王子の僕が女体化して英雄の嫁にならないと国が滅ぶ!?

蒼宮ここの

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第12話 触発

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学校から帰ると城内は騒然としていた。

城の者が皆、化け物を見るような目で僕を見る。不敬だぞと怒鳴りつけてやりたかったが、なんせ種を蒔いたのは僕だ。誰にも相談しないままに、自分が孕める身体になったことを校内放送で暴露してしまった。
なんとなく、教師に隔離されたジャオとはそのまま別々に帰ってきた。門を潜った瞬間、学校で受けたのとはまた別の種類の視線が僕を四方から突き刺してくる。
城に一歩踏み出すと、衛兵の一人が僕の前に進み出た。

「ベル様。健診を受けるようにと王よりご命令です。至急フロスト様の部屋に向かってください」
「え~‪……‬」

フロスト‪……‬僕はアイツが苦手だ。
祈祷師の後継だかなんだか知らないが、いつも突然に衝撃の事実を突きつけてきて僕を翻弄する。初対面にも関わらず「孕める身体になっている」と告げてきた無礼、僕は一生忘れないからな。
とはいえ王の命なら仕方あるまい。通学鞄も置かずに、その足でフロストの部屋を訪ねる。ノックをしても返事がないので、遠慮がちにそうっと扉を開いた。
そこに立派な腰掛けを持ち込んで鎮座していたのは、

「父上!?」
「ベル。さっさと入りなさい」

間違いではない。フロストの部屋に、父上がいる。どうしていつも呼び出される時に、王が待っていると言ってフロストだったり、はたまたフロストの部屋へ行って王が待っていたりするのだろう。僕は騙されてばっかりだ。うんざりするが、父の鋭い眼光に耐え切れず、おとなしく部屋に入ってしまった。
しっかりと扉を閉め、あらためて向かい合う。

父上‪……‬久々に顔を合わせたような気がする。儀式のことで飛び回っていたのだろうか。今後の対策よりも先に、国民への説明責任に追われたりしているのかもしれない。相変わらずその巨体は逞しいが、目には病的な隈が認められる。あまり好きな父親ではないが、今は純粋に心配だ。

「父上、お疲れのようですね。たまにはゆっくりと休まれては……」
「脱げ」
「は」


「服をすべて脱げ」


聞き間違いではなかった。腕組みして踏ん反り返る父を前にして、僕は気が遠くなっていく。まるで状況がわからない。なんだって僕は実の父にこんなことを言われなきゃならないんだ?
「女人の身体になったのだろう。見せてみろ」
「は‪……‬いやそれは、まだ勘違いかもしれなくて‪……‬ひとまず僕は、国民を安心させたく」
「早く脱げ!!」

校内放送での僕の発言をこの人はもう知っているのだろう。それで腹に据えかねて、こんな横暴なことを‪……‬。

「そんな、口で説明しますから‪……‬少し胸に膨らみができたかも程度で」
「脱げと言ったんだ。次はないぞ」

抑えた声色は地獄から響き渡る魔王の様相で、僕は知らずと背筋が伸びた。恐ろしい。昔から、父に逆らえば容赦なく拳を振るわれた。その時のトラウマで、僕は父に睨まれると一切抵抗できなくなる。
羞恥と悔しさで唇を噛みながらも、僕は一枚ずつ服を脱いだ。無遠慮にじろじろと睨みつけてくる父上。僕は早くもあんな放送をしなければよかったと後悔している。

やがて全裸になり、腕で覆い隠したいのを堪えて、気をつけの体勢で停止した。父上は「後ろを向け」「ゆっくりと回転しろ」「近くに寄れ」と指示を出してきて、僕は従わざるを得ない。
目の前に来させた僕のふっくらとした乳房にフンと鼻息を吹きかけて、父上は憤慨する。そして股間に目を落とし、顎でしゃくりながら言った。

「手で持ち上げて見せろ」
「‪……‬‪……‬え」
「早く」

アソコの裏側までチェックする気か。
気付かれてしまう。僕のアソコが縮小化しているということ‪……‬。

気が進まなかったがここまで来たらやけだ。ちんけなそれを手の平に乗せて父に示した。父はじっと凝視するが、やはりまた気に入らないように顔を背ける。

「粗末な身体だ。男としても未熟であるし、女人とも到底思えん」
「申し訳、ございません‪……‬」
「もうお前に用はない。せいぜい英雄を誑かすのに注力するのだな」

バタン!!

扉が乱暴に閉められる。ひとり全裸で取り残されて、どうしようもなく辱められた気持ちになった。
粗末な身体だなんて僕自身が一番自覚している。実の父親に言われるとこんなにも惨めになるものなのだな‪……。‬服を着ていないと、自分が下等生物のような気分で、何も言い返せなかった。
あの時の父上、家畜を品定めするような目つきだった。もしかして今僕は次期国王の座を降ろされたのだろうか。
いやだ。こわい。父上に見捨てられれば、僕はいよいよ何者でもなくなる‪……‬‪……‬。

「ひっどいですよね~あの人」

バッ! 男の声が介入し、反射的に身体を手で隠した。それでもまったく隠し切れていない滑稽なポーズを嘲笑うかのように、フロストがニヤつきながら近付いてくる。

「寄るな! ヘンタイ! ケダモノ!」
「そんなあ。突然王に追い出された私の身にもなってくださいよ‪……」

言われてようやく思い出す。そういえばここはフロストの自室だった。
仕事用のデスクと簡易的なベッドだけがあり、他には何も置いていない。申し訳程度にキッチンはあるもののこれもまだ使っていないようで、生活感がまるでないので、フロストという人間の手がかりを得るのには何の役にも立ちそうになかった。

「まあどのみち健診は必要ですから。身体を見せてください」
「ええ~‪……‬」
「私は王のようにあなたを侮辱したりはしませんよ」

さっきの、見られていたのか。自分のブツを持ち上げて父上にも見せていたのも‪……‬?
恥ずかしい。恥ずかしすぎる。校内放送の切り忘れといい、どうして近頃こんなにも恥ずかしいことだらけなんだ!?

「ふむ‪……‬乳房が少し膨らんでいるかな‪……‬?」
「ひゃあっ」

ぴた。フロストの手が僕の少しだけふっくらした胸全体を覆う。少しだけ揉むような動きをしたので思わず声が出てしまった。反射的に叩き落として、距離を取る。

「いやだなあ。私はベル様を性的な目で見ていないから大丈夫ですよ」
「‪……‬どうだか」
「ホントですって。少なくともこの王国の女に飢えた性欲猿どもよりは……‬失礼。もう触りません、目視だけにします」

‪……‬今何かものすごく口汚い発言を聞いてしまったような気がする。だが下手にツッコんで全裸の時間が長引くのは本意ではない。聞かなかったことにしよう。じろじろと全身を舐めるように見られるのもそれはそれで居た堪れないものがあるのだが。なぶられるよりはマシなので、黙って気をつけのまま視姦に耐えた。

「そこ、以前より小さくなってます?」

そう言いながらフロストがぞんざいにペンで指し示したのは、言わずもがな僕の股間だ。プライドに後押しされて何度もコクコクと頷く。

「もともとそんなに自慢できるものじゃあなかったけど‪……‬以前はもう少し、しっかりとしていた。なんだか前より萎んでいる感じだ」
「ですよねえ。発育途中の子どものものともまたどこか違う。育ちきったものが何かに変形する段階のようです」

変形って。僕の大事な男の証は一体何に変わってしまうというんだ?
なんだか恐ろしくって、秒で考えるのをやめた。フロストの許可を得てようやく着衣する。よし、やっと人間に戻れた。

「それにしても体毛も薄いですね。それはもともとですか?」
「‪……‬まあ」
「良かったじゃないですか。そのほうが」

不自然な位置で言葉が切られる。
わかっている。大方「女性らしい」とかそこら辺だろう。
だが僕は望んでいない。何が女体化だ。子作りだ。ヘドが出る!

「まあ、女性化を発表してしまったのならくれぐれもお気をつけくださいね」
「へ? 何を」
「あなたねえ」

フロストが勢いよく手帳を閉じる。
なんだろう。呆れられてしまった。

「あなたの身の安全ですよ。現在若い女体を持つのは王国でただ一人、あなただけだ。手篭めにしようとする輩が現れてもおかしくない」
「えっ‪……‬」
「皆性欲を発散したいし、子作りだってしたい。さらに言えば、王座につくチャンスだって欲しいんですよ」
「うわ、それは‪……‬考えてなかった‪……‬」
「ベル様って結構バカですよねえ」

今なんて言った。
今度こそ聞き流せずギロッと睨みつける。うまいこと背中を向けられて回避された。






翌日からは以前と同じようにジャオが迎えに来てくれた。昼休みは一緒に食堂へも向かう。だがしかし、あの校内放送の後だ。案の定というか‪……‬生徒らはもう何の遠慮もナシで僕たちをガン見してくる。目が合うとヒューヒューなんて冷やかしてくるばかり。昨日の誹謗中傷ムードよりはマシだが‪……‬こんなふうにされて心が休まるわけがない。

僕はジャオを連れて屋上へと向かう。あそこは穴場だ。きっと誰もいないか、いても数人だろう。せっかくのジャオの母親の弁当なのだ、じっくりと味わいたい。それには食堂じゃあとても無理。
階段を上がっていくと、やがて屋上への扉にたどり着く。

あれ? ここって開けっ放しになっていたっけ‪……‬。

ぴょこっと頭を突き出して外の様子を確認する。やっぱり誰もいない……か。よかった。
足を踏み入れると小さな笑い声が聞こえた気がした。グラウンドからだろうか。それくらいに微かな音だった。
耳を澄ませるとどうやら違う、つき出した壁の影に誰かいるようだ。そのうちに「ンッ、ンッ‪……‬」「まっ‪……‬て‪……‬」と苦しげな声に変わり、ザワザワと胸の奥が騒ぐ。

もしかして、誰かが体調不良で苦しんでいるのではないか?

なんとなく足音を忍ばせて歩み寄る。水音。不自然なほどの水音が、クチュクチュ、ジュルジュルと響いている。心配‪……‬というよりは、純粋に疑問だった。
一体なんの音だろう。なんだか見つかってはいけないような気がして、緊張感を滲ませながらそうっと覗いた僕を、瞬時に支配したのは

――――――――衝撃。


まず意外にもその人物を僕は知っていた。いつも仲良くしているクラスメイトのユーリ。ルシウスもいる。その二人が‪……‬‪……‬抱き合って、キスをしていたのだ。
遠目でもわかるくらいに激しく舌を絡ませている。くねくねと悶えるユーリの身体を、背の高いルシウスが包み込んで撫でまわしている‪……‬!
突然の官能的な光景に、僕は叫び出してしまわないようにまず己の口を抑えた。

間違いない。ユーリと、ルシウスだ。
ユーリは僕と同じでまだ幼い、女寄りの顔立ちをしているが‪……‬もちろん二人ともれっきとした男。男同士でキスするなんて聞いたことがない。いや僕もジャオとしたけど。‪……‬‪……‬僕らのはその、ノリというか、雰囲気に流されてやってしまっただけのことで‪……。
‬だけどこの二人は、そんなんじゃない。明確な意思を持って互いの身体を弄り合っている。何度も頭の角度を変えて互いの唇を味わい、じっくりと睦み合っている‪……‬‪……‬。

「ンふ‪……‬ルシウス、だいすき‪……‬」
「俺も‪……‬」

ジュピジュピ。これ見よがしにユーリが舌を伸ばして、ルシウスがそれに吸い付く。慣れた仕草に僕はなぜだか裏切られたような気持ちになっていた。

なぜ。どうして。
二人は友人関係だと思っていたのに。

人目を忍んで、こんな‪……‬ハレンチなっ‪……‬見て、いられない‪……‬!

思うのに、どうしても見るのをやめることができない。僕の知る二人が、健全な友人であるはずの二人が、あんなにも求め合って‪……‬僕の知らないことを内緒でしていた、なんて‪……‬。

ルシウスの手がユーリの制服の尻を撫でまわす。ユーリは蕩けそうな瞳を向けて誘うように擦り寄る。熱っぽく見つめ合って、ふたたび唇を重ねた。唾液が泡立つほどに一心不乱に吸い合うその様子を‪見ていると、次第に、僕の身体までもが熱を帯びてきた。
今までキスをする妄想で自慰をしてきたりもした。だけど当然相手は女性だ。小柄の黒髪の女性なんかを思い浮かべて、柔らかなその身体を抱き留めながら何度も唇をくっつけるシーンを思い描いていた。美しい、シーンだった。

だが現実はどうだ。こんなにも淫靡で卑猥で‪……‬‪……‬不潔だ。あんなことを他人とするなんてどうかしてる。口と口をあんなにも許し合って、粘膜で快楽を得ている。
ユーリもルシウスも見たことのない、いやらしい表情で見つめ合い、何度でも、何度でも、深いキスを繰り返している。

どうしよう。なんだか、下っ腹が疼いて‪……‬。

身じろぐと、隣にいたジャオと手がぶつかる。見上げるとジャオもこちらを見つめていて。ルシウスとユーリとの身長差は、ちょうど僕らと同じくらいだ。なんて考えたが最後、あらぬ妄想に支配されてドクンドクンと心臓が暴れ出した。

あんな、キス‪……‬僕とジャオが、する筈ない‪……‬。
好き合っているわけじゃないのだし、男、同士だし‪……。
‬でもアイツらは、してる‪……‬アイツらのほうがよっぽどヒューヒューじゃないか‪……‬もしかして僕らも、周囲にはあんないやらしいことしてるって思われてるのか‪……‬?

ジャオが僕の肩を掴んで真っ直ぐに向き直させる。頬を包んでさすられて‪……‬なにかの許しを乞うみたいにじっと見つめてくる。
しないぞ、僕は‪……‬言いたいのに、ユーリたちにバレるわけにはいかないから言葉で拒めない。腕を押し返すのもジャオを傷つけてしまいそうでできない。ジャオの手が僕の顎を持ち上げて、親指で唇を撫でてくる。

‪……‬ヤバい‪……‬え‪……‬僕らもアレ、しちゃうの‪……‬?

硬直しているうちに、ジャオがチュッと唇をつけてきた。全身が萌え芽吹く。何度かチュッチュッと弾いて、ぬろ‪、‬唐突にジャオの舌が唇を這う。あまりに驚いて僕は声を抑えるためにジャオの胸元にしがみついてしまった。
この間と、同じ。僕はジャオにキスされるとこうやって縋り付くしかできなくなる。
ジャオは慎重に、僕の唇を舐めたり、吸い付いたり、息を吐きかけてきたりしてアプローチしてくる。その控えめな接触すら僕にとっては全部はじめてで、目を閉じて唇も閉じて強張ってしまう。
ジャオの手が僕の後頭部を支えて逃げられないように押さえてきた。だだくさに髪を撫でられ、なぜだかうっとりとしてしまう。

ジャオにやさしくされると、嬉しい。
やっぱり僕ジャオのこと、好きだ‪……‬。

たまらず吐息を漏らすと、間髪入れずにジャオの舌が歯列を割って入り込んできた。手でグッと頭を固定されて口内を舐めまわされる。ああ、してる‪……‬ジャオと、大人のキス‪……‬‪……‬。
ジャオに与えられる舌の感触一つ一つがいやらしすぎて悶える。こんなぬとぬとして、柔らかくて、いいのか。なんだこれ。なにこれは。なに。
ジュッ。鋭い水音がして、ジャオが強めに僕の舌を吸う。思わず「ンンッ」って声が漏れてしまった。
恥ずかしい。息が苦しくて口を開けると、唇が離れて、舌同士だけがくっついている状態になった。なにこれいやらしすぎる。ジャオ、食い入るように僕の顔を見てる。
見ないで。僕今きっと、すごくだらしない‪顔してる……‬。
ジャオの指が僕の舌を挟んで奥のほうをグリグリと擦る。ア、気持ちいい‪‪……‬何でこんなことされて気持ちいいんだよ‪……‬?
脚が震える。ジャオの肩にしがみつく。みっともなく舌を伸ばして、絡め取るジャオの舌を受け入れる‪……‬。

「んふ、ンン」

気付いたら僕も、ユーリと同じように腰をくねらせてジャオに全身で擦り寄っていた。
だって、気持ちいい。ドキドキが止まらない。ジャオ、何度も何度もしてくれる。嬉しいよお。
舌を回して、繰り返し絡め合う。時折唇を外して見つめ合い、ジャオの赤く燃える眸に囚われる。そのうちにジャオの手が僕の胸元をさすり始めた。

いけない。膨らんでるの、バレちゃう。

力の入らない腕でなんとか押し返す。ジャオはスリスリと僕の頬を撫でながら、まだ物欲しそうに見つめてくる。

はあ‪……‬なんて精悍な顔立ち‪……
‬ジャオ、好き‪……‬好き、好き、好き‪……‬。

その時、視界の隅で何かが動く。そこでやっと自分たち以外の存在がいたことを思い出した。ユーリとルシウス。とっくにキスをやめてこちらを凝視している。
僕は反射的に、自分の身体を抱きしめてその場から大きく飛び退いた。

「ち、ちがう! ちがうから! これは!!」
「いや‪……‬お前めちゃくちゃ気持ち良さそうだったじゃん‪……‬?」
「ベルもこういうことするんだね、意外~」

もとはといえばこの二人のキスシーンを目撃した筈だったのに、いつの間にか目撃された側にまわってしまっている。なんっっってことだ。

「そりゃあそうだろ。一応オトメなんだし」
「二人、うまくいってるんだ~。よかった~」

花のように咲うユーリ。こんなふうに愛らしくいられたら、僕だってもっとジャオに可愛がってもらえるかもしれないのに‪……‬。などと、友人の前なのに邪念に支配されそうになる。唇を噛んで振り払った。

「僕ら他にもいい場所があるから、ここは二人に譲るね~」
「えっ!?」
「ハメ外しすぎんなよ、ベル」

ルシウスがいたずらっぽい笑みを残して、二人は屋上から出て行ってしまった。ジャオがそっと腰を抱いてくる。僕はふたたびネズミのように跳ね上がって距離を取る。

「バカ! やめろ!」
「ここは譲ると」
「いっ今のは流されただけだから! 大体僕らそういうんじゃないだろ!?」
「だがベル‪……‬孕めるんだよな‪……‬?」
「いっ‪……‬」

やはり、ジャオもあの放送の内容をしっかり聞いていたか‪……‬‪……‬。
でもだからってなんだ。ジャオ、僕のこと孕ませようとしているのか? それじゃあやっぱりフロストの言った通りじゃないか!

「僕は! お前と子を成す気はない!! 付き合う気もないからな!!」
「‪……‬‪……‬そうか」

落ち込む顔も憂いを帯びていて美しい。見惚れてしまいそうになるのをグッと堪えて、その場に腰を下ろした。

「食べよう。時間なくなるぞ」
「ああ、そうだな」

不服そうなオーラを、感じる‪……‬。
ジャオは言葉にも顔にも気持ちを出さないからわかりにくいけど‪……‬。
いつもまとわりついてくる、ジャオからの視線がないからそう感じるのだろうか。

弁当を咥えて咀嚼している‪口元に自然と意識がいく。
ジャオとさっきまで、キスしてたんだよな‪……‬しかもただのキスじゃない、あんな、エッチな‪……‬。

「ん?」

回想に耽っているのがバレた。かもしれない。
首を傾げて見つめ返してくるジャオ。僕は耐えきれず背を向けて、震える手で弁当を抱え直した。
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