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第15章 火の国ルシファーランド強制招待編
第388話 海路を往く 三日目(魔界の海での遭難は救助率0.001%)
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三日目になって、ようやく二人も船で活動できるようになった。
しかし――
「退屈だ……海を見ても何も見えんしな……」
フレアハルトが船べりで頬杖突きながら海を見てつぶやく。
真っ暗な海を見て面白くないのはどの種族でも共通らしい。
船の周りには電気設備で光が照射されているが、遠くまで見渡せるわけではないため綺麗な景色が見えるとは言い難い。
「アルトレリア近くの海と違って、ここは真っ暗で何も見えませんからね~」
レイアは最近アルトレリア近海に魚を捕まえに行くため、その違いが分かるらしい。
「そんなに違うの?」
「全っ然違いますよ!! アルトレリア近海は疑似太陽のお蔭で青く澄んで綺麗に見えますから。こんな真っ暗な場所で潜って魚捕まえることなんて、きっと出来ないですよ。暗すぎて死の危険があるのが分かります!」
「なるほど」
アルトレリア近海は、疑似太陽のお蔭で地球の海に近い見た目をしているわけか。ということは魔界の海も本来は青い色をしているわけね。
その時、船員さんから声がかかる。
「退屈なら釣りでもやりますか?」
「釣り、釣りか。レイアが最近よく言ってるな。どんなものなのだ?」
船員さんが懇切丁寧に教えてくれる。
「ほう、魚を釣ることか。生きてる魚など見たことがない、よし! 是非やってみようではないか!」
「船の電気設備の効果で魚が集まって来やすくなっています。きっと沢山釣れますよ!」
◇
「おお! 見ろ! アリサ、レイア! どんどん釣れるぞ!」
「素晴らしい腕前です!」
「私はもっと大きいの釣りましたよ!」
「なに? では我はお主よりでかいのを釣ってやろう!」
しばらく嬉々として魚釣りを楽しんでいたフレアハルトだったが、気付いたら静かになっている。
「あれ? フレアハルトどこ行った?」
「え? ずっと釣りを楽しんでいたと思ったんですけど……」
「トイレにでも立たれたのでしょうか?」
「釣り竿も無くなってるけど? 普通釣り竿持ってトイレ行く?」
「わ、わたくしも釣りというのを初めて見るので分かりませんが……」
どう考えてもおかしい。普通釣り竿なんて長いものはその場に置いて用足しに行くと思うけど……
「何でいないの? まさか……海に落ちた?」
「アハハ……そんなわけないじゃないですかぁ……」
船のエンジン音も大きいから、落ちたことに気付かなかったのか!?
この暗い海に本当に落ちていたら大変なことになる!
「アリサ! レイア! フレアハルトの魔力は感知できる!?」
船内に居るなら、それほど大きい船でもないしフレアハルトの魔力を捕捉できるはず。
……
…………
………………
魔力感知を始めて少し時間が経ってからアリサの全身がガクガクと震え出した。
「…………い……いません……この船にフレアハルト様はいません!!」
「わ、私にも感知できません!」
ホントに海に落ちた!?
「フレハル様ーー!!」
「フレアハルト様ーー!!」
甲板から身を乗り出して辺りを探すも、船の光の範囲にはおらず。
「どうかしたのですか?」
大声で叫んでいたため、異変を感じて船員さんが集まって来た。
「連れの者が一人いなくなってしまいまして」
「まさか!? 海に落ちたのですか!? 船内を探しましたか!?」
「わ、わたくしたちの魔力感知に引っ掛かりません……」
魔力感知能力を持つ者のことは、この世界では常識と言って良いくらい広く知られている。
「だとすれば、やはり海に……」
「残念ながらこの真っ暗な海では救助は難しい。俺たち船乗りの間では『運が悪かった』として諦めることが暗黙の了解になっている。すまないがこのまま航行を続けるよ」
「そんなのって冷たいんじゃないですか!!?」
私が食って掛かるものの――
「…………ふぅ……お嬢さん、あんた海は初めてかい?」
「それがどうしたんですか!?」
「この大海原で陸地も見えないところで船から落下して救助される可能性がどれくらいか知ってるか?」
「………………知りませんけど」
「〇.〇〇一パーセントほどだ。十万人に一人しか見つからない確率。しかも見つかった者のそのほとんどが陸地に流れ着いた水棲亜人だ。陸棲亜人だけに限るならもっともっと低い確率になる。この暗い海では見つけられる可能性は皆無に等しいと考えた方が良い。すまないが、我々は捜索に時間を割くわけにはいかない。現地に着いてから捜索を要請してくれ、莫大な費用がかかる上に希望は薄いだろうがな」
冷たい言い方だが船員さんの言ってることはもっともだ。太陽のある地球ですら海に落ちた人の救助は困難なのに、この暗い海で見つけられるとは到底思えない。
「そんな……こんなところで居なくなってしまわれるなんて……」
アリサが手で顔を覆って膝から崩れ落ちた。
アリサが泣き崩れたのを見てフレアハルトがいなくなったことを実感する。
「嘘でしょ……こんな別れ方ってある!?」
どう対応したら良いかと考えを巡らせていたところ、一つ、出発前に私がやっていたことを思い出した。
「そうだ! 出発前にフレアハルトにも魔力マーキングしてた!」
「「え?」」
「まだ海の中に沈んでいなければ助けられるかも!!」
「「本当ですか!!?」」
フレアハルトに付けていた魔力マーキングを辿ると、後方五キロくらいのところに反応がある。
船の速度を考えると大体六分くらい前に落ちたということになる。それくらいならまだ水面をアップアップしている可能性が高い。
今魔力を探るまで海に落ちたかどうかも半信半疑だったけど、やっぱりアイツ海に落ちてたのね……
「私が貼り付けた魔力の痕跡を掴めた! 経過時間を考えても多分まだ大丈夫、ちょっと回収に行ってくる!」
「「お、お願い致します!」」
「おい、ちょっと待て! あんた有翼人だったのか。探しに行くつもりか? さっきの話を聞いていただろ? 真っ暗で何も見えないし探しに行くだけ無駄だぞ?」
船員さんが制止しようとするも……
「大丈夫! もう見つけましたから! じゃあちょっと行ってきます!」
◇
船から後方五キロ地点まで飛ぶ。
地球では海や山に限らず、遭難した時には『赤のような目立つ服を着てると良い』とかいう話をよく聞くけど、大海原では人の身体なんて小さすぎて見えないし、そもそも魔界は太陽が無いため、真っ暗闇の海で全く見えない。
唯一の光源である船はもう遥か五キロ先にあってここまで光は届いていない。船から投げ出されたら生存は絶望的だ。
魔力マーキングの反応のあった五キロ地点に着いたものの、やはり真っ暗で何も見えない。
光魔法で疑似太陽もどきを出現させ、海を上空から照らす。
そのうえで辺りを見回すと――
「見つけた!」
何かが水面を頻りに叩いているのが見えた。恐らくあれがフレアハルトだ。
これ、魔力マーキングしてなかったら、ほぼ百パーセント発見なんてできなかったわ……
マーキングしておくのが癖になってて良かった……
フレアハルトに近付いてみると、声はしないがバシャバシャと音がする。
一応生存しているみたいで良かった。
「フレアハルト?」
「アルトラか!? は、早く助けてくれ!! 身体全体に圧力がかかっていて飛ぶことができぬ!」
文句を言いたいがとりあえず手を掴んで空中にゲートを出現させ、船へと帰還。
◇
ここからはお説教タイム。
「あんたぁ!! 何してんの!? 危うく死ぬところよ!?」
ずぶ濡れで息も絶え絶えのフレアハルトの頭をペシンッと叩く。
「はぁ……はぁ……す、すまぬ……つ、釣った魚があまりにもでかかったものだから、釣り上げようとしたらバランスを崩して海に……声を張り上げたが、船のエンジン音にかき消されてしまって……本当に死を覚悟した……」
「沈む前に見つけたから良かったものを、そのままにしておいたらあなた海の藻屑よ!? 海竜に食べられてたかも」
海竜が存在すればだけど……クラーケンが存在するくらいだから海竜も存在するかもしれないし。
「それは大丈夫だ、我も応戦する」
「そういう問題じゃない!!」
水に強くなったとは言え、水中から直接羽ばたくのは難しいようで、ドラゴン形態に戻って飛ぼうにも出るに出られなかったらしい。
むしろドラゴンになると身体が大きくなるから、自重でどんどん沈んでいくため飛ぶのを諦めて必死に沈まないように水を掻いていたとか。
海の中から羽ばたこうとするには訓練が必要なようだ。
「はぁ~~~……あ、安心しました……」
「フレハル様のバカ! こっちに心配かけさせないで!」
アリサはその場にへたり込み、レイアは罵倒する。
「す、すまぬ……以後気を付ける……」
「い、今思ったのですが、大声を張り上げるよりも超音波を発した方が良かったのではないでしょうか? それなら何キロも遠くに離れていてもわたくしたちにも聞こえたでしょうし」
全員で顔を見合わせ――
「海に投げ出されて焦っておったから失念しておったわ……今度海に落ちた時にはそうしよう」
「二回同じこと起こされちゃ困るのよ! 二度と魚追いかけて落ちないでよね!」
それにしても力の強いフレアハルトが引っ張られてしまうって……どんな大きい魚だったのかしら?
大きい魚……クラーケン級の大きさと引っ張り合いになったとか? フレアハルトも負けず嫌いではあるし、海の巨大魚なら相手の方に分があるから引っ張り合いになって負けてしまった可能性は大いにある。
もしくは釣りに慣れてないから、重心が安定しておらず誤って海に転落してしまったか。そのどちらかかな?
と言うか……普通釣り糸の方が先に切れないのだろうか?
びしょ濡れのフレアハルトを見て、さっきの船員さんが近寄って来た。
「こりゃあ驚いた! まさか本当に見つけてくるとは……長年船に乗っているが、そんなことができたのはあんたが初めてだよ」
「いえ、運が良かっただけですよ」
本当にね……
事前に魔力マーキングをしてなければ、フレアハルトは未来永劫見つからなかったかもしれない。
そんなアクシデントがあったにも関わらず、その後も終日釣りを楽しみ、取った魚は今日の晩御飯にしてもらい、余った魚は食堂に提供した。
そして夜の時間帯になり、船室で就寝。
翌朝の時間帯には港町イルエルフュールに到着した。
しかし――
「退屈だ……海を見ても何も見えんしな……」
フレアハルトが船べりで頬杖突きながら海を見てつぶやく。
真っ暗な海を見て面白くないのはどの種族でも共通らしい。
船の周りには電気設備で光が照射されているが、遠くまで見渡せるわけではないため綺麗な景色が見えるとは言い難い。
「アルトレリア近くの海と違って、ここは真っ暗で何も見えませんからね~」
レイアは最近アルトレリア近海に魚を捕まえに行くため、その違いが分かるらしい。
「そんなに違うの?」
「全っ然違いますよ!! アルトレリア近海は疑似太陽のお蔭で青く澄んで綺麗に見えますから。こんな真っ暗な場所で潜って魚捕まえることなんて、きっと出来ないですよ。暗すぎて死の危険があるのが分かります!」
「なるほど」
アルトレリア近海は、疑似太陽のお蔭で地球の海に近い見た目をしているわけか。ということは魔界の海も本来は青い色をしているわけね。
その時、船員さんから声がかかる。
「退屈なら釣りでもやりますか?」
「釣り、釣りか。レイアが最近よく言ってるな。どんなものなのだ?」
船員さんが懇切丁寧に教えてくれる。
「ほう、魚を釣ることか。生きてる魚など見たことがない、よし! 是非やってみようではないか!」
「船の電気設備の効果で魚が集まって来やすくなっています。きっと沢山釣れますよ!」
◇
「おお! 見ろ! アリサ、レイア! どんどん釣れるぞ!」
「素晴らしい腕前です!」
「私はもっと大きいの釣りましたよ!」
「なに? では我はお主よりでかいのを釣ってやろう!」
しばらく嬉々として魚釣りを楽しんでいたフレアハルトだったが、気付いたら静かになっている。
「あれ? フレアハルトどこ行った?」
「え? ずっと釣りを楽しんでいたと思ったんですけど……」
「トイレにでも立たれたのでしょうか?」
「釣り竿も無くなってるけど? 普通釣り竿持ってトイレ行く?」
「わ、わたくしも釣りというのを初めて見るので分かりませんが……」
どう考えてもおかしい。普通釣り竿なんて長いものはその場に置いて用足しに行くと思うけど……
「何でいないの? まさか……海に落ちた?」
「アハハ……そんなわけないじゃないですかぁ……」
船のエンジン音も大きいから、落ちたことに気付かなかったのか!?
この暗い海に本当に落ちていたら大変なことになる!
「アリサ! レイア! フレアハルトの魔力は感知できる!?」
船内に居るなら、それほど大きい船でもないしフレアハルトの魔力を捕捉できるはず。
……
…………
………………
魔力感知を始めて少し時間が経ってからアリサの全身がガクガクと震え出した。
「…………い……いません……この船にフレアハルト様はいません!!」
「わ、私にも感知できません!」
ホントに海に落ちた!?
「フレハル様ーー!!」
「フレアハルト様ーー!!」
甲板から身を乗り出して辺りを探すも、船の光の範囲にはおらず。
「どうかしたのですか?」
大声で叫んでいたため、異変を感じて船員さんが集まって来た。
「連れの者が一人いなくなってしまいまして」
「まさか!? 海に落ちたのですか!? 船内を探しましたか!?」
「わ、わたくしたちの魔力感知に引っ掛かりません……」
魔力感知能力を持つ者のことは、この世界では常識と言って良いくらい広く知られている。
「だとすれば、やはり海に……」
「残念ながらこの真っ暗な海では救助は難しい。俺たち船乗りの間では『運が悪かった』として諦めることが暗黙の了解になっている。すまないがこのまま航行を続けるよ」
「そんなのって冷たいんじゃないですか!!?」
私が食って掛かるものの――
「…………ふぅ……お嬢さん、あんた海は初めてかい?」
「それがどうしたんですか!?」
「この大海原で陸地も見えないところで船から落下して救助される可能性がどれくらいか知ってるか?」
「………………知りませんけど」
「〇.〇〇一パーセントほどだ。十万人に一人しか見つからない確率。しかも見つかった者のそのほとんどが陸地に流れ着いた水棲亜人だ。陸棲亜人だけに限るならもっともっと低い確率になる。この暗い海では見つけられる可能性は皆無に等しいと考えた方が良い。すまないが、我々は捜索に時間を割くわけにはいかない。現地に着いてから捜索を要請してくれ、莫大な費用がかかる上に希望は薄いだろうがな」
冷たい言い方だが船員さんの言ってることはもっともだ。太陽のある地球ですら海に落ちた人の救助は困難なのに、この暗い海で見つけられるとは到底思えない。
「そんな……こんなところで居なくなってしまわれるなんて……」
アリサが手で顔を覆って膝から崩れ落ちた。
アリサが泣き崩れたのを見てフレアハルトがいなくなったことを実感する。
「嘘でしょ……こんな別れ方ってある!?」
どう対応したら良いかと考えを巡らせていたところ、一つ、出発前に私がやっていたことを思い出した。
「そうだ! 出発前にフレアハルトにも魔力マーキングしてた!」
「「え?」」
「まだ海の中に沈んでいなければ助けられるかも!!」
「「本当ですか!!?」」
フレアハルトに付けていた魔力マーキングを辿ると、後方五キロくらいのところに反応がある。
船の速度を考えると大体六分くらい前に落ちたということになる。それくらいならまだ水面をアップアップしている可能性が高い。
今魔力を探るまで海に落ちたかどうかも半信半疑だったけど、やっぱりアイツ海に落ちてたのね……
「私が貼り付けた魔力の痕跡を掴めた! 経過時間を考えても多分まだ大丈夫、ちょっと回収に行ってくる!」
「「お、お願い致します!」」
「おい、ちょっと待て! あんた有翼人だったのか。探しに行くつもりか? さっきの話を聞いていただろ? 真っ暗で何も見えないし探しに行くだけ無駄だぞ?」
船員さんが制止しようとするも……
「大丈夫! もう見つけましたから! じゃあちょっと行ってきます!」
◇
船から後方五キロ地点まで飛ぶ。
地球では海や山に限らず、遭難した時には『赤のような目立つ服を着てると良い』とかいう話をよく聞くけど、大海原では人の身体なんて小さすぎて見えないし、そもそも魔界は太陽が無いため、真っ暗闇の海で全く見えない。
唯一の光源である船はもう遥か五キロ先にあってここまで光は届いていない。船から投げ出されたら生存は絶望的だ。
魔力マーキングの反応のあった五キロ地点に着いたものの、やはり真っ暗で何も見えない。
光魔法で疑似太陽もどきを出現させ、海を上空から照らす。
そのうえで辺りを見回すと――
「見つけた!」
何かが水面を頻りに叩いているのが見えた。恐らくあれがフレアハルトだ。
これ、魔力マーキングしてなかったら、ほぼ百パーセント発見なんてできなかったわ……
マーキングしておくのが癖になってて良かった……
フレアハルトに近付いてみると、声はしないがバシャバシャと音がする。
一応生存しているみたいで良かった。
「フレアハルト?」
「アルトラか!? は、早く助けてくれ!! 身体全体に圧力がかかっていて飛ぶことができぬ!」
文句を言いたいがとりあえず手を掴んで空中にゲートを出現させ、船へと帰還。
◇
ここからはお説教タイム。
「あんたぁ!! 何してんの!? 危うく死ぬところよ!?」
ずぶ濡れで息も絶え絶えのフレアハルトの頭をペシンッと叩く。
「はぁ……はぁ……す、すまぬ……つ、釣った魚があまりにもでかかったものだから、釣り上げようとしたらバランスを崩して海に……声を張り上げたが、船のエンジン音にかき消されてしまって……本当に死を覚悟した……」
「沈む前に見つけたから良かったものを、そのままにしておいたらあなた海の藻屑よ!? 海竜に食べられてたかも」
海竜が存在すればだけど……クラーケンが存在するくらいだから海竜も存在するかもしれないし。
「それは大丈夫だ、我も応戦する」
「そういう問題じゃない!!」
水に強くなったとは言え、水中から直接羽ばたくのは難しいようで、ドラゴン形態に戻って飛ぼうにも出るに出られなかったらしい。
むしろドラゴンになると身体が大きくなるから、自重でどんどん沈んでいくため飛ぶのを諦めて必死に沈まないように水を掻いていたとか。
海の中から羽ばたこうとするには訓練が必要なようだ。
「はぁ~~~……あ、安心しました……」
「フレハル様のバカ! こっちに心配かけさせないで!」
アリサはその場にへたり込み、レイアは罵倒する。
「す、すまぬ……以後気を付ける……」
「い、今思ったのですが、大声を張り上げるよりも超音波を発した方が良かったのではないでしょうか? それなら何キロも遠くに離れていてもわたくしたちにも聞こえたでしょうし」
全員で顔を見合わせ――
「海に投げ出されて焦っておったから失念しておったわ……今度海に落ちた時にはそうしよう」
「二回同じこと起こされちゃ困るのよ! 二度と魚追いかけて落ちないでよね!」
それにしても力の強いフレアハルトが引っ張られてしまうって……どんな大きい魚だったのかしら?
大きい魚……クラーケン級の大きさと引っ張り合いになったとか? フレアハルトも負けず嫌いではあるし、海の巨大魚なら相手の方に分があるから引っ張り合いになって負けてしまった可能性は大いにある。
もしくは釣りに慣れてないから、重心が安定しておらず誤って海に転落してしまったか。そのどちらかかな?
と言うか……普通釣り糸の方が先に切れないのだろうか?
びしょ濡れのフレアハルトを見て、さっきの船員さんが近寄って来た。
「こりゃあ驚いた! まさか本当に見つけてくるとは……長年船に乗っているが、そんなことができたのはあんたが初めてだよ」
「いえ、運が良かっただけですよ」
本当にね……
事前に魔力マーキングをしてなければ、フレアハルトは未来永劫見つからなかったかもしれない。
そんなアクシデントがあったにも関わらず、その後も終日釣りを楽しみ、取った魚は今日の晩御飯にしてもらい、余った魚は食堂に提供した。
そして夜の時間帯になり、船室で就寝。
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