華燭の城

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「ナギ、どうしてああも好戦的に出るんだ?」
 自分の事は棚に上げて、部屋に戻ったナギをヴィルがたしなめていた。

「よく言うぞ。
 お前だって、今にも暴れ出しそうだったろ?」

「私のはちゃんと理由がある。
 お前に対するあの非礼な態度、嫌みな言動、全てが気に入らん。
 だがナギのはどうも……なんというか……ただ喧嘩を吹っ掛けて楽しんでいるとしか見えないんだが?
 ガルシアをわざと怒らせたいのか?」

「別に楽しんではいないし、吹っ掛けて来たのはガルシアの方だ。
 だが、なんだろうなぁ……。
 なんとなく、あのガルシアを見ていると苛々するんだ。
 俺に対して礼を欠くのは別にいい。
 こっちが年下だし、あれでも一国の王だ。
 親子程、年の違う小僧に頭を下げるのが嫌な事ぐらい判る。
 だがなぁ……。
 神国を捨ててまで、よくあの王の養子になろうなんて考えたよ、シュリは」

 寝転がっていたベッドから、ナギはガバッと身を起こした。

「それにな、シュリの手、見たか?
 指先が……爪が割れて傷だらけだった。
 なんであんな事に……」
 
「爪……?」

「ああ、やはり何か変だ」

「お前がそう思うなら構わない。言ってくれ。
 何でも調べるぞ?」

「それが “何か変だ” とは感じるが、肝心の “何が” と言われると、まるっきり見当もつかない。
 やはり、もう少しシュリと話をしないとな……」





「シュリ、傷は痛みませんか?」
「大丈夫……っん……ラウ……っ……」

 暖炉の薪がパチパチと爆ぜる音が鮮明に聞こえる静かな部屋で、二人の囁き合う声がわずかに響く。
 傷に障らぬように抱きしめられ、うつ伏せにされたシュリはラウと体を繋げ、その喜びを全身で感じていた。
 ガルシアとは違う静かで繊細な行為。
 愛しい者に抱かれるという安らぎ。

 ラウは後ろから覆い被さるようにして、シュリの数少ない無傷の場所……シュリのその手に自分の手を重ね、指を絡ませていた。
 幾度となく繰り返されるラウの抽挿に、シュリの細い指にも力が入る。

「……んっ……!
 ぁっ、ラウ……っ!」

「まだです、シュリ……もう少し……」
 
 ラウが耳元でそう囁き、わずかに体を引く。

「……ぁっ……」

 今にも溢れ、零れ落ちそうだった快感を奪われ、不意に遠のく絶頂感にシュリが詰めていた息を吐くと、その体から力が抜ける。

「また……。
 ……っ……ラ……ウ……もう無理……いかせて……」

「もう一度です……」

 泣き出しそうな切ない懇願の声に、ラウは片手でシュリの腰を持ち上げ、四つん這いにさせる。

「……っっぁ……!」

 挿入されたまま体位を変えられ、また違う部位へ移ったラウの刺激に、シュリが再び小さな声をあげ、腕の中で身を捩った。
 ラウはそんなシュリへ愛おしそうに手を伸ばし、その頬に触れ、自分の方へと振り返らせる。
 喘ぐ唇をそっと指でなぞり、そのまま顔を寄せると軽く唇が触れた。

「シュリ、そんなに力を入れないで……。
 唇もです。もっと力を抜いて……ほら、口を開けて」

「でも……ん……っ……」

 戸惑いながらも、わずかに開かれた口を塞ぎ、ラウは舌を絡ませた。

「……っ……んっ……ぁっ……」

 ラウの指で顎を支えられ逃げ場の無くなったシュリは、柔らかな舌で口内をまさぐられ、甘い声を漏らす。
 ラウはその声にフッと微笑み、もう一度自身を最奥へと送り込んだ。

「んっ……っ! ぁあっっ……!」
 再びシュリの体が大きく仰け反った。

 ラウは片腕でシュリを抱き締めると、そのまま手を前に回す。
 直にシュリのモノに触れ、そっと包み込むように握ると、その先端を指でなぞり、またゆっくりと促し始める。
 深く抽挿される後ろと、優しい手でいざなわれる自身の快感に、シュリは思わず声をあげた。
 だが、その口さえもラウの唇で塞がれている。

「……んっ……んっ……ぁっ……んっっ!!」

 シュリの小さな喘ぎが幾度が続いたあと、ふいに唇が開放された。

「……シュリ……一緒に……」
 耳に触れんばかりの所で囁かれたラウの優しい声。

 そのまま耳たぶを軽く噛まれると、ようやく許可を得られた事に安堵し、シュリが小さく頷く。
 ラウの動きもそれまでの静から動へ激しさを増し、シュリの体を内部から圧し上げた。

 耳元で聞こえるラウの静かな声と息遣い。
 湧き上がる快感に、シュリの体は敏感に反応し、絶頂へと一気に駆け上る。

「……ぁぁ……ラウ……んっっっ……!
 もう、だめ……。
 ……んっっぁぁっ……!!」

「シュリ……っ……」

 四つん這いのまま、大きく天を仰ぐように達し、そのまま崩れ落ちそうになるシュリの体を、ラウがしっかりと抱き留める。
 シュリもその腕に抱かれたまま、トクトクと体内に注がれるラウの感覚を幸福の中で感じ取っていた。

 そのラウの脈動が止まると、シュリは抱かれたまま振り返り、
「ラウ……」
 小さく呼ぶ唇を、ラウが微笑みながらもう一度塞ぐ。

「ん……」
 
 安心し、静かに目を閉じたシュリを、ラウはそっとベッドに横たえた。
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