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浅葱の胸の上に倒れ込み体を預けたまま、匠はずっとその心臓の音を聞いていた。
最初は早かった浅葱の鼓動が徐々に落ち着き、いつもの速さへと戻っていく……。
繋がったままの部位はまだ熱を持ち、しっかりと浅葱を感じることができていたが、それは痛みではなく、心地良い痺れと飽和感だった。
その浅葱の強い腕にしっかりと抱きしめられ、小気味良い鼓動を聞いていると、ゆっくりと気持ちが落ち着いていく。
匠は自然に目を閉じた。
匠の呼吸が治まり、体の余韻が静まると、浅葱も抱いていた匠の体から手を緩めた。
「……匠……匠……」
優しく呼ばれ、頭を撫でられて、匠は少しだけ顔を浅葱の方へと向けた。
「……抜くぞ……」
そう言われ、少し寂しそうに目を伏せた匠から、浅葱はそっと自分のモノを引き抜いた。
「……んっ……」
小さな声を上げた匠の体を抱えるようにしてベッドへと横たえる。
「よく頑張ったな……」
体の負担にならないように、右側を下にして……横向きに寝かせると、匠はすぐに少し足を曲げ胎児のように体を小さくした。
浅葱はそんな匠を見つめながらベッドの端に座り、匠の前髪に触れた。
髪をかき上げるように掬ってやると、
「くすぐったい……」
匠は目を閉じたまま、小さな声で少しだけクスリと微笑んだ。
額に顔を寄せ、軽く唇で触れる。
その額はまだ燃えるように熱い……。
「ちょっと待ってろ……」
浅葱は簡単に身を整え、洗面所と医務室から、冷たいタオルと新しいシーツを持って戻って来た。
「匠……。ほら、体を拭いてやる……」
「……ん……」
まだ体の熱さと、全身の怠さから抜け切れない匠がわずかに頷いた。
浅葱は冷たいタオルで熱を逃せない匠の体を拭っていく。
匠は目を閉じ、されるがままにその身を預けた。
首筋も胸も……傷が痛まないようにそっと全身にタオルをあてると、
「……気持ちいい……」
そう言って匠は安心した表情を見せる。
「背中……また傷んでしまったな……」
擦れ破れ、血を滲ませる匠の背中にそっと触れながら浅葱が呟いた。
「……ん……。でも……平気です……」
倦怠感から言葉少ない匠だったが、その声はとても穏やかだ。
「あ、でも……。
おやっさんには……怒られるかもしれない……」
そう言ってフッと笑う匠に、
「大丈夫だ。オヤジは、ちゃんと理解してくれる人だ」
浅葱が優しく頭を撫でる。
オヤジが深月を連れて出て行った事は、匠も気が付いていた。
目を閉じたまま、
「……ん……」
と頷いた。
血が滲む傷をタオルで押さえると、浅葱は新しいシーツで匠を包み、そのまま抱き上げた。
匠が驚いたように目を開ける。
ベッドが血で汚れていたからだ。
「俺の部屋で寝ろ」
そう言って匠を抱いたまま、浅葱は部屋を出た。
途中の廊下も、奥に見えるリビングにも人影はなく、シンと静まり返っていて、オヤジ達はまだ戻って来ていない様子だった。
最初は早かった浅葱の鼓動が徐々に落ち着き、いつもの速さへと戻っていく……。
繋がったままの部位はまだ熱を持ち、しっかりと浅葱を感じることができていたが、それは痛みではなく、心地良い痺れと飽和感だった。
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匠は自然に目を閉じた。
匠の呼吸が治まり、体の余韻が静まると、浅葱も抱いていた匠の体から手を緩めた。
「……匠……匠……」
優しく呼ばれ、頭を撫でられて、匠は少しだけ顔を浅葱の方へと向けた。
「……抜くぞ……」
そう言われ、少し寂しそうに目を伏せた匠から、浅葱はそっと自分のモノを引き抜いた。
「……んっ……」
小さな声を上げた匠の体を抱えるようにしてベッドへと横たえる。
「よく頑張ったな……」
体の負担にならないように、右側を下にして……横向きに寝かせると、匠はすぐに少し足を曲げ胎児のように体を小さくした。
浅葱はそんな匠を見つめながらベッドの端に座り、匠の前髪に触れた。
髪をかき上げるように掬ってやると、
「くすぐったい……」
匠は目を閉じたまま、小さな声で少しだけクスリと微笑んだ。
額に顔を寄せ、軽く唇で触れる。
その額はまだ燃えるように熱い……。
「ちょっと待ってろ……」
浅葱は簡単に身を整え、洗面所と医務室から、冷たいタオルと新しいシーツを持って戻って来た。
「匠……。ほら、体を拭いてやる……」
「……ん……」
まだ体の熱さと、全身の怠さから抜け切れない匠がわずかに頷いた。
浅葱は冷たいタオルで熱を逃せない匠の体を拭っていく。
匠は目を閉じ、されるがままにその身を預けた。
首筋も胸も……傷が痛まないようにそっと全身にタオルをあてると、
「……気持ちいい……」
そう言って匠は安心した表情を見せる。
「背中……また傷んでしまったな……」
擦れ破れ、血を滲ませる匠の背中にそっと触れながら浅葱が呟いた。
「……ん……。でも……平気です……」
倦怠感から言葉少ない匠だったが、その声はとても穏やかだ。
「あ、でも……。
おやっさんには……怒られるかもしれない……」
そう言ってフッと笑う匠に、
「大丈夫だ。オヤジは、ちゃんと理解してくれる人だ」
浅葱が優しく頭を撫でる。
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目を閉じたまま、
「……ん……」
と頷いた。
血が滲む傷をタオルで押さえると、浅葱は新しいシーツで匠を包み、そのまま抱き上げた。
匠が驚いたように目を開ける。
ベッドが血で汚れていたからだ。
「俺の部屋で寝ろ」
そう言って匠を抱いたまま、浅葱は部屋を出た。
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