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第百二話
取りあえずの決断!
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えーと、うーん……どうしよう? いや、待て待て、落ち着け自分。確かにハロルドの意見は正論だけど……あくまで理想論、というか机上の空論に近い。うーん、これは今すぐに決断する事じゃないぞ! 俺が今すぐラディウス王子のところへ帰ったとしても、だ。そうしたらそれはそれで、
『自分勝手な自惚れ』『王太子殿下の顔に泥を塗った』『意味不明の危ない奴』……だのなんだの、枚挙に暇が無いほどに噂と言う名の陰口が広まるに決まってるんだ。これはもう気にしても仕方無い。色々気にし過ぎるから決断出来なくてウジウジウジウジ……その結果、『優柔不断』とか『女々しい』とか『八方美人』とか、自他共に認めるような結果になっていた訳で。それに、何だか色々と面倒になって来た。
さぁ、腹を括れ開き直れ自分! 誰がどうとか、こうしたら誰に迷惑とか、もうーーーーーー考えねーぞ! 俺自身が、どうしたいかだ!
姿勢を正し、ハロルドを真っすぐに見つめた。彼は少しだけ意外そうに目を見開くと、半ば威圧するように睨みつけた。ほう、ついに本性を表したな。言う通りにしろってか? 嫌なこった。
「その意見は一見正論だけど、俺の一存で今すぐには決め兼ねる」
と、ハッキリと答えた。すると奴は、「はぁ?」と眉をしかめて呆れたように俺を見た。何だかなぁ、まぁ、コイツから見たら『何でこんなモブに俺様が……』ていうところなんだろうけど。まぁ、気もちは分からなくもないが、それとこれとは別だ。
「では、どうなさるおつもりです?」
奴は吐き出すように問いかけた。
「もう少し状況を見てからだな。どの道俺の一存でじゃ決められないから、何も答えられない。色々熟考えた上で俺自身が結論を出すよ。と、いう事でこの話はもうおしまいだ」
と、空気を変えるようにして立ち上がった。そのまま入り口に向かい、ドアノブに右手をかける。そう、早く出て行ってくれ、という意思表示だ。これ以上話しても平行線のままだ。ハロルドは驚いて目を見開いた。呆気にとられて口をポカンと開いている。コイツの幼い時は、きっと表情豊かで無邪気だったんだろうと少しだけ想像出来た。
だけど奴は、ものの十数秒ほどで元のツンとしたすまし顔に戻る。
「……承知しました。今日のところは下がります。ですが、王太子殿下に取ってマイナスにしかならないようでしたら、容赦は致しませんのでお忘れなく」
と冷たく釘を差すと、スタスタと入り口に向かった。何か抜けてるよ、何か変だ。そうだ、分かった! これは、一言言っておくべきだろう。
「余計な事だろうけど……」
奴とすれ違いざま、声をかける。
「王太子殿下の為と言うのはよく分かるし、当然だとは思う。だけどそれ、王太子殿下に相談しながらの方が良いと思うぞ。特に、俺みたいに半端モノが関わる事なら余計にな」
「何故そのような?」
奴に睨みつけられても、軽く受け流す。
「だって、今までに前例が無いだろう?」
そう、だからこそ、側近たちが勝手に判断して事を進めない方が良いと思うんだ。だってこれじゃぁ、王太子殿下が蚊帳の外じゃないか。高貴な御方だからそれで良い、て言われたらそれまでだけどさ。
「あなたに言われる筋合いはございません。余計な事です。王太子殿下に目をかけられているからと、いい気ならないで頂きたい!」
激しい口調だ。漸く出たな、本音が。
「そう見えたなら、すまない。自重するよ」
出来るだけ穏やかに答えた。奴は怒りで充血した眼差しで俺に一瞥をくれると、僅かに開けたドアの隙間に手を伸ばし、荒々しく部屋を後にした。
何だかなぁ。一気にくたびれたぜ……。ドアを閉めようとしたその時、
「あ、あのー……」
遠慮がちに声をかけられた。驚いて振り向くと、俺と同じくらいの背丈の紺色の軍服姿の男が立っていた。サラサラとした栗色の髪を顎のラインで切り揃え、乳白色の肌に淡い桃色の繊細な唇を持つ、女と見紛うばかりに美しい青年、四天王の内南を司るオ-ガストだ。
「すみません、お言付けがございまして参ったのですが、お取り込み中のようでしたので……」
彼は気拙そうにチョコレート色の瞳を潤ませた。
『自分勝手な自惚れ』『王太子殿下の顔に泥を塗った』『意味不明の危ない奴』……だのなんだの、枚挙に暇が無いほどに噂と言う名の陰口が広まるに決まってるんだ。これはもう気にしても仕方無い。色々気にし過ぎるから決断出来なくてウジウジウジウジ……その結果、『優柔不断』とか『女々しい』とか『八方美人』とか、自他共に認めるような結果になっていた訳で。それに、何だか色々と面倒になって来た。
さぁ、腹を括れ開き直れ自分! 誰がどうとか、こうしたら誰に迷惑とか、もうーーーーーー考えねーぞ! 俺自身が、どうしたいかだ!
姿勢を正し、ハロルドを真っすぐに見つめた。彼は少しだけ意外そうに目を見開くと、半ば威圧するように睨みつけた。ほう、ついに本性を表したな。言う通りにしろってか? 嫌なこった。
「その意見は一見正論だけど、俺の一存で今すぐには決め兼ねる」
と、ハッキリと答えた。すると奴は、「はぁ?」と眉をしかめて呆れたように俺を見た。何だかなぁ、まぁ、コイツから見たら『何でこんなモブに俺様が……』ていうところなんだろうけど。まぁ、気もちは分からなくもないが、それとこれとは別だ。
「では、どうなさるおつもりです?」
奴は吐き出すように問いかけた。
「もう少し状況を見てからだな。どの道俺の一存でじゃ決められないから、何も答えられない。色々熟考えた上で俺自身が結論を出すよ。と、いう事でこの話はもうおしまいだ」
と、空気を変えるようにして立ち上がった。そのまま入り口に向かい、ドアノブに右手をかける。そう、早く出て行ってくれ、という意思表示だ。これ以上話しても平行線のままだ。ハロルドは驚いて目を見開いた。呆気にとられて口をポカンと開いている。コイツの幼い時は、きっと表情豊かで無邪気だったんだろうと少しだけ想像出来た。
だけど奴は、ものの十数秒ほどで元のツンとしたすまし顔に戻る。
「……承知しました。今日のところは下がります。ですが、王太子殿下に取ってマイナスにしかならないようでしたら、容赦は致しませんのでお忘れなく」
と冷たく釘を差すと、スタスタと入り口に向かった。何か抜けてるよ、何か変だ。そうだ、分かった! これは、一言言っておくべきだろう。
「余計な事だろうけど……」
奴とすれ違いざま、声をかける。
「王太子殿下の為と言うのはよく分かるし、当然だとは思う。だけどそれ、王太子殿下に相談しながらの方が良いと思うぞ。特に、俺みたいに半端モノが関わる事なら余計にな」
「何故そのような?」
奴に睨みつけられても、軽く受け流す。
「だって、今までに前例が無いだろう?」
そう、だからこそ、側近たちが勝手に判断して事を進めない方が良いと思うんだ。だってこれじゃぁ、王太子殿下が蚊帳の外じゃないか。高貴な御方だからそれで良い、て言われたらそれまでだけどさ。
「あなたに言われる筋合いはございません。余計な事です。王太子殿下に目をかけられているからと、いい気ならないで頂きたい!」
激しい口調だ。漸く出たな、本音が。
「そう見えたなら、すまない。自重するよ」
出来るだけ穏やかに答えた。奴は怒りで充血した眼差しで俺に一瞥をくれると、僅かに開けたドアの隙間に手を伸ばし、荒々しく部屋を後にした。
何だかなぁ。一気にくたびれたぜ……。ドアを閉めようとしたその時、
「あ、あのー……」
遠慮がちに声をかけられた。驚いて振り向くと、俺と同じくらいの背丈の紺色の軍服姿の男が立っていた。サラサラとした栗色の髪を顎のラインで切り揃え、乳白色の肌に淡い桃色の繊細な唇を持つ、女と見紛うばかりに美しい青年、四天王の内南を司るオ-ガストだ。
「すみません、お言付けがございまして参ったのですが、お取り込み中のようでしたので……」
彼は気拙そうにチョコレート色の瞳を潤ませた。
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