゴホン!着替えって1時間くらいで大丈夫そう?」
ドレスからドレスに着替えるんなら時間はかなりかかりそうだけど、ドレスを脱いで楽な格好なら、どうだろうな……1時間なら馬車を用意して点検しても時間が余る位かな。
万が一攻撃されても大丈夫なように馬車に防御魔法をかけてー……て、かっすかすな俺の魔力でかけられる防御魔法なんぞ、ちょっとした段差で馬車が跳ねただけで無意味なものになるけどさ!
昼間は屋敷で魔力の訓練をしようかな……。
「そうですね、では1時間で準備を整えます」
あ、この聞き方じゃあ焦らせてしまっただろうか?
いや、折角1時間で用意してくれるって言ってくれたんだから、いちいち覆すのは止めておこう。それに、どれだけ遅れて来たって夜にならない限りは待ってるから。
「じゃあ屋敷に戻ってから1時間後にエントランスにある花瓶の前で待ち合わせな!」
「花瓶……」
「フフフ……」
ん?
なんかへんなこと言った?
うん、トラウマとかになってなくて安心したよ。
ならもう1つ聞きたいことがある。
「姫様、今から街に行って買い物しようと思うんだけどさ」
なにか欲しい物があるんだったら先に言ってーとか、レッドドラゴンは留守番だからねーってことでもなくて。
「金銭の問題か?」
そうでもなくて!
「俺が払うから支払いは気にしなくて良いよ!じゃなくて、服装!ドレスじゃなくて動きやすい服装で行こう」
俺は見慣れてるから良いんだけど、始めて見る人なら3度見はすると思うんだよね……でもなくてだ。
姫様は兄さんと同じように命を狙われている可能性が高いから、姫様ってのが丸分かりなドレスは避けた方が良いと思ってさ。
後、ドレスじゃあイザって時に全力疾走できないだろうから。
「……分かりました……着替えてまいりますので少しお待ちください」
礼をした姫様は、護衛騎士のトリシュだけを従えて帰ろうとするから、慌てて呼び止めた。
「待って、俺も着替えと馬車を準備するため屋敷に帰るんだ。一緒に帰ろ」
一応、森から屋敷までの道中も危ないかもしれないからな……だとすると、姫様には会いに来るなって言っとかないと駄目なんだろうけど、それって物凄く狭いんじゃないかなって思うから言い難い。
屋敷では寛げないのに、外出も駄目とか鬼じゃん?
庭はあるけど庭師と薬師が協力し合って薬草育ててるから、俺ですら行ったら迷惑そうな顔されるんだよ。
食堂にしたって、お菓子あげるから早く帰りなさいね~って子供扱いだしさ。
だよなぁ……。
そんな俺の妻として屋敷にいる姫様が、寛げないのは当然だ。
ソファーとかベッドが合わないわけではなくて、屋敷の居心地が悪いんだな。
「小侯爵様、発言をお許しください」
昼間は騎士達に森の見回りを任せて屋敷にいようかな?とか考えていると、トリシュが必要以上に丁寧な礼をして話しかけてきた。
発言をお許しって……こんなの始めて言われたわ。
「な、なにかな?」
「……いえ、やはりなんでもありません」
なにそれ!?
え?受け答えが駄目だったとか?
かなり気になるから言って欲しいし、もしかしたらその質問から話しやすくなって、もう少しは気安く話せるようになるかもしれないし……。
いや、ちょっと待てよ?
姫様は今から屋敷に着替えに戻って、トリシュは姫様の護衛騎士だから一緒に戻るのはまぁ自然だ。
だけど、理由もなくついて行こうとする俺は、姫様の着替えを覗こうとする変質者的な感じに映ったのでは?
「ち、違うからな!着替えを見ようとか思ってないし!馬車だし!なんなら俺も着替えるし!」
慌てて弁解するも、自分で分かる。
これでは逆効果だと。
「あぁ……そういう……。良いですよ。夫婦となるのです、着替えくらいなにを恥ずかしがることがありましょう」
違う!
思い切りが良いな!
少しは恥ずかしがって!?
兄さんに悪いわ!
「ひとりで着替えてください!」
姫様は兄さんのことが好きなくせしてなに言ってんだよ……って、もしかして揶揄われただけ、とか?
いや、そもそも俺は着替えを覗こうとか一切思ってなかったし一緒に着替えようとかも思いつきさえしなかった。
それなのになにを焦ったんだよ。
「ふふっ、アイン様もおひとりでお着換えください」
ちくしょう。
よし、ここはとりあえず早急に落ち着いて、今の会話全てそっくりそのままなかったことにしよう。
「ゴホン!着替えって1時間くらいで大丈夫そう?」
ドレスからドレスに着替えるんなら時間はかなりかかりそうだけど、ドレスを脱いで楽な格好なら、どうだろうな……1時間なら馬車を用意して点検しても時間が余る位かな。
万が一攻撃されても大丈夫なように馬車に防御魔法をかけてー……て、かっすかすな俺の魔力でかけられる防御魔法なんぞ、ちょっとした段差で馬車が跳ねただけで無意味なものになるけどさ!
昼間は屋敷で魔力の訓練をしようかな……。
「そうですね、では1時間で準備を整えます」
あ、この聞き方じゃあ焦らせてしまっただろうか?
いや、折角1時間で用意してくれるって言ってくれたんだから、いちいち覆すのは止めておこう。それに、どれだけ遅れて来たって夜にならない限りは待ってるから。
「じゃあ屋敷に戻ってから1時間後にエントランスにある花瓶の前で待ち合わせな!」
「花瓶……」
「フフフ……」
ん?
なんかへんなこと言った?
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