219 / 232
-218
しおりを挟む
匠の額に銃口を付けたまま、浅葱を睨むハルの顔は、今までとは違い、深く暗い憎しみに満ちたものだった。
その表情に浅葱も懐疑の表情を浮かべる。
「何も……?
何も……とはどういう意味だ。
お前は何を知っていると言うんだ、ハル……」
「何を……だと?
この期に及んでまだシラを切るのか……」
じっと浅葱の顔を憎悪の目で見つめるハルが口を開く。
「……ジンの死の真相。
そこまで言えば、さすがのお前も良心の一つでも痛むか?
私に懺悔でもする気になるか……?」
「ジンの……死の……」
浅葱の体がピクンと反応する。
右手で銃を構えたまま、左手が自分の心臓の上……上着の胸元を掴むように握り締めた。
「どういう事だ、ハル……。
お前はジンの最期を知っていると言うのか……」
「ああ、知っている」
鼻先で苦笑しながらハルが答える。
「誰が、いつ、どこで、どんな風に殺ったか……全てをな。
どうだ……?
私が知っているとは誤算だったか?」
「誤算……?
誤算とはいったい……」
「見苦しいぞ、恭介。
もう芝居は止めろ。
愛しいタクミの前で、私に懺悔し、許しを乞うなどという惨めな姿を晒すのは嫌か?
それとも、愛だの幸せだのとほざいていた、そこの甘っちょろい男の手前、何もできないか?
だが、二人共、よく聞いておけ。
この浅葱恭介という男の本性を……」
ハルは銃口を突きつけたまま、匠とその後ろにいる深月の両方へ視線を向ける。
「浅葱さんの本性……?
ジンって……?」
深月が思わず呟いた。
「ああ、この浅葱という男は、自分の利欲だけで大事な仲間を殺した。
仕事でも、私生活でも大切なパートナーだったはずの男をな……!」
「そんな……!
浅葱さんはそんな事は絶対にしない!
そんな人じゃない!!」
深月が手錠を鳴らし叫ぶ。
「そんな人じゃない? やはり甘いな、お前は。
……私も初めはそう思っていたよ。
そう思うからこそジンを……。
私の大切な、たった一人の家族だった兄を浅葱に託した。
恭介なら大丈夫だと……。
恭介なら兄を幸せにしてくれると……。
だが、その私の想いは見事に裏切られた。
コイツは……。
恭介は、自分の欲を満たすためだけにジンを殺った。
……今思えば、私も甘かったな……」
「兄……って……」
深月が驚いたように、ハルの美しく憎しみに歪んだ顔を見た。
「ジンさんが……お前の……」
それは匠も、そしてハルの話をじっと押し黙って聞いていた秘書の男も同じだった。
「待て、ハル!
それはどういう事だ! 俺は知らない!
俺は未だにジンの最期を知らない……!
俺がジンを殺しただと?
そんな馬鹿な事があるはずがない!
……知っているなら話してくれ!
ジンは……ジンは何故死んだんだ!」
フッとハルが大きな溜息をつき、呆れたように浅葱へと向き直った。
「まだそんな事を……。
ジンの死後にかけられた審議会で、お前は全て自分がやったと認めている。
その時の映像も、サインされた書類も私は見た。
あれは偽造などでは無い、本物だ。
だがどういう訳か、お前は一切お咎め無し……。
何故だ……?
ジンを殺しておきながら……どんな取引をした?
出世か? 金か?
今のお前は、ジンの死を踏み台にしてこそ存在する。
今更、私に懺悔などして貰わなくて結構だが、最期までお前の事を本当に愛し信じていたジンを裏切り、冒涜しながら、お前だけが平然と生き延びる事は、この私が許さない。
潔く全てを認めろ!
私の手で地獄へ堕としてやる、恭介……!」
浴びせ掛けられるハルの言葉に、浅葱が小さく頭を振る。
「違う……。
俺は……。
あの時…………」
ハッキリしない記憶の深淵をたどるように、浅葱が苦し気に声を絞り出す。
その表情に浅葱も懐疑の表情を浮かべる。
「何も……?
何も……とはどういう意味だ。
お前は何を知っていると言うんだ、ハル……」
「何を……だと?
この期に及んでまだシラを切るのか……」
じっと浅葱の顔を憎悪の目で見つめるハルが口を開く。
「……ジンの死の真相。
そこまで言えば、さすがのお前も良心の一つでも痛むか?
私に懺悔でもする気になるか……?」
「ジンの……死の……」
浅葱の体がピクンと反応する。
右手で銃を構えたまま、左手が自分の心臓の上……上着の胸元を掴むように握り締めた。
「どういう事だ、ハル……。
お前はジンの最期を知っていると言うのか……」
「ああ、知っている」
鼻先で苦笑しながらハルが答える。
「誰が、いつ、どこで、どんな風に殺ったか……全てをな。
どうだ……?
私が知っているとは誤算だったか?」
「誤算……?
誤算とはいったい……」
「見苦しいぞ、恭介。
もう芝居は止めろ。
愛しいタクミの前で、私に懺悔し、許しを乞うなどという惨めな姿を晒すのは嫌か?
それとも、愛だの幸せだのとほざいていた、そこの甘っちょろい男の手前、何もできないか?
だが、二人共、よく聞いておけ。
この浅葱恭介という男の本性を……」
ハルは銃口を突きつけたまま、匠とその後ろにいる深月の両方へ視線を向ける。
「浅葱さんの本性……?
ジンって……?」
深月が思わず呟いた。
「ああ、この浅葱という男は、自分の利欲だけで大事な仲間を殺した。
仕事でも、私生活でも大切なパートナーだったはずの男をな……!」
「そんな……!
浅葱さんはそんな事は絶対にしない!
そんな人じゃない!!」
深月が手錠を鳴らし叫ぶ。
「そんな人じゃない? やはり甘いな、お前は。
……私も初めはそう思っていたよ。
そう思うからこそジンを……。
私の大切な、たった一人の家族だった兄を浅葱に託した。
恭介なら大丈夫だと……。
恭介なら兄を幸せにしてくれると……。
だが、その私の想いは見事に裏切られた。
コイツは……。
恭介は、自分の欲を満たすためだけにジンを殺った。
……今思えば、私も甘かったな……」
「兄……って……」
深月が驚いたように、ハルの美しく憎しみに歪んだ顔を見た。
「ジンさんが……お前の……」
それは匠も、そしてハルの話をじっと押し黙って聞いていた秘書の男も同じだった。
「待て、ハル!
それはどういう事だ! 俺は知らない!
俺は未だにジンの最期を知らない……!
俺がジンを殺しただと?
そんな馬鹿な事があるはずがない!
……知っているなら話してくれ!
ジンは……ジンは何故死んだんだ!」
フッとハルが大きな溜息をつき、呆れたように浅葱へと向き直った。
「まだそんな事を……。
ジンの死後にかけられた審議会で、お前は全て自分がやったと認めている。
その時の映像も、サインされた書類も私は見た。
あれは偽造などでは無い、本物だ。
だがどういう訳か、お前は一切お咎め無し……。
何故だ……?
ジンを殺しておきながら……どんな取引をした?
出世か? 金か?
今のお前は、ジンの死を踏み台にしてこそ存在する。
今更、私に懺悔などして貰わなくて結構だが、最期までお前の事を本当に愛し信じていたジンを裏切り、冒涜しながら、お前だけが平然と生き延びる事は、この私が許さない。
潔く全てを認めろ!
私の手で地獄へ堕としてやる、恭介……!」
浴びせ掛けられるハルの言葉に、浅葱が小さく頭を振る。
「違う……。
俺は……。
あの時…………」
ハッキリしない記憶の深淵をたどるように、浅葱が苦し気に声を絞り出す。
0
あなたにおすすめの小説
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる