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第百一話
あーもう、どうすりゃいいんだ!?・後半
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そもそも洞察力も何も、落ち着いて考えたら誰にでも推測出来る事だし。もしかして皮肉か? しかしダニエルといいコイツといい、王太子殿下の崇拝者とやらは過激派が多いのか? その対象が何であれ、ファンの中には一定数過激派というものは出てくるものだけれど、王太子殿下にそれが多いのは何となく分かる気がする。彼の魅力は人を惑わせ、狂気へと誘うところがあるから……。
と、そんな事を考えている場合じゃない。目の前の男が、やたら挑発的な眼差しで見ているんだ。で、続けて何かを言うのかと身構えていると……何も言わない。何なんだよ、全く。なんだかダニエルと話してからというもの、この台詞が増えてる気がする。もう面倒だ、俺から切り出してサッサと会話を終わらせよう。
「何か……」
「それでは、私が何をお伝えしたいのか。その内容については如何ですか?」
俺が口を開くと同時に、ハロルドも口を開いた。それもかなり好戦的に。何だかなぁ、コイツも面倒そうだなぁ。
「さぁ、内容まではわかりかねますけど。差し当たっては私の風評に関して何か耳にした、というところでしょうか?」
そのまま答えた。思えば、エリックが『ダニエルとハロルドは特に王太子殿下を崇拝しているから、その内風評に関して御小言があるかも』なんてわざわざ言ってきたのは、恐らく何らかの形で王太子殿下にとってマイナスとなる風評を見聞きしたのだろうと思う。
「なるほど、そこまで感じてらっしゃるのでしたら思い切ってお伝え致しましょう」
おいおい、さも勿体ぶっているが、本当は言いたくて仕方なかったんだろう? と内心では突っ込みながら、表面上は神妙に頷いて見せる。
「私ども王太子殿下にお仕えする者は、当然王太子殿下に忠誠を誓うものではございますが、それが側近ともなればもう少し先を見越してお仕えするものでございます」
うん、それはそうだろうな。立場的にも。
「つまりは、王太子殿下にとって不利益を被る事を事前に排除、また起こってしまったら速やかに取り除く、と言う事が不可欠なのでございます」
うんうん、分かるよ。それにしても、案外よくしゃべる奴だったんだな。それとも王太子殿下に関する事だから特別に饒舌になるのかな。静かに相槌を打ちながら耳を傾ける。やはり、匿名チャンネルに書かれたような内容の噂が広まってるのだろうか。
「大変言いにくいのでございますが……」
いや、十分ベラベラしゃべってるって。ダニエルは、話している内に怒りを放出していたけど、この彼の場合は口を開いたら『立板に水』て感じだよなぁ。
「近頃、王太子殿下にとってマイナスになるような噂、何度かを耳にしてしまいまして」
「それは、どのような?」
「はい。王太子殿下はラディウス様の恋人を奪って愛人として囲っている、とか……」
「え?」
書き込みよりヒデェ……
「王太子殿下は惟光の色仕掛けにやられて腑抜けになってしまわれた、とか」
「まさか! 馬鹿げた噂です」
何だよそれ、経国の美女でもあるまいし。適当な事ばかり……典型的な噂の特徴じゃないか。
「事実はどうあれ、国民がそう感じてしまう事が問題なのです!」
「それは確かに……」
「ええ、ですから惟光様には賢明なご決断をして頂くべきかと存じまする」
お! 一気に畳み込んできたな! よし、聞いてみよう。
「分かりました、では、どうしたら良いのか御意見をお聞かせてくださいますか?」
「はっきり申し上げましょう。戴冠式も欠席して頂きたい。更には、王太子殿下のお誘いも丁重にお断りし即刻ラディウス様の元へお帰り頂く事をお勧めします」
うーん……これは、何とも言えないよなぁ。
「それは、最も無難な解決法かと思いますが、戴冠式に出席すると王太子殿下にお答えしてしまいましたし。何よりも、療養をさせて頂いているだけでその……あ、愛人だなんて! 滅相もございません」
とハッキリ答えた。だって戴冠式を欠席する方が失礼だし。それに愛人だなんて。俺も困るけど王太子殿下だって嫌だろうよ。それに、王太子殿下のお誘いなんか断れる訳ないだろう? それこそ何様のつもりだ、て話になる。
「ええ、ですから戴冠式に体調不良で当日欠席。今後王太子殿下からお誘いがある前にラディウス様の元に帰りたい、と申し出て頂けましたら。王太子殿下はこれから国王になられます。お世継ぎの為に正妻と愛人を正式に決めなければなりません。それすら決まっていない内から、愛人だ略奪だ、などと噂になるのは困るのですよ。聡明なあなたなら分かりますよね?」
と勘弁してくれ、というようにハロルドは肩をすくめた。
「……つまり、全てを引き受け黙って身を引け、と?」
「ええ。それが王太子殿下の、そして惟光様自身にとってもベストかと」
「……でも、それは……」
理屈は分かる。全てを呑み込んで独りで背追い、辞退する事で幕を引け、て事だ。だけどそれは、無期限延長とか引っかかる部分はあるけれど、ラディウス王子にも筋道を立てた王太子殿下に失礼だし、第一愛人も何もそんな関係じゃないし。そんな一方的な事俺はともかく王太子殿下に失礼過ぎるじゃないか!
不意に、王太子殿下の寂しそうな横顔が浮かんだ。……あーもう、どうすりゃいいんだ!?
と、そんな事を考えている場合じゃない。目の前の男が、やたら挑発的な眼差しで見ているんだ。で、続けて何かを言うのかと身構えていると……何も言わない。何なんだよ、全く。なんだかダニエルと話してからというもの、この台詞が増えてる気がする。もう面倒だ、俺から切り出してサッサと会話を終わらせよう。
「何か……」
「それでは、私が何をお伝えしたいのか。その内容については如何ですか?」
俺が口を開くと同時に、ハロルドも口を開いた。それもかなり好戦的に。何だかなぁ、コイツも面倒そうだなぁ。
「さぁ、内容まではわかりかねますけど。差し当たっては私の風評に関して何か耳にした、というところでしょうか?」
そのまま答えた。思えば、エリックが『ダニエルとハロルドは特に王太子殿下を崇拝しているから、その内風評に関して御小言があるかも』なんてわざわざ言ってきたのは、恐らく何らかの形で王太子殿下にとってマイナスとなる風評を見聞きしたのだろうと思う。
「なるほど、そこまで感じてらっしゃるのでしたら思い切ってお伝え致しましょう」
おいおい、さも勿体ぶっているが、本当は言いたくて仕方なかったんだろう? と内心では突っ込みながら、表面上は神妙に頷いて見せる。
「私ども王太子殿下にお仕えする者は、当然王太子殿下に忠誠を誓うものではございますが、それが側近ともなればもう少し先を見越してお仕えするものでございます」
うん、それはそうだろうな。立場的にも。
「つまりは、王太子殿下にとって不利益を被る事を事前に排除、また起こってしまったら速やかに取り除く、と言う事が不可欠なのでございます」
うんうん、分かるよ。それにしても、案外よくしゃべる奴だったんだな。それとも王太子殿下に関する事だから特別に饒舌になるのかな。静かに相槌を打ちながら耳を傾ける。やはり、匿名チャンネルに書かれたような内容の噂が広まってるのだろうか。
「大変言いにくいのでございますが……」
いや、十分ベラベラしゃべってるって。ダニエルは、話している内に怒りを放出していたけど、この彼の場合は口を開いたら『立板に水』て感じだよなぁ。
「近頃、王太子殿下にとってマイナスになるような噂、何度かを耳にしてしまいまして」
「それは、どのような?」
「はい。王太子殿下はラディウス様の恋人を奪って愛人として囲っている、とか……」
「え?」
書き込みよりヒデェ……
「王太子殿下は惟光の色仕掛けにやられて腑抜けになってしまわれた、とか」
「まさか! 馬鹿げた噂です」
何だよそれ、経国の美女でもあるまいし。適当な事ばかり……典型的な噂の特徴じゃないか。
「事実はどうあれ、国民がそう感じてしまう事が問題なのです!」
「それは確かに……」
「ええ、ですから惟光様には賢明なご決断をして頂くべきかと存じまする」
お! 一気に畳み込んできたな! よし、聞いてみよう。
「分かりました、では、どうしたら良いのか御意見をお聞かせてくださいますか?」
「はっきり申し上げましょう。戴冠式も欠席して頂きたい。更には、王太子殿下のお誘いも丁重にお断りし即刻ラディウス様の元へお帰り頂く事をお勧めします」
うーん……これは、何とも言えないよなぁ。
「それは、最も無難な解決法かと思いますが、戴冠式に出席すると王太子殿下にお答えしてしまいましたし。何よりも、療養をさせて頂いているだけでその……あ、愛人だなんて! 滅相もございません」
とハッキリ答えた。だって戴冠式を欠席する方が失礼だし。それに愛人だなんて。俺も困るけど王太子殿下だって嫌だろうよ。それに、王太子殿下のお誘いなんか断れる訳ないだろう? それこそ何様のつもりだ、て話になる。
「ええ、ですから戴冠式に体調不良で当日欠席。今後王太子殿下からお誘いがある前にラディウス様の元に帰りたい、と申し出て頂けましたら。王太子殿下はこれから国王になられます。お世継ぎの為に正妻と愛人を正式に決めなければなりません。それすら決まっていない内から、愛人だ略奪だ、などと噂になるのは困るのですよ。聡明なあなたなら分かりますよね?」
と勘弁してくれ、というようにハロルドは肩をすくめた。
「……つまり、全てを引き受け黙って身を引け、と?」
「ええ。それが王太子殿下の、そして惟光様自身にとってもベストかと」
「……でも、それは……」
理屈は分かる。全てを呑み込んで独りで背追い、辞退する事で幕を引け、て事だ。だけどそれは、無期限延長とか引っかかる部分はあるけれど、ラディウス王子にも筋道を立てた王太子殿下に失礼だし、第一愛人も何もそんな関係じゃないし。そんな一方的な事俺はともかく王太子殿下に失礼過ぎるじゃないか!
不意に、王太子殿下の寂しそうな横顔が浮かんだ。……あーもう、どうすりゃいいんだ!?
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