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「あの時は、まだ意識を取り戻したばかりだった。
 意識が朦朧とする中、そのまま病室でいきなり審議会にかけられた。
 しかもジンが死んだと……。
 そう言われショック状態だった。
 ……全てが……もうどうでもよくなった。
 自分だけが生き残った事が許せず、すぐにでもジンの後を追うつもりで……」

 その言葉に匠と深月が浅葱の方へ顔を向ける。
 
 だから浅葱さんはいつもあんな無茶を……。
 いつだったか “浅葱さんは死を恐れていない。それどころか望んでいるのでは?”
 そう思った事を深月は思い出していた。


「自棄になっていた……。
 病室での審議会……。
 委員が……他人が……薄っぺらく簡単にジンの死を口にする事が我慢できなかった。
 あの時、誰が何を言ったのかさえも……。
 本当に何も覚えていない……」
 
 必死に思い出そうとする浅葱の顔が苦悩に歪む。
 
「何も覚えていないだと……?
 ほう、それは都合の良い話だな。
 では、後を追うつもりのお前がなぜまだ生きている?
 さっさと死ねばいいものを……!
 どこまで口先だけの言い訳を並べるつもりだ!
 いい加減に…………!」

「ちょい待ちー」

 二人のやり取りを遮るように、オヤジが執務室から現れた。
 右手に銃を、左手にはしっかりと軍服の襟元を掴まれた委員長が、四つん這いに近い格好で引き摺られて出てくる。

「今、恭介が生きているのは俺が止めたからだ。
 んで……この問答の真相は……コイツと、この中にあるようだぜ、恭介」

 そう言ってオヤジは委員長から奪い取った小型の端末を掲げて見せる。


 委員長は、いきなり引き摺り出された目の前に、ハルと浅葱が揃っているのを見て、
「ヒィ……」と小さな声を上げた。

 四つん這いのまま後退ろうとするが、
「おとなしくしてろ」
 オヤジの手が首元を捉え、離そうとはしない。


「大丈夫か? 二人共」
「おやっさん! ……はい!」

 深月の返事に一度頷き、オヤジはハルへと視線を向けた。

「長い間、お前さんとはやり合ってきたが……。
 顔を見るのは初めてだな、ハル。
 恭介が言った事は嘘じゃあねぇよ。
 俺は医者だが……何も覚えてねぇ。ってのは、爆発に巻き込まれた事と、ジンの死のショックでの心因性健忘……。
 一定期間だけ記憶が抜け落ちる記憶喪失みてえなもんだ。
 ……と言っても、俺と恭介が知り合ったのはその審議会の後で、実際に診察したわけじゃあねぇがな」

「医者……お前が工藤か。
 ならば口出しはするな。
 その場にいなければ、真実が何かは知らないはずだ。
 無関係な奴はおとなしく引っ込んでいろ」

 ハルは睨むようにオヤジを見つめた後、その足元で蹲っている委員長に目を向けた。

「フン……いい格好だ。
 ナンバーツーも地に堕ちたな、よく似合っているぞ」

「黙れ! ハル! お前がさっさと……!」
 
 そこまで言いかけて委員長はハッと言葉を呑み込んだ。
 そんな足元の委員長に、オヤジは視線を落とす。

「真実か……ああ、その通りだ。
 俺が恭介と知り合ったのは、ジンが亡くなった後。
 だからジンと恭介の事も、その事件の事も俺は何も知らねぇ……。
 いいや……。
 と言う方が正しいかな……」

「……かった……?」
 オヤジの意味深な物言いにハルが眉を寄せる。

「ああ、知らなかった。今日まではな。
 だが今はわかってるつもりだぜ。
 少なくとも、今のお前さんよりは……な。
 それは、ここに真実があるからだ」

 オヤジは再び委員長の端末を掲げ、ハルを見た。

「これはな、コイツが……この腐ったナンバーツーが命を懸けてまで守りたかった秘密。
 それこそがジンの死の真相だ」
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