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第五話
時、満ちる
しおりを挟む突然鳴り響いた緊急事態発生を知らせる警報に、思い思いの時間を過ごしていた天使達に緊張が走る。
メタトロン(玉座に侍る者)は、直ちにゼウスの元へ駆けつけるべく、純金色に輝く翼を広げ飛び立った。パステルイエローの甲冑にその長身の身を包み、それと同じ色のローブがたなびく。腰にブロンズ色の剣を差す。象牙色の肌に、ルビーを思わせる艶やかな赤い髪は顎のあたりで切りそろえられ、綺麗に内巻きに流れていた。髪と同じ色の豊かな睫毛に縁どられたその瞳は、翼と同じく純金色にゴージャスに輝く。
ゼウスの元に駆けつけると、その場所は既に、ゴールドの結界で正十二面体の結界がはられており、中で何が起こっているか窺い知れないようになっていた。
「ウリエル様……」
そう呟いたメタトロンは、先日ウリエルが訪ねて来た時の事を思い返した。その時、稽古場で錬金術に磨きをかけていたメタトロンに、不意にウリエルが訪ねて来たのだ。そして、
「メタトロン、集中しているところをすまないが、話がある……」
そう切り出されたのだった。
「メタトロン!これはどういう事だ?」
不意に問いかけられ、メタトロンは現実に返り声の主を見やる。
「ラギュエル!(神の友)」
ラギュエルと呼ばれた青年は、アイボリー色の肌に肩の下まで伸ばされた飴色の艶やかな巻き毛を一つに束ね、澄んだセピア色の瞳は鋭くメタトロンに向けていた。ボルドー色に艶めく剣を腰に差し、藤色の甲冑に同色のローブを身に纏う。
メタトロンは瞬時にウリエルの言葉を思い出す。あの時、ウリエルはこう言ったのだ。
「メタトロン、これからゼウス様はじめ我々五大天使に、何かが起こるかもしれぬ。その際は、正十二面体と正二十面体の二重に結界を張る。それを合図に、お主は全天使を『セフィロトの樹の丘』の元へ誘導してほしい。そして、軍神アレース様に、我々五大天使に任せてほしい、と伝えてくれ」
今もそのチェロを思わせるウリエルの声が甦る。そうしているうちに、そのゼウス達がいると思われる正十二面体の空間に目もくらむような白い光が溢れ、その光は十二面体の外側に更に、白く輝く正二十面体の結界が張られようとしていた。
それを見るや否やメタトロンは
「ラギュエル!頼む、時間がないんだ!急いで軍神アレース様に出動は必要ない事、何かあれば追って連絡する、と伝えてくれ!私は今から天使軍団を『セフィロトの樹の丘』へ誘導する。そこで後で落ち合おう!」
と急いだ様子で告げた。あまりに唐突な話に唖然としながらも、半ば諦めたように微笑み
「わかったよ。理由は今は聞かないでおくよ。緊急事態なのだろう?」
そう言いつつ、アイボリー色にキラキラ輝く翼を広げ、アレースの元へ飛び立とうとするラギュエル。それを見送りながら、メタトロンは
「すまない、ラギュエル。礼を言う」
と頭を下げた。ラギュエルは、そんなメタトロンに向かって気にするな、というように声を立てて笑い、去り際に
「落ち着いたら聞かせてもらうさ」
とウィンクをしてアレースの元に去っていった。
ラギュエルを見送った後、メタトロンは意を決したように迫りくる天使達を振り返った。
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