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第13章 樹の国ユグドマンモン探検偏
第361話 樹の国での疑似太陽の創成
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樹の国の国土は一番長いところでおよそ八百キロほど (カイベル調べ)。国の六から七割ほどを大森林が占めており、大森林は国の南側に多い。
そのため、大森林の北半分辺りを太陽の正午の地点にすると、ちょうど国土の真ん中辺りを通る感じになると思う。
ちなみに、第一首都およびユグドラシルの生えている場所は、国の真ん中から少しだけ南に位置する。 そういうことを鑑みて、太陽の位置を決めるため、キャノンエラテリウムが群生していた辺りに、トリニアさんを伴ってゲート転移して来た。 (キャノンエラテリウムについては第311話から第313話参照)
「よし、この辺りが国のちょうど真ん中辺りだ」
「わたくしは何をするのでしょうか?」
「この『疑似太陽』については超極秘事項だということは知ってますか?」
「はい、レヴィアタン様にお聞きしに行った時には、なるべく他言しないよう口留めされました」
『なるべく』じゃなくて『絶対』他言しないように言っておくべきだったかなぁ……
まあ今回のことで釘を刺したから、多分もう他言することはないでしょう。
「現在、『疑似太陽』が出現した経緯を知っている者はレヴィアタンを含め、両手で数えるくらいしかいません。国によっては『疑似太陽』について漏らした場合、重罪として投獄刑とされた国もあります」 (第266話参照)
「そうなのですか!?」
「それで、ここからが本題なのですが、これは私の警戒が甘かったために起きてしまったことですが、以前私が疑似太陽を作っている場面がバレてしまったことがあります」
「そうなのですか!? それはどのように対処を?」
「私がその場面を知らなかったため、もうどうしようもない状態になりました。現在そのとある国には勧誘されているのですが、無視してる状態です。かの国は私を懐柔して自分の国へ従属させたいようなので、かの国から他の国へ『疑似太陽』についてバレることはないとは思いますが……」 (バレた経緯については第264話、かの国の勧誘については第300話から第301話参照)
「そ、それで?」
「もうこの先その国以外からはそんな目には遭いたくないので、トリニアさんには周辺の魔力を探知して、私に対する監視が無いかどうかを確認してもらいたいのです。私の魔力感知能力より優れているトリニアさんにお願いしようかと思いまして」
「なるほど、近くに不自然な挙動をする者がいるかどうか調べれば良いわけですね?」
「お願いします」
「わかりました、少々お待ちください」
まあ、雷の国の時と違ってここは平原というわけではないし、大森林という場所の特性上、木々の間を縫って監視するというのも中々難しいとは思う。それに加えて空間転移魔法でここへ来ているからいくら優秀な感知魔法使いでも流石に近くに居ないだろうけど……念には念を入れてトリニアさんにお願いした。
……
…………
………………
「近くに亜人の気配は無いですね。木の下位精霊にも聞いてみましたが、この周辺には居ないとみて間違いないと思います」
「分かりました。じゃあちょっと『疑似太陽』を作ってきます」
羽を出して大森林の上空まで飛び、空中で制止。
空へ飛んだついでに、首都のある方向を見てみると――
「トライアさんは首都を上空から見たら真っ暗じゃないかって予想してたけど、結構明るいわ。これなら普通に飛んで首都まで行ってから空間魔法で戻って来れば早く首都に着けたかも」 (第303話参照)
まあ、もう済んだことを考えても仕方ない。
時間魔法+光魔法+火魔法+空間魔法を使い、『疑似太陽』の光源と、それに付随する青空を作り出す。
疑似太陽を作りを終え、大森林のトリニアさんのところへ戻る。
「凄い! どうなってるんですか!? 暗かった木々の間から光が差して、空が青くなりましたよ!?」
「それは企業秘密です。この青空について簡単に説明しておくと、この空、今はお昼時なので青空ですが時間帯によっては赤くなったり、真っ暗になったりします。色が変わっても異常気象とかではないので心配しないでください」
「赤になったり真っ暗になったり……ですか? 今はこんなに青いのに?」
「冥球と違って、地球の空は色が変わるんですよ」
「ところで『お昼時』とは何ですか?」
あ、そうだ、この世界には朝昼夜が無いんだった。
「地球では十時頃から空が暗くなるまでを昼、暗くなってから明るくなるまでを夜、明るくなり始めてから十時くらいまでを朝と呼んでいたんです。昼と夜の間にある空が赤くなる時間帯を夕方と言ったり、真っ暗な時間帯を真夜中と言ったりもします。あと、零時から十二時を午前、十二時から翌零時までを午後と呼んだりしますね。もう水の国と雷の国では一般的な呼称になってると思います」
「そうなんですね。じゃあ『真夜中』しかない冥球にはあるはずもない呼び方ですね。今後我が国でもそう呼称するように王に進言しておきます」
場所ごとに呼び名が違うのも面倒だし、各国統一してくれるのはありがたい。
「アルトレリアの空も青かったように記憶していますが、あの場所も色が変わるんですか?」
「時間帯によっては変わります。あと、この空は星空も再現しているので、夜になったら星も見えるようになりますよ」
「星空ですか……太古の昔に太陽と共に消えたと伝説に残ってますね。どういうものなのでしょうか?」
「夜になればどんなものか分かると思います。さあマモンさんのところへ戻りましょう」
◇
王城の応接間に戻ると、マモンさんが窓の近くで空を見ていた。
「マモン様、ただいま戻りました」
「おお! アルトラ殿、お疲れ様でした。突然空が明るくなって驚きました。トリニアもご苦労だった」
「はい、早速ですが今からあの疑似太陽と空について説明致します」
マモンさんに、先ほどトリニアさんに説明したことと、疑似太陽の性質について説明。
「ゴホッゴホッ、ほう、なるほど、あの空の色は変わるものなのですね。それらも国民に周知しておかねばなりませんね」
「あと……これは杞憂に終わると良いんですが、この疑似太陽の効果により、大森林全体の活性化も考えられます。その場合は、いくらかの木を伐採して間引くようにしてください。そうでないと成長し過ぎて暴走するなど大変なことになるかもしれません」
「おお……なるほど、確かに我々木の精霊に心地良いものですから植物たちにだってそうである可能性が高いですな……そういうように国民に伝えておきます」
その後は、マモンさんの体調も限界とのことで、今回の謁見は終了。全ての時間を考えても一時間弱という短い時間の会談となった。
マモンさんとエウリリスさんからは、『招いておいて食事会も開けず申し訳ない』と謝られたが、こちらとしては初対面の人と食事会することがなくて助かった。絶対に口には出せないけど……
そんなこんなで、短い謁見ではあったが、『疑似太陽』を作るというミッションは無事終えることができた。
そのため、大森林の北半分辺りを太陽の正午の地点にすると、ちょうど国土の真ん中辺りを通る感じになると思う。
ちなみに、第一首都およびユグドラシルの生えている場所は、国の真ん中から少しだけ南に位置する。 そういうことを鑑みて、太陽の位置を決めるため、キャノンエラテリウムが群生していた辺りに、トリニアさんを伴ってゲート転移して来た。 (キャノンエラテリウムについては第311話から第313話参照)
「よし、この辺りが国のちょうど真ん中辺りだ」
「わたくしは何をするのでしょうか?」
「この『疑似太陽』については超極秘事項だということは知ってますか?」
「はい、レヴィアタン様にお聞きしに行った時には、なるべく他言しないよう口留めされました」
『なるべく』じゃなくて『絶対』他言しないように言っておくべきだったかなぁ……
まあ今回のことで釘を刺したから、多分もう他言することはないでしょう。
「現在、『疑似太陽』が出現した経緯を知っている者はレヴィアタンを含め、両手で数えるくらいしかいません。国によっては『疑似太陽』について漏らした場合、重罪として投獄刑とされた国もあります」 (第266話参照)
「そうなのですか!?」
「それで、ここからが本題なのですが、これは私の警戒が甘かったために起きてしまったことですが、以前私が疑似太陽を作っている場面がバレてしまったことがあります」
「そうなのですか!? それはどのように対処を?」
「私がその場面を知らなかったため、もうどうしようもない状態になりました。現在そのとある国には勧誘されているのですが、無視してる状態です。かの国は私を懐柔して自分の国へ従属させたいようなので、かの国から他の国へ『疑似太陽』についてバレることはないとは思いますが……」 (バレた経緯については第264話、かの国の勧誘については第300話から第301話参照)
「そ、それで?」
「もうこの先その国以外からはそんな目には遭いたくないので、トリニアさんには周辺の魔力を探知して、私に対する監視が無いかどうかを確認してもらいたいのです。私の魔力感知能力より優れているトリニアさんにお願いしようかと思いまして」
「なるほど、近くに不自然な挙動をする者がいるかどうか調べれば良いわけですね?」
「お願いします」
「わかりました、少々お待ちください」
まあ、雷の国の時と違ってここは平原というわけではないし、大森林という場所の特性上、木々の間を縫って監視するというのも中々難しいとは思う。それに加えて空間転移魔法でここへ来ているからいくら優秀な感知魔法使いでも流石に近くに居ないだろうけど……念には念を入れてトリニアさんにお願いした。
……
…………
………………
「近くに亜人の気配は無いですね。木の下位精霊にも聞いてみましたが、この周辺には居ないとみて間違いないと思います」
「分かりました。じゃあちょっと『疑似太陽』を作ってきます」
羽を出して大森林の上空まで飛び、空中で制止。
空へ飛んだついでに、首都のある方向を見てみると――
「トライアさんは首都を上空から見たら真っ暗じゃないかって予想してたけど、結構明るいわ。これなら普通に飛んで首都まで行ってから空間魔法で戻って来れば早く首都に着けたかも」 (第303話参照)
まあ、もう済んだことを考えても仕方ない。
時間魔法+光魔法+火魔法+空間魔法を使い、『疑似太陽』の光源と、それに付随する青空を作り出す。
疑似太陽を作りを終え、大森林のトリニアさんのところへ戻る。
「凄い! どうなってるんですか!? 暗かった木々の間から光が差して、空が青くなりましたよ!?」
「それは企業秘密です。この青空について簡単に説明しておくと、この空、今はお昼時なので青空ですが時間帯によっては赤くなったり、真っ暗になったりします。色が変わっても異常気象とかではないので心配しないでください」
「赤になったり真っ暗になったり……ですか? 今はこんなに青いのに?」
「冥球と違って、地球の空は色が変わるんですよ」
「ところで『お昼時』とは何ですか?」
あ、そうだ、この世界には朝昼夜が無いんだった。
「地球では十時頃から空が暗くなるまでを昼、暗くなってから明るくなるまでを夜、明るくなり始めてから十時くらいまでを朝と呼んでいたんです。昼と夜の間にある空が赤くなる時間帯を夕方と言ったり、真っ暗な時間帯を真夜中と言ったりもします。あと、零時から十二時を午前、十二時から翌零時までを午後と呼んだりしますね。もう水の国と雷の国では一般的な呼称になってると思います」
「そうなんですね。じゃあ『真夜中』しかない冥球にはあるはずもない呼び方ですね。今後我が国でもそう呼称するように王に進言しておきます」
場所ごとに呼び名が違うのも面倒だし、各国統一してくれるのはありがたい。
「アルトレリアの空も青かったように記憶していますが、あの場所も色が変わるんですか?」
「時間帯によっては変わります。あと、この空は星空も再現しているので、夜になったら星も見えるようになりますよ」
「星空ですか……太古の昔に太陽と共に消えたと伝説に残ってますね。どういうものなのでしょうか?」
「夜になればどんなものか分かると思います。さあマモンさんのところへ戻りましょう」
◇
王城の応接間に戻ると、マモンさんが窓の近くで空を見ていた。
「マモン様、ただいま戻りました」
「おお! アルトラ殿、お疲れ様でした。突然空が明るくなって驚きました。トリニアもご苦労だった」
「はい、早速ですが今からあの疑似太陽と空について説明致します」
マモンさんに、先ほどトリニアさんに説明したことと、疑似太陽の性質について説明。
「ゴホッゴホッ、ほう、なるほど、あの空の色は変わるものなのですね。それらも国民に周知しておかねばなりませんね」
「あと……これは杞憂に終わると良いんですが、この疑似太陽の効果により、大森林全体の活性化も考えられます。その場合は、いくらかの木を伐採して間引くようにしてください。そうでないと成長し過ぎて暴走するなど大変なことになるかもしれません」
「おお……なるほど、確かに我々木の精霊に心地良いものですから植物たちにだってそうである可能性が高いですな……そういうように国民に伝えておきます」
その後は、マモンさんの体調も限界とのことで、今回の謁見は終了。全ての時間を考えても一時間弱という短い時間の会談となった。
マモンさんとエウリリスさんからは、『招いておいて食事会も開けず申し訳ない』と謝られたが、こちらとしては初対面の人と食事会することがなくて助かった。絶対に口には出せないけど……
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